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「頑張って成果を出す人」と「頑張っているけど成果を出せない人」はどう評価する? 努力と評価の在り方を考える

平等と公平の違い、説明できるか? 矢沢永吉の名言をきっかけに、組織や林業現場の人材評価のあり方を深掘りする。林業や組織運営にも通じる、努力と評価の在り方を考えるヒントがここにある。

矢沢永吉の「フェアじゃないね」
「平等」か?「公平」か?

矢沢永吉さんが「フェアじゃないね」というのを聞くと「くぅ〜、エイちゃん、シビれる〜!(死語)」と身悶えするおじさん方も多いと思います。僕は、チャラい80年代ポップロック洋楽派なので(笑)、正直、矢沢さんのコアファンではないのですが、彼の生き様を知れば知るほど魅了されます。高校卒業後に広島から東京(横浜)に覚悟を決めて出てきて、叩き上げでスーパースター。「成り上がり」とも評されるけれども、ものすごい努力をされたことが彼のカッコいいルックスに表現されており、彼を見るだけで感動してしまう。

唐突に質問(笑)。矢沢さんの名言「フェアじゃないね」という時の「フェア」は「平等」を意味するのでしょうか、それとも「公平」? 僕らはほとんどの場合、「平等」と「公平」を同意だと理解して使用しています。が、この2語はとんでもなくまったく意味が異なります。

辞書を引いてみると、「平等」は「差別をしないこと、すべて等しいこと」で、 「公平」 は「ひいきしないで平等に扱うようす」とされています(どちらも三省堂国語辞典)。ひえ〜! 説明は簡単なのに、さっぱりわからん〜。ネットで検索すると無茶苦茶ヒットするので、その難しさがよくわかります。

たとえ話でよく出るのは、かけっこする際に能力的に速い大人と能力的に遅い子供が「ヨーイドン!」とすると「大人が勝って子供が負けるのが当然だとして大人が勝つ」と言う考え方が「平等」、「子供が負けるのはわかりきっているので、大人側か子供側にハンデをつけて二者がいい感じに頑張れるようにしてあげる」のが「公平」。

大人と子供の勝負ではなく、職場における大人ばかりの人材の取り扱いはどうでしょうか。社内での立場が同じ社員の場合、①頑張らなくて成果を出す人、②頑張って成果を出す人、③頑張っているけど成果を出せない人、④頑張らなくて成果も出さない人、がいる場合、この4人を「平等(=年収同じ)」に扱って組織経営は成り立つものでしょうか?

あなたの会社、私たちの社会、世の中にはいろいろな人がいます。どのように振る舞うのが良いのかは、人それぞれの価値観次第ですが、ある目標に向かって進まなければならない組織(=会社組織)の場合、成果が求められます。その際、あなたの組織における上記の①〜④の人材の扱い方は「平等」で良いのでしょうか?

僕に相談がされる話の90%はこの話であり、組織で働く皆さんの悩みの90%はこのこと。特に「②頑張って成果を出す人」と「③頑張っているけど成果を出せない人」は、努力が認められない状況が続くと会社を辞めてしまいますね。

僕は、競争が求められる組織の人材管理においては、成り行きにまかせて何もしない「平等」ではなく、成り行きでは差が出てしまう状況を人為的な操作(=仕組みづくり)により「公平」にするべきだと考えています。非情な言い方をすれば、「差をつける(エコ贔屓でなく)」と言うことになりますが、「人材管理の仕組み(=人事評価)」の仕組みを林業業界にもそろそろ取り入れることを考えてみてはどうかと思っています。

そうですね〜、僕には、矢沢永吉さんの「フェアじゃないね」は、努力のすべてが報われるわけではないが「努力をしているヤツを評価してやれよ」と言っているように聞こえてならないです。

PROFILE

FOREST MEDIA WORKS Inc. CEO

楢崎達也


カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、FOREST MEDIA WORKS Inc.にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2024プロデューサー。


FOREST JOURNAL vol.24(2025年夏号)より転載

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