【Q&A】低コスト再造林のススメ! 未来の森づくりを担う最新技術3選
2020/11/09
低コスト再造林がなぜいま注目されているのか? どのくらいのコストが削減できるのか? などの疑問にお答え! あわせて未来の造林を担う注目技術をご紹介。
低コスト再造林
気になるQ&A
Q:なぜ今、低コスト再造林が必要なのか
A:持続可能な森林経営のためです。
現在、人工林の多くが伐期を迎えています。
ところが50年生のスギ人工林から得られる所有者の収入が143万円/haなのに対し、下刈を終えるまでにかかる造林経費は約170万円/ha。これでは経営上、再造林は困難です。そこで低コスト再造林による新たな森づくりのあり方が模索されています。
Q:そもそも必ず再造林はするべきか
A:ケースバイケースです。
地位や立地に優れた土地では、木材需要に応えるために再造林の実施が望ましいでしょう。
反対に、地位や立地に課題があり、森林経営が困難な土地では必ずしも皆伐による再造林が最適解とは限りません。間伐や択伐によって人工林を、混交林や広葉樹林へと誘導していくといった選択肢もありえるでしょう。
Q:どのくらいのコストを削減できるのか
A:一貫作業システムによる地拵えの機械化、コンテナ苗の活用や低密度植栽による植栽の効率化、下刈の回数の削減などによって、再造林コストを30~50%削減できる可能性があるとされています。
とはいえ、低コスト化の取り組みは始まったばかり。今後さまざまな実証実験を通じて、より詳細な削減効果が明らかになるでしょう。
Q:緩傾斜地以外でも一貫作業システムは導入できるのか
A:可能です。
作業道が作設できる中~急傾斜地では、路網上の高性能林業機械を地拵えや苗木の運搬に活用できるでしょう。
30度以上の急傾斜地ではスイングヤーダなどで一貫作業を実施。集材用の架線を苗木の運搬に活用します。また人力で行わざるをえない地拵えを省力化するため、集材方法は全木集材が望ましいとされています。
Q:最近話題の早生樹とは何か
A:「早く生長する樹種」の総称で、新たな造林樹種として注目を集めています。
中でも有望視されているのがセンダン(落葉広葉樹)とコウヨウザン(常緑針葉樹)。センダンは4~5万円(末口40cm、直材4m)という立米単価の高さが、コウヨウザンはスギよりも堅く構造材に適した材質が魅力です。いずれも20~30年で伐期を迎えるとされています。
未来の造林を担う
注目技術3選
傾斜地で活躍する注目の造林機械
キャニコムが販売する「山もっとジョージ」は、傾斜のある林内でも安定した走行が可能な多目的造林機械だ。下刈はもちろん、地面に残った根株もパワフルに粉砕。専用のアタッチメントを装着すれば、コンテナ苗の運搬にも活用できる。
問/キャニコム
TEL:0943-75-2195
獣害防止はドローンにお任せ
株式会社Queen Bee and Droneが手がける「ホーネットバスター」は、スズメバチ駆除のために開発されたドローンだが、獣害防止のための忌避剤散布にも活用できるとして、現在、実証実験が進められている。実用化されれば、作業者の負担が大きく軽減されること間違いなしだ。
問/株式会社Queen Bee and Drone
TEL:054-260-5980
「着るロボット」が作業をサポート
山林での作業現場までの歩行をサポートする“着るロボット”として、株式会社ATOUNが開発を進めているのが『パワードウェア HIMICO』だ。2018年には奈良県川上村の山林で実証実験を実施。人手不足を補う切り札として、注目を集めている。
監修:寺岡行雄教授(鹿児島大学農学部)
文:松田敦
FOREST JOURNAL vol.5(2020年秋号)より転載