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架設を省力化&安全性も向上! 悪路に強い新型自走式タワーヤーダが全国へ

パワフルな集材性能と架設作業の省力化、そして作業全体の安全性向上と車体のコンパクト化を両立させたコンラート社(オーストリア)による日本向けの新型自走式タワーヤーダ「KMR4000U」の実演会が開催された。

自走式で設置を安全・省力化
パワフルでもコンパクト

四国中央部を東西に貫く四国山地。その急峻な山あいでは戦後、木材生産が活発に行われてきた。高知県北部の木材産地である嶺北地域で素材生産を牽引してきた有限会社川井木材(高知県本山町)は今年6月にKMR4000Uを国内で初導入し、皆伐現場を中心に生産力強化を図っている。

高知県仁淀川町の同社社有林でこのほど開かれた自走式クローラー型タワーヤーダー「KMR4000U」の実演会には四国各地の林業事業体など約30社・団体から120人超が参加。急斜面の皆伐現場で行われているスギの全幹集材を見学した。


急斜面の皆伐現場で行われている全幹集材

会場は林道から谷側を見下ろすように広がる急斜面。川井木材の川井博貴社長はKMR4000Uについて「全長5メートル弱。幅員は2.2メートルで4トン積みフォワーダより若干コンパクトなので、狭い作業道でも使いやすい。また、タワーを格納すると全高は約3メートルに収まり、回送にも有利」と取り回しの良さを強調した。

従来の牽引式の場合、別の重機で牽引して移動させる必要があり、移動には最低2人の人員が必要で、悪路や急傾斜の現場では危険が伴う場合もあったという。


KMR4000Uの導入メリットを語る川井社長

KMR4000Uの最大荷揚げ能力は4トンとパワフル。一方で「架設作業が人員2人で設置に1日、撤去は半日で終わるようになった。従来の集材機では人員3人で設置だけで1週間掛かった。タワーの展開と格納がリモコン操作なのも扱いやすい」と省力化の利点を挙げた。

KMR4000Uの控え索には高強度ナイロンスリングとシャックルが付属し、架設作業の一層の負担軽減が図られている


架設作業の省力化を後押しする高強度ナイロンスリング

 

 

ワイヤー格納の安心設計
高性能搬器で安全性向上

KMR4000Uは主索と搬器を引き寄せるメインライン、ホールバックライン、各ドラムをそれぞれタワーの中と車体内部に収めている。万一ワイヤーの破断といったトラブルが起きてもオペレーターの安全を最大限確保できる構造にしているのが大きな特徴だ。

「機械の能力を落とさずに、安全性向上と車体のコンパクトさを実現させたのが強みです」と、コンラート社の輸入総代理店である株式会社サナース(横浜市)の坊薗幸弘技術部長は設計理念を語る。


省力化と安全性向上を追求するコンラート社の企業姿勢を説明する坊薗部長

川井木材ではKMR4000Uに取り付ける搬器に同じくコンラート社製の高性能搬器「リフトライナー」を選んでいる。

脱線防止機能やケーブル破断センサーを搭載するほか、引き寄せた材をワイヤーから解放する作業をリモコン操作で自動化した、ルードヴィッヒ社製「オートチョーカー」を併用。吊り荷に近づかなくても荷外しをできる安心設計だ。


荷外し作業の安全性向上に貢献するルードヴィッヒ社製「オートチョーカー」

先山の玉掛け者がリモコン操作で材を送り出した後は、ハーベスタの手前の設定ポイントで自動停止。そこから搬器の引き寄せやオートチョーカーの解放といった動きをハーベスタのオペレーターがキャビン内でリモコン操作する。

「元山と先山のスタッフがそれぞれリモコンを持って自分の作業を完結させることで伝達ミスを防ぎ安全性が高まった」と川井社長。川井木材では10年ほど前からコンラート社製のタワーヤーダを使っており「リモコン一つでも1、2年単位で使いやすいように改良されてくるスピード感がすごい」と評価する。


簡便な操作性のルードヴィッヒ社製オートチョーカー付属リモコン

実演会場では先山、集材後のハーベスタ造材、造材後の丸太のフォワーダ運搬に各一人の計3人で作業を担当。延長約150メートルの主索を通して長さ20メートル超の全幹材が一度に2~3本集材され、ハーベスタでテンポよく造材された。

作業風景を動画で撮影しながら見学する参加者に、川井社長は「架設の省力化や作業全体の安全性向上に加えて現場の効率的な人員配置にもつながっている」と施業システムを説明した。


ハーベスタヘッドWOODYの材の搬出作業を見学する来場者

 

造材も安全&生産力アップ
高性能ハーベスタと好相性

川井木材ではKMR4000Uで集めた材をコンラート社製の0.7クラス向けの高性能ハーベスタ「WOODY60」で造材している。今回の実演会場でも搭載する大型グラップルで中~大径木を同時に複数本つかんで移動させ、スムーズに造材する様子が披露された。

0.7クラスの使用によって急傾斜地の作業道上で材を取り回す際の機体の安定性が大きく向上。木口の最大直径が70センチ程度まで造材できるため、大径木の現場でもゆとりある作業につながっている。


KMR4000Uで集めた材を高性能ハーベスタ「WOODY60」で造材する様子。(写真は川井木材で8月に作業していた際に撮影したもの)

 
WOODY60はローラー部やグラップルの作動圧力、ソーチェーンの張り具合などを電子制御で最適化するほか、径級測定や測長システムの見直しで従来型より造材精度が大きく向上。さらに通常使うメインソーとは反対側に、造材の選択肢を広げる「トップソー」を搭載している。ハーベスタヘッドの無限旋回やグラップル操作時にローラー部をチルトして材をつかみやすくする機能も持つハイスペックマシンだ。「造材性能に優れ、タワーヤーダとの組み合わせによる相性は抜群」と坊薗部長。


工具を使わずにソーチェーンの付け外しができるのも特徴

川井社長は参加者からの「KMR4000Uでの作業効率を高めていくうえでのポイントは?」との質問に「中距離スパンの200~400メートルが、架設面でも出材サイクル面でも機械の持ち味を引き出せる。一回で吊る材の本数は搬器が無理なく行き来できる量にして、回数で稼ぐのがポイント」とアドバイスした。

 

 

悪条件の現場で活躍
集材のスタンダードに


実演会では0.45クラス向けの「Woody50」も紹介した

 
全国的には高密度に整備した路網を使った集材をメインとする事業体も多い。一方で「皆伐が進み、今後は作業道を入れにくい立地の現場も増える傾向にある。架線集材の必要性が高まる中、自走式を含めて日本の山にマッチしたタワーヤーダをスタンダードにしていきたい」と坊薗部長は展望する。

同社はKMR4000Uの国内初号機を川井木材へ納車後、高知県内の別の事業体へ1台を納入。さらに東北や関東、中国地方などの事業体から計5台の注文を受けている。KMR4000Uを含むコンラート社製品のメンテナンスについては、高知県内では今回の実演会を共催し、サナースの四国地域の林業機械の販売店である株式会社高知林業(高知市)が担当。全国では北海道から九州まで5ヶ所に拠点を置くサナースのサービスセンターや支店のほか、各地の整備業者と協力して対応する。


 左から井口さん(サナース)、川井社長(川井木材)、坊薗部長(サナース)、西内さん(川井木材)、中平専務(高知林業)

製材所への丸太の直販に注力するなど高知県の基幹産業としての林業のさらなる躍進を目指す川井社長。「伐木も集材も運搬も弱いところを強化していまのスタイルになった。高性能機械の導入はたしかに初期投資が掛かるが、それに見合う仕事をしてくれている。さらなる出材量アップにつなげたい」。四国山地の山々を見つめながら力強く語った。

 

お問い合わせ

株式会社サナース


取材協力:有限会社川井木材
取材・文:渕上健太
写真:川村公志

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