林業労働災害の発生を事前に防ぐ!4つの事例から見る原因とその対策法
2020/05/01
林野庁では、伐木造林作業と造林作業において過去に数多く発生した林業労働災害の事例をまとめている。林業労働災害の防止対策の1つとして、災害事例を整理分類することは有効な手段だ。原因と対策をしっかり分析・検討し、再発を防ごう。
原因を知り、再発を防ぐ
林野庁では、伐木造林作業と造林作業において過去に数多く発生した林業労働災害の事例をまとめている。林業の災害で は、類似の事例や、不注意から起こる事例が多い特徴から、林業労働災害の防止対策の1つとして、災害事例を整理分類し、発生状況やその原因を分析・検討することは有効な手段であると考えられている。
CASE1 かかられている木を伐倒、かかっている木が落下し叩かれた
伐倒した木につるがからまっていたため伐倒方向が狂い、下側の木にかかり木になった。かられている木を伐倒したところ、かかっている木が突然落下して、作業者の頭部に激突した。
原因
・かかり木になっている場合にかかられている木の伐倒を行った。
・伐倒前に伐倒木や隣接木の状況等を十分把握していなかった。
・つるがらみ木のつるを事前に切りはなしておかなかった。
対策
・かかられている木の伐倒をしない※。
・伐倒木の状況、隣接木、つるがらみ、枝がらみ等を十分精査の上、確実な伐倒方向を検討する。
・つるがらみ木のつるを事前に切り離す。
※労働安全衛生規則第 478 条により、かかられている木の伐倒は禁止。
CASE2 他の作業者が玉切った丸太が上方から落下して当たった
傾斜約30度の斜面でスギの伐倒木を玉切り作業中、上方で他の作業者が玉切りした材が突然落下。作業者の背中にあたり、玉切り中の丸太との間に挟まれた。
原因
・傾斜地の同一斜面の上下で玉切り作業を行った。
・材の転落防止措置をしないまま玉切り作業を行った。
・合図をせず、他の作業者の退避を確認しないまま作業を行った。
対策
・同一斜面で上下作業は行わない※。
・斜面では材の転落防止措置を行う。
・合図をして、他の作業者の待避を確認した上で作業を行う。
※労働安全衛生規則第481条により、造材等の作業場所の下方で、伐倒木等の木材が転落等するおそれのあるところには労働者の立入を禁止。
CASE3 下刈作業で石の上に乗り、転倒して刈払機の刃が当たった
下刈り作業中、露出していた石の上に乗ったところ、足が滑り、転倒。その際、刈払機の刃が左足に当たり、切創した。
原因
・足場に注意しなかった。
・スパイク付きの地下足袋を履いていて、石の上に乗ったため、スパイクが滑った。
・肩掛け式1本桿の握りグリップ付きの刈払機を、腰バンドをしないで使用した。
対策
・刈払機を使用する時は足場に注意する。
・滑りやすいものがある場合は、その上を歩かないなど足場を確保する。
・必ず肩掛けバンド、腰バンドを適正に装着する。
CASE4 下刈作業で同僚の刈刃が伐根に当たり、跳ね返って大腿部に当たった
下刈作業の終わり近くに、同僚が刈っている箇所を応援するため、その近くで刈払っていたとき、同僚の刈払機が伐根に当たり、キックバックが発生。刈刃が跳ね返り作業者の左足大腿部に当たった。
原因
・近接作業を行った。
・合図をしないで、危険区域に入った。
・刈払機の刈刃が伐根に当たり、キックバックが起こった。
対策
・近接作業とならないよう、刈払機作業は半径5m以内に入らない。
・刈払機作業中の作業者に近づく時は、離れた場所から合図をし、作業者がそれに気づいてエンジンを停止させるとともに刈刃を止め、合図を返したのを確認してから近づく。
・灌木や伐根などの障害物に注意するとともに、キックバックが起きても他の作業者に当たらないよう作業者間の距離を保つ。
林業労働災害事例で身につく安全のこと
・過去の災害事例の原因から対策が学べる
・類似の災害への危険意識が生まれる
・災害の起きやすい状況を知ることで注意喚起ができる
教えてくれた人
林野庁 材政部 経営科
林業労働安全衛生指導官
森 満輝氏
「事業主や労働者の方々には、ここで紹介した事例も参考に類似災害の防止を強くお願いします」
DATA
林野庁ホームページより編集部にて作成
FOREST JOURNAL vol.3(2020年春号)より転載