【林内通信ツール4選】山間部でもクリアな通信!林業現場のための最新通信機器
2024/11/18
さまざまな通信技術が登場しているが、自分たちの現場に当てはめたとき、必要なツールはどれだろうか? 現場にあわせたツールを選び、安全で生産性の高い職場づくりを目指そう。
1.フィット感&音質良好 特伐現場で活躍「PROTOS® BT-COM」
2.林業者の「見守り」&山間自治体の通信インフラも「GeoChat」
3.音声もチャットも自由自在! 労災防止&生産性向上に重点「Soko-co FOREST」
4.通信各社が参入! 林業でも実証進む「Starlink」
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フィット感&音質良好
特伐現場で活躍
PROTOS® BT-COM
オーストリアのファナー社が開発したコードレスタイプのハンズフリーインカム。イヤマフ一体型の構造で、同社の林業専用ヘルメット「PROTOS®」の左側イヤマフと付け替えて使用する。アクティブな動きにも対応するフィット感や軽量性、クリアな通話音質で、特殊伐採現場を中心に活躍。重機オペレーターとチェーンソーマンとのコミュニケーションにも向く。
Bluetooth®接続で最大4人のユーザーとの双方向通信が可能。4機が中継地点となった場合の最大通信距離は約600メートル。防滴機能やチェンソーの騒音をカットする高指向性マイクを備える。スマホアプリで最新ソフトウェアにアップデートでき、言語を日本語に変更できるようになったことで、より使いやすくなった。USB充電タイプ。
DATA
PROTOS® BT-COM
¥76,800(税込)
問/株式会社ファナージャパン
TEL:011-807-5454
林業者の「見守り」&
山間自治体の通信インフラも
GeoChat
独自の遠距離無線規格「GEO-WAVE」を利用する小型軽量の個人携行型デバイス。専用アプリをダウンロードしたスマホやタブレットをBluetooth接続させることで、GeoChat経由で親機とつながり、親機の携帯回線等を介してクラウドに接続。チャットや位置情報、SOS信号の送受信が携帯圏外から可能となる。SOSメッセージ送信時は手入力はもちろんのこと、定型文を選んだり、出血や骨折の有無などの質問に回答して一括送信したりする方法も選択できる。
スマホアプリなしでも、GeoChat本体だけで押しボタンによるSOS信号の発信や、端末本体のGNSS受信機に基づく位置情報の定期発信が可能。また、GeoChatと連動可能なウェアラブルタイプのバイタルセンサー「GeoVital」を今秋発売予定で、心拍数の変動に基づいたSOSの自動通報といった「見守り機能」を強化した。
GeoChatに利用されるGEO-WAVEのシステムは、ソーラーバッテリー駆動の中継機を施業現場周辺の山頂部などに置くことで通信エリアの拡大ができ、防災のための河川水位監視・土砂崩壊検知や、獣害対策のための野生鳥獣の捕獲通知など林業以外にも活用できるため、山間部の自治体が多用途な広域通信インフラとしての利用を目指すケースもある。使用者の免許や資格は不要で、簡単な無線局の登録申請や開設届などで利用できるため、地域で自営できる通信インフラとして期待が高まっている。
DATA
GeoChat
周波数:920MHz 送信出力:250mW
電源仕様:内蔵リチウムバッテリー(3.6V/2,875mAh)
その他:準天頂衛星対応GNSS受信機搭載、USB Type-C充電可能
問/株式会社フォレストシー IoT通信事業部
MAIL:fs_info@geowave.jp
音声もチャットも自由自在!
労災防止&生産性向上に重点
Soko-co FOREST
スマホなどの端末とJVCケンウッド社製のデジタル簡易無線トランシーバーを組み合わせたハイブリッド型通信システム。従来品のLPWAは数十mW程度の送信電力であったが、VER2.0よりデジタル簡易無線による通信方式を採用した。強力な5W(5000mW)の送信電力と低い周波数を活かすことができたことで、尾根や谷、樹木などが多いエリアで音声通話はもとより、従来は途切れていたデータ通信の安定化に成功した。無線機の電波を介して携帯圏外でもスマホやタブレットによるメッセージや位置情報共有などのデータ送受信が可能だ。
作業者の一人が携帯圏内に復帰すると、受信済みの携帯圏外作業者の位置情報を事務所と共有できる。専用アプリはオフライン地図上で林小班や作業道位置、林内各所での造材状況を表示できるなど「林業現場の見える化」をコンセプトに開発。生産性向上や労務管理の省力化に重点を置いているのが特徴だ。
他に作業者同士の近接警報機能などもあり、記録したデータはGoogleEarthでも使用できる一般的なフォーマットのKMLデータで出力可能。無線機単体でも作業者の転倒を検知し緊急通知を自動送信するエマージェンシー機能を装備。防水・防塵・防寒性にも優れ、林業には最適の通信機だ。使用者の免許や資格は不要で、事業者による免許申請や登録申請などで使用できる。
森林内で役立つ機能が満載
位置情報共有
常時接続メンバーの位置情報をマップ上に表示し、相互の位置情報把握ができる。自分のアイコンは行っている作業に応じて任意のアイコンを設定できる。ひと目で判別できるよう、任意の表示色も設定可能。
接近警告
端末ごとに設定された警告範囲内に他作業者が侵入した際、接近距離による警告レベルに応じた注意喚起を行う。アプリは重機備付のタブレットで運用することが可能なため、重機対人など、重大事故の防止に活用することが可能。
DATA
Soko-co FOREST
対象OS:Android 8.0以降
最大接続数:5台
最大通信範囲:森林内約3km
問/株式会社 JVCケンウッド 国内無線システム営業部
TEL:045-939-7045
MAIL:SOKOCO_FOREST_JKC@jvckenwood.com
通信各社が参入!
林業でも実証進む
Starlink
米国のスペースX社が運用する衛星利用のインターネットサービス。地上アンテナで衛星を捕捉することで携帯圏外でも高速インターネット環境を構築できる。低高度を軌道する数千機の衛星の利用により、従来の衛星インターネットと比べて高速、低遅延の通信であることが特徴。今後、軌道に投入される衛星が増える見通しで、通信品質のさらなる向上が期待されている。
国内では2022年度にサービス提供が始まり、通信各社が企業や自治体向けのサービスを展開しているほか、家庭用プランもある。林業分野での導入に向けた実証試験も近年各地で行われており、アンテナ設置場所から林内への電波伝搬や電源確保などが円滑に進めば今後、導入が進む可能性がある。
文:渕上健太
イラスト:ササキシンヤ
FOREST JOURNAL vol.21(2024年秋号)より転載