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林業従事者が利用する防護服の安全規格とは? ポイントを紹介!

チェンソーユーザーに欠かすことのできない、防護服。着用する側として、2019年8月に防護ズボン着用の完全義務が始まって久しいが、その後、作る側でも着々と安全性を定めた規格が更新されている。そのポイントを紹介する。

統一した基準・規格で
防護ズボンを作ろう

防護服に限らず、生産されるあらゆる製品についてまわる工業規格。規格とは、工業製品の寸法や形状、材質や性能などの標準を定めた「取り決め」のこと。

例えば、チェンソー防護服は国内外の多くの企業が製造しているが、各社がそれぞれ自由に設計・製造してしまうと、製品がどの程度の安全性能を備えているかが売る側にも買う側にも判断しにくい。

そこで「規格」という必要最小限の標準を設けることで寸法や形状、材質などの統一を図る。
これは生産効率や開発スピード、消費者の利便性に役立つだけでなく、「最低限確保すべき安全性能」を一律に維持する効果がある。

現時点の最新規格はコレ!
EN ISO11393-2:2019 / JIS T 8125-2:2022

世界の規格

時系列でみると……

2019年 チェンソー防護ズボンに関するISO規格とEN規格が統合
2022年9月 JIS規格も改訂(上記ISOの内容に準拠)
↓ 移行期間を経て
2024年1月より上記の新JIS に適合した製品の使用を推奨

これ以降、買い替えの際には安全性がより高い新JIS適合製品に切り替えることが望ましい。



EN-ISO
何が変わった?

EN-ISOとは、欧州標準規格と国際標準規格が統合したもの。

1 ISO、ENの統合により、「EN 381-5」は廃番
EN 381-5 の認証も移行期間終了の2026年9月までとなる

2 チャップスを規格対象に追加
臨時着用や暑熱対策など、特殊な用途での使用が推奨される

3 切断抵抗性の基準を上げた
旧規格……10mm以下のカットスルーは許容 → 新規格……カットスルーは一切認めない

4 取扱説明情報の充実
例:製品の使用期限の明確化。取扱説明書や製品タグを通じた取扱説明情報の充実と義務化

5 防護ズボンの脚端:防護材領域を損なわない範囲での裾上げが可能に!

6 防護材開口部(ズボンのファスナー部分)をより小さく変更した

新JISもEN ISO 11393-2:2019に準拠しているので、チャップスが追加された!

防護ズボン or チャップス、
使用頻度によって使い分けるべし!

「涼しい」「動きやすい」という理由からチャップスを選ぶ人が増えている。しかし、現在のチャップス着用規定では、かなりきつめにしっかりと巻き付けなくてはならず、以前のものとは違ってさほど解放的ではない。また防護ズボンの機能も日々進化しており、とくに日本の夏の暑さへの対策は各メーカーが積極的に取り組んでいるテーマだ。

そうした最新の機能を備えた高級モデルの防護ズボンは軽く涼しいが、高価な点が悩ましい。しかし価格的に求めやすいモデルは、分厚く重い防護材で膝が曲げにくかったり、撥水性が低かったりと難がある。なので、安価で軽量なイメージのあるチャップスを選んでしまう……ということはないだろうか?

防護ズボンは作業者の脚、ひいては命を守るための道具。衣服ではあるが、ツールなのだ。林業など、チェンソーのプロフェッショナルユーザーにはぜひとも安全性能の高い防護ズボンを選んでいただきたい。



教えてくれた人

東京大学大学院 農学生命科学研究科 特任研究員

松村哲也さん


信州大学、同大学院、岐阜大学大学院を修了。博士(農学)。林業労働災害を抑え、作業者の安全と快適を高める方策を研究。機械メーカーや防護装備開発企業との研究開発事案に従事。JIS T 8125原案作成分科会委員。非常勤講師を務める長野県林業大学校ではチェンソー技術の指導とJLC競技への参加支援を行う。


取材・文/薗部暁子

FOREST JOURNAL vol.19(2024年春号)より転載

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