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林業者の取り組み

経営者の視点から見る林業の課題とは?職業としての林業を見つめ直す

お世辞にも「給料が高い」とは言えない林業をどうして選択しているのか? 不思議に思ったことはないだろうか。「一度、林業現場で働くことを知ると林業が好きになるんだ!」とほとんどの方が言う林業の魅力に迫る。

私たちが知らない
林業という職業の魅力

このコラムでは、林業事業体の経営支援を通じて見えてきたことを書いています。

僕も含めて、林業という業種を選択しているのはそれが「幸せ」になる選択だと思っているからのはずです。そのような中で、みなさん、不思議に思ったことはありませんか? お世辞にも「給料が高い」とは言えない林業をどうして選択しているのか? 労災の確率が非常に高い業種をどうして選んでいるのか? 他の業界・業種が選択できるのに好き好んで林業を選ぶのか?

多くの方が林業に就業する最初のきっかけは、弊社が行ったアンケート分析等によると、「自然の中で働きたいから(雑誌がよく特集するパターン)」であることが多いのです。しかし、危険であり、給料もそれほど高くない林業を継続するとなると「他の業種と比べ何か魅力が絶対にあるはず」というのが僕の疑問でした。

林業事業体の組織経営改善に長く関わる中で、林業の「現場作業」は、一般企業だけでなく、土木作業とも異なっていることに気が付きました。何かというと、林業は、個人に任される裁量が広いのです。

現場が毎回異なっている、状況も日々刻々と変わる中で、それら現場状況を踏まえた個人の判断が求められる業種だということです。言い換えると、個人の判断能力が業績に直接的に現れる、という仕事だということです。



僕は高校卒業後、なし崩し的に会社勤務をし始め(最初の就職が29歳の時!)、2011年まで勤めました。「サラリーマン生活は楽しかったのか?」と聞かれれば、正直、結構楽しかったです(笑)。

ただ、みなさんが感じておられると思いますが、サラリーマン生活は息苦しくもあります。満員電車で物理的に息苦しいこともありますが、それ以上に、組織に属することで生まれる当然の上下関係、人間関係の中で、指示命令によるストレスを感じながら仕事をするからです。

昨年度、調査で林業事業体を辞めた経験のある方々に直接会って話を聞いたのですが、この方々の現在の職業を聞いて驚きました。辞めた後も別の林業会社で働いているというのです。中には、再就職した林業会社を再び退職した人もいますが、その人もさらに別の林業会社で働いていました。

しかも、林業を語る熱量がスゴイ!僕が「他の職業があるのにどうしてそこまでして林業にこだわるの?」と聞くと、ほとんどの方が「あんたにはわからないと思うが、一度、林業現場で働くことを知ると林業が好きになるんだ!」と言いました。

そうなると、ある疑問が湧いてきます。「どうして、そんなに好きな林業ができる会社を辞めるのか?」ということです。なぜでしょうか。

僕の結論は、「林業は好きだけど、所属している会社が嫌い」ということです。仮に会社は嫌いでも所属し続ければ、好きな林業はやることができるはずです。それでも「辞める」という大きな選択をせざるを得ないのは、辞める(=他社に移る)以外の選択肢がないからです。ここで真剣に考えるべきは「辞める人」の視点ではなく、「経営者」の視点です。

組織経営から考える
林業という営み

コストをかけて来た人材が辞めることは大きな損失です。また、新しい人材を採用して育成しなくてはならず、さらにコストをかける必要が出てきます。当然、組織の発展は停滞します。僕は、ここに、林業業界の大きな課題があると断言します。本コラムを執筆する背景となり、楢崎が問題提起させていただいている「林業事業体の組織経営」の課題です。

林業業界は、林業大学校などを設置して、林業従事者の増加に必死に頑張っています。しかし、一方で、実は辞める人が多いです。統計的には、ある県では3年間で約100名が中途退社しています。個人に対しても、林業を選択し、そして辞めるという判断には、人生がかかっています。弊社ではこれは大きな問題であり、なんとか食い止める策を関係者と日々、検討しています。

PROFILE

FOREST MEDIA WORKS Inc.
CEO

楢崎達也


カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2019プロデューサー。


文/FOREST MEDIA WORKS Inc. CEO 楢崎達也

FOREST JOURNAL vol.4(2020年夏号)より転載

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2020年9月15日発行

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