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国産材原木流通をめぐる近年の動きとは? 直接販売方式が台頭した背景を見る

国産材の利用量が増え続ける中、山から需要者にもたらされる原木の流れに変化が起きている。林材ライター赤堀楠雄の目から見る、国産材原木流通をめぐる近年の動きとは。

大口需要者への
安定供給システムとして普及

国産材原木流通をめぐる近年の動きで注目しなければならないのは、複数の買い手が競りや入札に参加する市売ではなく、特定の需要者との相対取り引きで原木が販売されるケースが大幅に増加していることだ。

こうした販売方式は「システム販売」や「協定販売」と呼ばれ(市場を経由しない原木の流れになぞらえて単に「直送」と呼ぶケースもある)、合板工場や大型製材工場、木質バイオマス発電所などを主な取引先として運用されている。

実際の原木の流れは、山元の素材生産現場や山土場、一時的なストックと仕分けのために設けられる中間土場などから需要者に送られる場合と、いったん市場や共販所の土場に集められ、仕分けた上で輸送される場合の二種類がある。いずれも、従来からの販売方式である競りや入札は行われず、売り手と買い手の直接交渉によって、価格や数量が決定される。

ただし、個々の素材生産業者や森林組合、あるいは森林所有者が買い手と個別に交渉するのでは非効率になるため、供給サイドでは多くの場合、県森連や素材生産業者の組合(素生協)に窓口が一本化されている。



このような相対取引がシステマティックかつ大掛かりに行われるようになったのは、国内の合板メーカー各社が原料を外材から国産材に急速にシフトしたことがきっかけである。

合板工場は一工場当たりの年間原木消費量が最低でも10万㎥は必要で、原料の安定確保が至上命題となる。そこで行政の後押しも受けながら、地元の県森連や素生協などとの間で、数量や価格を定めて原木の売買を行う「協定取引」を多くのメーカーが採用した。合板の原料になる原木は、製材用原木ほど細かい仕分けが必要なく、まとまった量の取引がしやすいこともプラスに働いた。

決まった価格で安定した量を確保できるというのは製材メーカーにとっても魅力で、大規模工場を中心に同様のシステムを採用する動きが広まった。

一方、供給サイドにも直接販売を志向しなければならない事情があった。第一には、大口顧客を確保し、事業規模の維持拡大を図るため。さらに、原木価格が全体的に低下している上、価格には期待できない並材の取引量が増え、市売手数料や椪積み料、運賃といった経費を削減する必要性が生じていた。原木が安いのに経費が多くかかるようでは、出荷者に利益を還元することが難しくなるからだ。そのため、最近は原木市場でも、相対での販売を増やすところが出てきている。



ただし、高価格が期待できる優良材や特殊材は、従来通り市売で販売することがやはり有利になる。また、協定取引はもともと合板工場向けの販売方法として広まった経緯があるため、近隣に合板工場がない地域では、今も市売が原木取引の中心となっているケースが多い。

例えば、栃木県森林組合連合会では、鹿沼、矢板、大田原の三共販所で年間17万㎥ほどの原木を扱っており(2019年実績は17万1197㎥)、その4分の3は従来通りの市売方式で販売している。直送による販売も、並材を中心に手掛けてはいるが、近隣に合板工場はなく、八溝・日光という東日本有数の林業地を有し、質の高い原木が多く産出されるという土地柄でもあることから、今後も市売重視の姿勢を変えずに共販事業を展開していく方針だ。

このほか、協定取り引きの対象になりづらい小規模製材工場が多い地域でも市売に対するニーズは根強い。山側でも自伐林家などは、市ごとに代金が決済される換金性の高さから、市場の存在を重宝している実態もある。

ただし、従来通りの経営でよいわけはなく、時代に即したスタイルを取り入れていかなければ、事業が停滞しかねない。前のめりに変革の道を模索したい。

原木流通のKEYWORD

直送
山元の生産現場や山土場、中間土場などから、合板工場や製材工場といった需要者に原木を直接、輸送すること。主に並材が対象になるが、注文材や特殊材でも行われる。競りや入札を経ずに相対で原木を販売するシステム自体を「直送」と表現することもある。

協定取引
木材生産者あるいは流通業者と需要者が樹種や径級、数量、価格を定めた協定を締結し、それに基づいて原木を売買すること。期間は四半期ごととするのが一般的。当初は紳士協定として不安定さも指摘されたが、最近は双方が協定を重視する姿勢が定着している。


文:赤堀楠雄

FOREST JOURNAL vol.4(2020年夏号)より転載

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