高い没入感で伐倒事故を体験&安全にトレーニング! 「林業安全教育360VR」とは
2020/08/19
全国森林組合連合会と農林中央金庫の依頼を受け、株式会社アルファコードが制作したVRコンテンツ「林業安全教育360VR」。労働災害発生率の低減を目的に、7月から全国の安全講習実施機関等への貸し出しをスタートした。
VR体験で学ぶ「正しい伐倒」と
「危険な伐倒での命の危険」
株式会社アルファコードは、全国森林組合連合会、農林中央金庫からの依頼を受け、11Kの高精細な360度カメラで撮影された実写VRで林業研修が体験できる「林業安全教育360VR」を制作し、また2020年7月より全国の安全講習実施機関等への貸し出しを開始した。
労働災害発生率の低減を目指して制作された「林業安全教育360VR」は、作業を「見る」ことに特化したVRコンテンツ。VRゴーグル(Pico Technology Japan株式会社製4K一体型VRヘッドマウントディスプレイ「Pico G2 4K」)を装着すると、実際の林産現場の様子が高精細な11Kソースの360度映像で目の前に広がる。その没入感は圧倒的で、あたかも本物の森を訪れたように感じるという。
一体型VRゴーグル「Pico G2 4K」
第一弾である「チェーンソー作業 -他人伐倒編-」では、まずベテラン作業員が正しい手順で伐倒作業を行う様子がVRで表示される。もちろん、これも実際の作業を撮影したものだ。リアルの現場では近づけない距離や角度から、熟練の技を観察できるのもVRならではだろう。
他にも、伐倒者が倒した立木が他の作業員に直撃してしまうという事故の様子が再現される。ここでは伐倒者付近からの視点と、被災者の視点の両方を体験。VR空間上には事故の原因が表示され、伐倒者の目線からはどの手順に問題があったのか、被災者の視点からはなぜ自分の方向に木が倒れてきたのかが理解できるようになっている。座学だけでは気付くことのできない現場の危険性を身をもって体験することは、事故発生率の低下へとつながるだろう。文字通りVRを使わなければ実現できない学び方だ。
同コンテンツの体験に必要な機材はVRゴーグルのみ。パソコンやスマートフォンといった外部機器を必要としない手軽さも魅力。場所や時間を問わずに繰り返しトレーニングできる。従来の安全教育と異なり、指導者を必要としないこともポイントだ。現場を止めずに新人教育できることは、少人数で現場を切り盛りする小規模な事業体にとっても大きなメリットだろう。また指導者の違いによる教育のばらつきも防ぐことができる。
現在、同コンテンツは「緑の雇用」等の一環として、全国の安全講習実施機関などへの貸し出しがスタートしている。著しく高い水準にある林業における労働災害発生率を軽減する有効打となるのか、期待が集まる。
DATA
文:松田敦