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エコ・地域づくり

“地域主体”が大原則! 地元の方と共同で木質バイオマス事業を推進!

飛騨高山の木質バイオマス熱電併給事業には、全国で再生可能エネルギー事業を手掛けるシン・エナジー株式会社(本社:兵庫県神戸市)が参画している。同社は、どんな想いで関わり、この先どこに向かおうとしているのか。地域エネルギー事業のキーパーソン、乾正博社長に聞いた。

自然と共生できる社会へ

――参画の経緯と飛騨高山での役割を教えてください。

「地元有志とともに地域の森林資源を活かしたバイオマス事業の立ち上げを検討していた谷渕さん(現・飛騨高山グリーンヒート合同会社代表取締役社長)から、相談を受けたのが発端です。当社は、エネルギーの地産地消や小規模分散型エネルギー社会の実現を目指して様々な再生可能エネルギーの開発を行っていますが、高山の取り組みには大いに共感を覚えました。

結局、飛騨高山グリーンヒートさんに出資することにもなり、コンサルティングからEPC(設計・調達・建設)、O&M(運用および保守点検)のアドバイスまで、幅広いお手伝いをさせていただきました」。

――採用された熱電併給システムの特徴は?

「ヨーロッパで実績のあったドイツのブルクハルト社製バイオマス発電設備を納入しました。木質ペレットを燃料として可燃性ガスを生成する“ガス化ユニット”と、生成したガスでエンジンを駆動し、電気と熱を作る“熱電併給ユニット”から構成されています。

従来からある木質バイオマスの蒸気タービン発電とは異なり、このガス化システムは小規模でも高効率なエネルギー転換が可能であり、地域の間伐材を使った熱電併給には最適なものなのです。日本では2例目の導入事例であり、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)認定を受けたガス化システムとしては国内初の案件となっています」。

――いちばん苦労したのはどんなことですか?

日本の木材や環境への最適化を図っていくことですね。ヨーロッパと日本では燃料材として入手可能な樹木の種類が違いますから、そこから作られる木質ペレットの性質も違ってきます。ドイツのシステムをただ日本にもってきて、日本の木質ペレットをそのまま入れただけでは、必ずトラブルに見舞われることになるでしょう。

メーカー(独ブルクハルト社)にも日本での使用に関するノウハウはありませんでしたから、我々も試行錯誤の連続でした。いまでこそ安定稼働を実現していますが、広く普及させていくためには、まだまだ研究が必要です」。

――木質バイオマス事業で最も大切なことは何でしょうか?

「木質バイオマスには様々なステークホルダーがいますが、一番大事なのは林業関係者であり、地元の方々の想いを汲み取っていくことです。それなしには20年、30年、そして次の世代までつないでいくことはできません。

当社は、日本各地でエネルギー事業を展開しており、地域の方々と共同で事業会社を立ち上げることもあります。ただ、その場合にも出資は4割未満に抑え、社長には必ず地元の方に就任していただいています。これも、地元主体が大原則だと考えているからです」。

林業研修の様子。シン・エナジーでは、林業の現場を把握するために、社員に林業研修の機会を設けている。

 

――今後の展開についてお聞かせください。

「これまで飛騨高山を含め3ヵ所で小型高効率なガス化バイオマス発電所を手掛けてきましたが、来年度は新たに3ヶ所、翌年にもさらに3ヶ所の取り組みを予定しています。東北から九州まで、いずれも地元間伐材を活かした熱電併給事業です。

飛騨高山については、谷渕さんたちとともに、高山市とも連携しながら、地域新電力会社を立ち上げる計画も進めています。地域の間伐材で作った電気を、地域内で使うという、エネルギー地産地消の実践です。私たちは、これからも地域の皆さんと手を携え、自然と共生できる社会の創造を目指し続けます」。

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PROFILE

シン・エナジー株式会社

代表取締役社長
乾正博氏


FOREST JOURNAL vol.2(2019-20年冬号)より転載

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