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燃料用材としての「木質チップ」の需要が急拡大! 木質チップの需給状況の動向は?

今、燃料用材としての「木質チップ」の需要が急拡大している。木質チップの需給状況の動向はどうなっているのだろうか。日本木質バイオマスエネルギー協会の矢部氏に話を伺った。

廃棄されていた林地残材
大きな価値を生む時代へ

日本の木材自給率は戦後長らく低下を続け2002年には18.8%となったが、その後は上昇に転じ、2021年には41.1%にまで回復した。この顕著な回復の理由は、国内森林資源の成熟に加え、国産木質バイオマスの燃料利用の急速な拡大だ。

令和3年の国産材用途別消費量では、製紙用パルプ・チップが353万㎥であるのに対し、燃料材はその2.6倍となる935万㎥にまで増えており、燃料材は6割以上が国産材で賄われている。これまで未利用で廃棄された枝条等の林地残材が燃料材として大きな価値を生み出しているのだ。

「日本は約3分の2を森林が占める国です。これほどたくさんの木が身近にあるのに、地域で使う燃料の多くを化石燃料に頼っています。実にもったいない話です。林地残材や建材に使った残りの端材を木質チップにして有効活用すれば、1本の丸太の価値が上がり生産性も上がります」(矢部氏)。

木質バイオマスエネルギーとして利用した
木材チップの由来別利用量(全国)


2022年の「間伐材・林地残材等」に由来する木材チップは前年比 5.2%の増加で、林野庁は林地残材の発生量に対する利用率をさらに高める方針だ。

森林・林業基本計画に掲げる目標と実績

2021年の国産材利用量は全ての用途で増加し、製材用材、合板用材、パルプ・チップ用材はおおむね2019年の水準に回復。燃料材は更に増しており、今後も減少せず、維持もしくは増加が見込まれる。



町で使う熱の7割を
木質バイオマスエネルギーで賄う


下川町のように、地元にある木材を有効活用して燃料用チップにすることで、エネルギーの地産地消と循環型社会が創出され、地球温暖化の防止と低炭素社会の構築に繋がる。地域での循環型社会が実現すれば、国産材自給率5割実現も夢ではない。

円安の影響で輸入チップも高騰しているため、国内の木質チップを確保しようとする動きもみられ、地域によっては国産材チップの供給が間に合っていない状況だ。



教えてくれた人

一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会
副会長

矢部三雄 氏


取材・文:脇谷美佳子

FOREST JOURNAL vol.15(2023年春号)より転載

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