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世界初の林業実証実験、驚きの結果とは?〈後編〉四足歩行ロボット「Spot」の可能性

過酷な環境下でも“動ける”電動四足歩行ロボット! 人手不足や高齢化、業務効率化などの課題を抱えている今、スマート林業と地球の未来を担うロボットに期待が集まっている。日本林業を救う秘めた可能性に迫る!

 

Spotの秘めた可能性が
日本の林業を救う

2022年度、同研究所は表面の凹凸や柔らかさと傾斜度などから、Spotは造林地の巡回や監視、荷物の運搬などの作業をどこまで担えるかを検証する試験を実施し、その可能性を明らかにした。

「ひとことで言えば、想像以上に動ける!です」(宇都木氏)。

実証実験では他にも、造林地で設定したルートを自動で歩行する機能を検証、また複数台のロボットで協調作業を行うためのシステム開発へ取り組んだ。

さらに、造林地の多くを占める携帯電話の電波が届かない場所でもロボットを運用するために、衛星通信や長距離・広範囲をカバーするWi-Fiなどの複数の通信手段を用いて、造林地でSpotが自動で歩行するための通信環境の構築および検証も行った。


Spotの耐荷重は15kg。水入りボトルを苗木などに見立て、山林で安定して運搬・登ることができるかの実験の様子。

「まもなく通信サービスは成層圏から提供できるようになり、新しいフェーズを迎えます。

森林の再造林が進まないと、木材生産機能の低下だけでなく、持続的な二酸化炭素吸収量の確保が危ぶまれ、森林の荒廃による災害の増加などの懸念にもつながります。林業が抱えるたくさんの課題に対し、ロボットをはじめとするテクノロジーを活用したスマート林業の早期実現を目指します」(宇都木氏)。


Spotは5つの立体視カメラで自己位置を特定し自動歩行を行うが、歩く経路周辺の環境が変わった際に自己位置を見失ってしまう。背中に搭載の「LiDAR」により、より広範囲の情報を使い自己位置を把握、安定した自動歩行ができるようになる。また、屋外の様々な状況でも滑落なく歩行できるよう、わらじをつけた試験も行った。

林業でSpotを活用するための実証実験を行っているのは、地球上では日本のこの研究所だけである。人類が火星へ降り立つ日、この貴重なデータがいずれ役立つかもしれない。林業のSF的明るい未来がもうそこまで来ている。

 

話してくれた人

国立研究開発法人森林研究・整備機構 
森林総合研究所

(左)研究ディレクター

宇都木玄氏

(右)省力化技術研究室長

山口浩和氏


 


実施概要

森林総合研究所とソフトバンクが国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託した「農山村の森林整備に対応した脱炭素型電動ロボットの研究開発(NEDO先導研究プログラム)」において実施。

<目的>
電動ロボット活用によるスマート林業とゼロエミッションの実現

<実証実験内容>
(2021年度)
・北海道下川町などにある造林地や急傾斜地などの過酷な環境下で電動四足歩行ロボットの歩行能力についての調査・検討
(2022年度)
・電動四足歩行ロボットによる造林地の巡回や監視、荷物の運搬などの作業可否を検証する試験・造林地で設定したルートを自動で歩行する機能の検証
・複数台のロボットで協調作業を行うためのシステムの開発
・携帯電話の電波が届かない場所でもロボットを運用するために、造林地でロボットが自動で歩行するための通信環境の構築および検証


文:脇谷美佳子
写真:松尾夏樹



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