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日本の「里山」と英国の「コピス」、原点に立ち返り森を生かす

C.W.ニコルの森づくりの記録「森と人との関わり方」の連載。第2回目のテーマは日本の里山と、英国のコピス。原点に立ち返り森を生かすことが重要と語るのは、C.W.ニコル氏だ。

» 前回の記事はコチラ
 

「アファンの森」
の活動を通して

子どもなら森のことをしっかり学べば、受験勉強などにいそしむよりも、もっと多くのことを学べます。大人なら地球温暖化を考えるときに、森を深く理解することが最も近道です。
 
我々は森での安全な遊び方を子どもたちに伝えるといったプログラムを、「アファンの森」を中心に17年間続けています。これは効果があると実感しています。
 
日本はこの点については改善されてきた部分もありますが、もっと追い風が必要だとも思います。
 
10年前、英国のチャールズ皇太子が3日間だけ来日され、そのうちの1日間、黒姫に滞在されました。アファンの森を歩いて森の話をするために。
 
そのくらい外国では里山に対する意識が高くなっていて、この「里山(SATOYAMA)」は国際語になっています。
 



 

英国の「コピス」
日本の「里山」

欧米にも同じような伝統があって「コピス」(ひこばえが語源)と呼ばれています。日本も英国も「フォレスト」が森を指すのは同じですが、英国ではコピスの奥にある大きな森がフォレストで、そこにはイノシシやクマなど大きな動物が住んでいる、といったイメージですね。
 
英国のコピスもとても良く、私も英国在住だった子どものころに森で遊んでいたのですが、日本の里山の方が木の種類は豊富だし、森を生かす知恵も奥深いです。
 
今でこそ、英国も日本のように榾木(ほだぎ)でシイタケを作ったりしていますが、昔はそうした文化はありませんでした。
 
英国のフォレストは、数百年前まではアウトロー集団が隠れ住む場所としても描かれています。
 
その代表的なのが、「シャーウッドの森」を拠点にアウトローの豪傑を従えて、貴族や聖職者の富を奪い貧しい人々を助ける義賊として活躍した、中世英国の伝説的英雄「ロビン・フッド」の物語です。
 
一方で、日本の森も奥深いのは同じなのですが、英国とは違い、神々が住む場所として描かれてきました。そのため、昔はあまり森を荒らしたりしませんでした。
 
それが戦国時代あたりから、大名が城を作ったりして、森に対してずいぶん悪さをするようになりました。
 
最近では、英国の里山ではどんな価値がどのくらいあるかが重視されます。
 
ここでいう価値というのは、例えば鷹が住めるどうか。また秋にどのくらい豚を放牧させてドングリを食べさせられるか。これはイベリコ豚ですね。
 
また、日本では竹が自生していて、竹細工でかごなどを作りますが、英国には竹がありません。そこで栗などの木の高枝を切って、その枝でかごやフェンスを作っていました。
 
コピスでは、低い木の葉っぱなどが夏に馬や牛の食料になっていました。そのバランスが微妙で、若葉を全て食べると木が死んでしまいますから、フォレスターがそれを維持するというすごい伝統がありました。
 
一時期、英国のフォレスター文化が落ち込み、森も衰退していましたが、今はまた復活しています。
 
そのきっかけが、2000年代初頭に英国で発生したBSE(牛海綿状脳症)問題、いわゆる狂牛病問題でした。
 

PROFILE


C.W.ニコル

作家・1940年イギリス南ウェールズ生まれ。1995年日本国籍取得。カナダ水産調査局北極生物研究所の技官・環境局の環境問題緊急対策官やエチオピアのシミエン山岳国立公園の公園長など世界各地で環境保護活動を行い、1980年から長野県在住。1984年から荒れ果てた里山を購入し「アファンの森」と名づけ、森の再生活動を始める。2005年、その活動が認められエリザベス女王から名誉大英勲章を賜る。2011年、「アファンの森」が日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に登録される。2016年、(社)国土緑化推進機構より「第6回みどりの文化賞」受賞。2016年、天皇、皇后両陛下がアファンの森をご視察された。


FOREST JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載

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