林業現場技術者の月給制+週休2日制は可能か? 経営の工夫をしてみよう
2021/05/26
「求人をかけても人が来ない」という悩みを抱えていることが多い林業事業体。雇用条件の考え方に問題があるのではないだろうか。林業現場技術者の月給制+週休2日制は可能なのか、FOREST MEDIA WORKS Inc.のCEO楢崎達也氏に話を聞いた。
「うちに来ない方が良い感」
を自らアピールしていないか
林業事業体からよく聞かれる悩みに、「求人をかけても人が来ない」というものがあります。(「人が辞める」については、テーマを切り分けたいので別の機会に)どうして人は来ないのでしょうか。
本誌vol.4「私たちの知らない林業という職業の魅力」でお話しさせていただきましたが、林業には他の産業にはない、「自分の裁量で仕事ができる」、「成果が目に見える」等の魅力に溢れています。そのため、「人が来ない」のは雇用条件の考え方に問題があると考えています。
「そりゃね、楢崎くん、林業は3Kの職場に加えて、給料面でも少し他産業に比べて安いから雇用条件を良くすることはなかなか難しいんだよ」という回答がほとんどです。まあ、そりゃそうかもしれませんが「雇用条件を良くして人に来てもらおう」という「経営的な努力は林業ではできない」ということでしょうか。
僕が何故、そのように考えるかというと、あなたの経営する組織には人が来ないかもしれませんが、一方で人が途切れなく来る林業会社があるのも事実です。そういう会社の一つに栃毛木材工業(株)があります。現場技術者の雇用形態は驚くべきことに、なんと月給制かつ週休二日制です!
多くの林業組織の経営者・理事さんであれば、ぱっと浮かぶ疑問は次だと思います。「月給制だとやる気を持続させるのが難しく、結果的に生産性が下がる。月給制+週休二日にすると、平日の雨の日はどうすんだ? 平日の仕事の遅れはどうやって取り戻すんだ?」。ガラパゴス諸島(林業界)の中だけを見ると、確かにその通り。しかし、隣の大陸をみると驚きの事実がわかってきます!(詳しくは、フォレストメディアワークスYouTubeの栃毛木材工業(株)の関口社長インタビューをご覧ください!チャンネル登録よろしく(笑))
林業会では「月給制」も難しい?
一般企業は、大企業であっても中小企業であっても、給料制度は「月給制」が当たり前です。それが故の難しさも発生するのですが、雇われる側からすれば、給料が安定しますし、その組織に属する安心感が増します。また、僕が学生の時は、土曜日は「半ドン」といって土曜日に半日学校・仕事をすることは当たり前でした。しかし今、求職している人材が育った時代はすでに学校は週休2日制でした。これらの方々にとっては、土曜日は休みの日という認識です。
私たちは高校、林業大学校、大学等を卒業して林業をする場合、専業林家になるわけではありません。ほぼ必ず、林業を行う組織に就職してサラリーマンとして林業をやることになります。そうなると、雇う側(会社の場合は経営者、森林組合の場合は理事)と雇われる側(僕ら従業員)という2つの立場で協力して働いて、会社を盛り立てていくことになります。
雇われる側としては、他の産業も然りですが、より雇用条件と労働環境がよい会社に就職したいものです。そのような中で、自分の生活スタイルに合わない雇用条件を提示されれば、当然、就職先として選びません。
林業業界の我々は、なにか見過ごしていることが多い気がします。ただ、いつも書かせてもらっているように林業組織は工夫の余地がたくさんあります。栃毛木材工業(株)さんのように人が来る林業組織にするための工夫(=経営の工夫)を雇用側(経営者と理事)のみなさん、考えてみませんか?
誤解がないように補足しますと、楢崎は「月給制」と「週休二日制」原理主義者ではありません。「日給制の中でも工夫ができますよね」ということが言いたいのです。と言っても、ほとんどの方が誤解しちゃいますが……。
PROFILE
FOREST MEDIA WORKS Inc. CEO
楢崎達也
カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2019プロデューサー。
FOREST JOURNAL vol.7(2021年春号)より転載