安全意識や現場の意欲向上にも! 5種目で技術を競う日本伐木チャンピオンシップに迫る
2020/04/27
日本伐木チャンピオンシップは2014年に初めて青森県で開催され、以来、隔年で計3回開催されている。5つの競技種目で技術を競うこの大会は、林業従事者の作業への安全意識を高めるとともに、現場に対する意欲向上にもつながっているという。
「チーム青森」の
WLC挑戦がきっかけ
日本伐木チャンピオンシップ(JLC)は2014年に初めて青森県で開催され、以来、隔年で2016年、2018年と計3回開催されている。今年の第4回大会は5月16〜17日に青森市のモヤヒルズで開催され、上位入賞者は、セルビアで開催される第34回世界伐木チャンピオンシップへの出場権が得られる。
国内でこの競技が知られるようになったのは、2010年のWLCクロアチア大会に青森県内の林業従事者有志が「チーム青森」として挑戦したことがきっかけだ。チーム青森は2012年のベラルーシ大会にも出場し、林業界で大きな話題となった。
こうした動きを背景に、2014年には全国森林組合連合会がWLCに加盟登録され、同年の第31回WLCから、JLCの上位入賞者を日本代表として正式に送り出すことができるようになった。これまでの経緯から、大会開催地には毎回、青森県が選ばれている。
安全意識を高め、
現場の意欲向上にも
JLCの開催は、林業にさまざまなプラス効果をもたらしている。第一には、安全意識の高まりで、競技への参加を通じ、チェーンブレーキを適切に利用するようになるなど、安全に対する意識や技術が向上する効果が出てきている。
さらに、林業の社会的地位を高めるとともに、新規就業を促進させる効果も期待できる。そのことが林業従事者の仕事に対するモチベーションを高めることにもつながり、最近は国内各地で同様の競技会が開催されるケースも増え、各会場とも大いに盛り上がりを見せている。
林業の部活「Lumber Jack Club@Kanazawa」を職員有志が立ち上げ、クラブのメンバーが過去3回のJLCに参加している金沢森林組合の河崎仁志参事は、「参加した者が安全に関して『こうするべきだ』と同僚に伝えることで、現場の安全意識が高まっている。技能職員が表舞台で脚光を浴びることにもなり、組合でも参加をバックアップしていきたい」と話している。
日本伐木チャンピオンシップで身につく安全のこと
・確実なチェンソー操作技術が身につく
・チェーンブレーキの使用など安全な作業手順が身につく
・チェーンソー防護ズボン・ブーツなどの安全装備が当たり前になる
WLCのルールに準じ
競技は全5種目
1 伐倒競技
目標に向けて木を伐倒し、伐倒時間、伐倒方向、受け口の深さ、角度、ツルの幅、追い口と受け口の高さの差が採点される。競技時間は3分以内。5種目の中で最も配点が高い。
2 ソーチェーン着脱競技
ソーチェーンを外し、 バーの上下を入れ替えて取り付け、別のソーチェーンを装着する時間を競う。次の丸太合せ輪切りと設置丸太輪切りで不具合が発生するとこの競技の得点は0点になる。
3 丸太合せ輪切り競技
地面から7度に傾いた2本の丸太を上下から垂直に切り、30~80mmの輪切りをつくる。切る順番は下側→上側と決められており、上下の切断面の段差、縦横4方向の垂直の性格さ、スピードを競う。
4 設置丸太輪切り競技
接地している2本の丸太を上から垂直に30~80mmの厚さに切り出し、垂直の正確さとスピードを競う。接地面はおが屑で隠されていて、接地面を傷つけると0点になる。
5 枝払い競技
6mの丸太に差し込まれた30本の枝を切り払い、スピードと正確さを競う。枝の跡が5mm以上残ったり、丸太に深さ5mm以上または長さ35cm以上の傷を付けると減点され、バーが立ち位置にある時の歩行も減点。
DATA
林業における技術と安全意識の向上、林業の社会的地位向上、林業への新規就業の促進などを目的として開催されている伐木・造材技術に関する競技会。世界伐木チャンピオンシップ(WLC)のルールに準じ、伐倒、ソーチェーン着脱、丸太合せ輪切り、設置丸太輪切り、枝払いの5 つの競技種目で技術を競う。上位入賞者はWLCへの出場権が得られる。
問い合わせ
TEL:03-3294-9718
文:赤堀楠雄
FOREST JOURNAL vol.3(2020年春号)より転載