無人ヘリが未来の林業を救う!? 谷底や傾斜地への資材運搬で、現場の安全性や省力化を確保
2021/06/23
農業の薬剤散布や防災現場などで活躍する、ヤマハ発動機の無人産業ヘリコプター「FAZER R G2」。今年3月の実証実験では、静岡県掛川市の山中で1.5トンの獣害対策用の資材を運搬するミッションに成功した。今後の林業界での活躍も期待されている。
無人ヘリのパイオニアによる
林業リノベーション
世界初の産業用無人ヘリコプターの販売から30年、無人ヘリコプターのパイオニアとしても知られるヤマハ発動機。なかでも農業分野では、無人ヘリコプターによる農薬散布や、直播から薬剤散布まで行う「水稲一貫体系」のシステムを推進するなど、日本の農業を空から支えてきた。
この長年の技術を活かし、2020年からは無人ヘリコプターとレーザー測量装置による「森林レーザー計測サービス」をスタート。森林の資産管理をICT化する新しい手法として注目を浴び、林業分野でも無人ヘリコプターの活用が大きく期待されている。危険が伴う事の多い現場への資材の運搬だ。そこで2021年3月、無人ヘリコプターによる獣害対策用の資材を運搬する実証実験が、静岡県掛川市森林組合の管轄する山中で行われた。
高低差120mの谷底に
約1.5トンの資材を運ぶ
実証実験を行ったのは、最新型の産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2」。農業の現場のほか、送電線の点検・検査といった人が立ち入れない場所への機材の運搬や計測業務、警備や防災にも使われている。
荷下ろしの現場は、クルマがやっと通れる林道から高低差約120mの谷底。距離にして約300mの獣道だが、途中には丸木橋がかかり、林業作業用スパイクを履いて重い資材を背負って歩くには時間も作業者への負担もかかる。運ぶ荷物は、シカやカモシカによる食害から守るネットや支柱などの防護柵用の資材だ。「FAZER R G2」の最大積載重量は35㎏だが、資材を専用のコンテナに効率よく格納するため、1回の積載量が約20㎏になり、運搬総重量は1.5トンにも及んだ。
無人ソリューションが
林業の課題解決につながる
約1.5トンの資材は、パイロットによる操縦と自動航行を組み合わせ、片道約10分弱の現場間を5日間・約120往復して、トラブルなく計画通りに運びきり、ミッションを見事遂行。事前準備で強風の影響を受けにくい積載方法などの試行錯誤を重ねたことも成功の大きな要因になったという。
安定した飛行のための積載方法も検証
これまで人力に頼ることが多かった資材の運搬も、無人ヘリコプターが引き受けてくれれば、現場の安全性や省力化に貢献できる。重労働というイメージが強い林業の働き手もきっと増えるはずだ。ヤマハ発動機は、2030年を見据えた長期ビジョンで産業用無人ヘリコプターを活用した無人ソリューションを進めていく計画だ。数年後には無人ヘリコプターが仕事のよき相棒となっているかもしれない。
谷底にしっかりと運び込まれた防護柵用の資材
DATA
問い合わせ
文:後藤あや子