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【人と人が紡ぐ防災】チェンソー技術を生かし、林業と消防で高める地域防災力

チェンソーを使える林業者や災害ボランティアが、地震などの被災地で住民救助などで活躍したことはあまり知られていない。地域の林業者を防災人材の育成者とする新たな動きが始まっている。

<目次>
1.被災地で力を発揮するチェンソー 救出作業を支える林業技術
2.消防隊員にもチェンソーを求められる操作技術の習得
3.林業と消防が垣根を越えて連携 地域一体で地域防災力を高める

 

被災地で力を発揮するチェンソー
救出作業を支える林業技術

2024年元日、石川県能登地方を襲い、甚大な人的・物的被害をもたらした大地震。「激甚災害」に指定された。

「能登半島地震では、倒壊家屋からの救出にチェンソーが活用され、実際に人命救助につながった事例があったと聞いています。また、警察が救出作業にあたり、チェンソーを扱える住民を探していたという話もありました」。

被災地でチェンソーを扱える人材の重要性を語るのは、日本財団災害ボランティアトレーニングセンターの黒澤司さんだ。

日本財団ボランティアセンター
災害特化型の研修施設。サンプル家屋を使った住宅の構造把握、実地を模したチェンソーや重機講習などを総合的に学べる。

チェンソーや小型重機を駆使して救助やがれき撤去などを担う技術系災害ボランティア全国ネットワーク「DRT-JAPAN」を主宰する黒澤さんは、これまで60を超える災害現場で活動。熊本地震や能登半島地震などの被災地でも長期的な支援活動を展開してきた。

DRT-JAPAN
全国の技術系災害ボランティア組織のハブ的存在。建築や消防など多様な職種のメンバーが参画し、連携して活動する。

30年に及ぶ活動を通して黒澤さんが強調するのが、災害現場におけるチェンソーや小型重機の有効性だ。

日本家屋は倒壊すると、つぶれた1階部分に2階部分が乗るケースも少なくない。「住民を救出するには太い梁や間柱などを切断する必要があり、チェンソーが欠かせません。張力に応じて突っ込み切りやミスマッチカットを行うこともあり、林業者に匹敵するレベルの技術が求められます」。かくいう黒澤さん自身も、熟練のチェンソーマンだ。

消防隊員にもチェンソーを
求められる操作技術の習得

復旧作業中のDRT-JAPANのメンバー。倒壊した家屋に入る突破口を作るべく、手にはチェンソーが握られている。

木造家屋が多く、倒木被害も発生しやすい日本の災害現場。被災地支援を通して痛感しているのが、消防や警察など実動組織のチェンソースキル向上だ。

全国の消防局・本部や警察の機動隊ではチェンソーを配備しているものの、林業関係者との関わりが薄いため、山火事での伐倒技術や倒壊家屋内で求められる繊細な操作技術を、十分に訓練できる環境は限られている。

DRT-JAPANが行う技術系災害ボランティア活動は「プロボノ(職業上の経験やスキルを生かして取り組む社会貢献活動)」と呼ばれ、高い技術や専門性が求められる。

つくば市の災害ボランティアトレーニングセンター(VTC)では、消防や警察などの災害対応の実動組織を対象とした講習会を開催。チェンソーや重機の操作技術を習得したり、研修用の木造家屋で倒壊時の救出方法を学んだりするなど実戦的な研修を重ねてきた。

能登半島地震で被災地支援を行った林業者を講師に、2025年に開かれた小松市消防本部のチェンソー講習。

講習には全国各地の消防士らが参加。黒澤さんは「全国の消防隊員がチェンソーや重機を確実に使えるようになれば、被災者救助やがれき除去などを進める大きな力になります。地域の林業者と連携できれば、こうした技術習得の動きが大きく広がります」と強調する。

こうした活動に呼応するように「DRT北陸」が結成されるなど、地域を担う技術系災害ボランティアの輪も各地へ広がりつつある。

林業と消防が垣根を越えて連携
地域一体で地域防災力を高める

こうした思いに共感するのが、これまで東日本大震災、熊本地震、能登半島地震で避難所等への木製組立キット「組手什」の寄贈などの支援をコーディネートしてきた木俣知大さんだ。

森林ボランティア育成事業を通して黒澤さんと出会った木俣さんは「能登半島地震でも、森林組合等の職員が土砂崩壊による孤立集落の解消等に公私ともに活躍していました。被災地では、チェンソーや重機が扱える林業者等は重宝されています。災害大国の日本で、林業技術を地域防災にも活かす仕組みを構築することで、林業の社会的役割や魅力の向上も期待されます」と展望する。

日本財団災害ボランティアトレーニングセンターでの研修。住民の声に耳を傾けながら行う被災地支援を学ぶ。

その必要性は、行政の動きからも見えてくる。

令和5年に消防庁と林野庁が連携して発出した通達も踏まえて、群馬県では林業振興課や出先事務所がサポートとして、市町村消防組織と森林組合が連携した応急対策訓練等が行われた。

木俣さんは「防災庁の設置などを背景に、今後は災害発生後の対応だけでなく、平時からの事前防災が求められます。今こそ、森林・林業分野と消防・防災分野が連携して、下図のように、人材育成や防災体制を構築することで、災害に強い森づくり・地域づくりが求められると思います」と話す。林業が培ってきた人と技術を地域の防災力へ。その連携の可能性が、いま広がり始めている。

●地域防災力を高める森林・林業×消防・防災(イメージ)

PROFILE

黒澤 司さん


日本財団災害支援チーム・アドバイザー。「DRT-JAPAN」を主宰。NPO法人国際ボランティア学生協会(IVUSA)特別顧問。


木俣知大さん


(一社)東京学芸大Explayground推進機構 木育共創ラボ 研究員。企業の森づくり・森林サービス産業・ウッドデザイン賞等プロジェクト創設に多数携わる。


写真/烏頭尾拓磨(メイン)
取材・文/渕上健太
イラスト/岡本倫幸

FOREST JOURNAL vol.29(2026年秋号)より転載

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