小規模林業が注目されている今、林業と製材加工が近づくためには?
2019/12/10
第一次産業である林業が製材加工とドッキングすれば、末端市場が一気に近づく。大きな設備や工場が不要な簡易製材システムはとても魅力的だ。また、日本では珍しい横バンドソーの製材システムにも注目したい。
簡易製材やチェンソーミルで
6次産業化をサポート
スウェーデンのLOGOSOL社は、日本でも簡易製材機の有力メーカーとしてよく知られている。
製品のラインナップは主力商品である簡易製材機のほか、手持ちのチェンソーを取り付けて製材が行えるチェンソーミル、プレーナーやモルダーなどで、いずれも大掛かりな施設は不要。
大規模な木材加工販売事業には不向きだが、個人の林家が所有林から伐り出した丸太を製材加工し、付加価値を高めるのにはうってつけの機械だ。チェンソーミルなら伐採現場に持ち込み、その場で製材作業を行うこともできる。
長大な丸太を自ら製材品に加工することができれば、消費者との距離が一気に縮まる。
木工技術や大工技術を身に付け、あるいはそうした技術を有するパートナーを得れば、山から街までを一気通貫で結ぶ6次産業化も実現できる。
自伐林家などによる小規模林業が注目されている昨今、同社の製品の伸びしろは大いにありそうだ。
移動製材機を
グローバル市場で販売
WoodMizer社はアメリカに本社を置く移動式簡易製材機の有力メーカーである。
製造拠点はアメリカ本社のほか、ポーランドのヨーロッパ支社、そして昨年建設した台湾のアジア支社とグローバルに事業を展開しており、この分野のトップメーカーとして知られている。
日本でも個人林家や大工などが同社の製材機を導入しており、山から製材~ものづくりに至る6次産業化を実現している。
製品のラインナップは、メーンの製材機のほか、エッジャーやモルダー、プレーナー等と、丸太からさまざまな製材品を製造するための機械がひと通りそろっている。また、鋸も自社製で、目立て機もある。
同社の強みは、国際的な販売網を確立していることによってサポート体制が充実していること。アジアでも各国に多くのディーラーを配し、さらに新規ディーラーの開拓も進めていて、そのネットワークによる顧客サービスの向上に努めている。
横バンドソーがメーンの製材システム
スロベニアのWravor社は、横バンドソーをメーンにエッジャーや搬送ラインも含めた製材システムを提供している製材機メーカーである。
45年前に家族経営で創業し、現在の従業員数は75名。最近、同国の中心地に敷地面積約6,000㎡の新工場を建設し、今年中に従業員も200名まで増員し、業容拡大を進めることにしている。
同社の製材システムは、横バンドソーをメーン製材機としていることが特徴で、丸太を効率的に板挽きするシステムが確立されている。
日本の製材工場では、横バンドソーは、帯鋸や丸鋸で丸太を挽く際に発生する背板の処理用としてラインに組み込まれているのが一般的で、同社のような製材機の導入事例は、簡易製材機を除けばほとんどないと思われる。
現状では同社のメーン市場はヨーロッパであるが、将来的には、日本や中国を含めたアジア諸国での市場開拓にも取り組みたいとしている。
PROFILE
林業ライター
赤堀楠雄
1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。