「エリートツリー」「森林環境譲与税」「森林認証制度」とは? 注目のワケを簡単解説!
2022/10/17
林野庁発表の「森林・林業白書」は、林業に関わる人のための"虎の巻"! 重要な点をナナメヨミしよう。今回は、注目の「エリートツリー」「森林環境譲与税」「森林認証制度」を解説。期待される展望とは?
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再造林の期待の星
よく育つ『エリートツリー』
国内の人工林は本格的な利用期を迎えており、主伐の増加が見込まれるため、再造林に必要な苗木の安定供給が一層重要となっている。
2020年度(2020秋~2021春)の山行苗木(造林に用いる苗木)の生産量は約6600万本となり、このうち約3割が「コンテナ苗」で、良質な苗木の確保、労働力やコストの軽減につながる。
また、選りすぐりの木を人工的に交配し、育った木の中から優れた個体を選んだ「エリートツリー」(第二世代精英樹)も熱い視線が注がれている。
エリートツリー等由来の苗木(特定苗木)は従来の苗木と比べて成長に優れることから、育林コストの削減や回収期間の短縮とともに、二酸化炭素吸収量の向上も期待され、2030年までに林業用苗木の3割、2050年までに9割とする目標を設定。
林野庁では、エリートツリーなど、優良な種苗を生産する「特定母樹」を育てる事業者の認定や採種園や採穂園の整備を推進し、九州を中心に徐々に出荷が始まっている。
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「森林環境譲与税」ってナニ?
何に使われているの?
2019年3月に創設された「森林環境譲与税」。同時期に創設の「森林環境税」の税収を地方公共団体に譲与するもので、2019年度から譲与がスタート。
これまでに、森林整備や人材育成・確保、木材利用・普及啓発など、地域の実情に応じた多様な取組が展開されている。2020年度は、間伐等の森林整備関係に取り組んだ市町村が全国の市町村の7割、人材育成が2割、木材利用・普及啓発が3割で活用された。
全国の地方公共団体で森林環境譲与税が活用され、森林整備や木材利用・普及啓発などの取組が一層進むことで、森林の公益的機能の発揮や、都市部住民の森林・林業や森林環境税に対する理解が進み、山村地域の活性化にもつながることが期待される。
なお森林環境税は、2024年度から国税として1人年額1000円が課税される。
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FSCやSGEC
〈森林認証制度〉の森が増加傾向
持続可能な森林経営がされていることを認証する「森林認証制度」は、第三者機関が、森林経営の持続性や環境保全への配慮に関する基準に適合した森林を認証し、森林から産出される木材や木材製品(認証材)を表示管理することで消費者の選択的な購入を促す目的を持つ。
日本における森林認証は主に、国際的な「FSC認証」と日本独自の「SGEC認証」によって行われている。林業先進国のオーストリアでは85%が認証取得の森林と、欧州では森林認証制度が進んでいる。
国内でも1割程度であるが、SGEC認証を中心に認証面積は増加傾向だ。林野庁でも、森林認証制度や森林認証材の普及促進や、森林認証材の供給体制の構築に取り組む地域に対してサポートしている。
>>【第3弾に続く】
DATA
文:後藤あや子