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木質チップ生産&輸送をシームレスに! 諸岡の荷台着脱式フォワーダでコンテナ運搬を効率化

木質バイオマス発電燃料として期待が集まる林地残材を使った木質チップ。その低コスト生産は林内から発電所までの輸送効率が鍵を握る。新たに登場した諸岡の「MST55MH」は、トラック共用コンテナに対応させることで、林内から発電所までの効率的な輸送を実現させた。

<目次>
1.林地残材活用へ メーカーに直談判
2.現場からのピストン運搬が1台で完結
3.「MST55MH」の導入で“目指す施業の形”を実現へ

 

林地残材活用へ
メーカーに直談判

「以前は土場にチッパーを据え、伐倒した木を全幹のまま土場に運び、チップにして、チップ集積ヤードに保管し、10トントラックでバイオマス発電所に輸送していました。しかし、大量の木材を集積するには効率が悪く、広い保管場所も必要でした。フックローダつきの「MST55MH」の導入で、チップを複数コンテナによるピストン運搬が実現し、輸送の効率化が図られました」。

こう話すのは大分県九重町で素材生産や造林を手掛ける久大林産の工藤洋一社長。

同社は5年前から大分市内の木質バイオマス発電施設に林地残材で作ったチップを供給している。そこで直面したのが林地残材やチップを効率的に集積、運搬する流れの重要性だったという。

「木質バイオマス発電を山の再生につなげるには林地残材の活用が欠かせません。しかしチップをどう効率的に生産し、輸送するかという問題がありました。そこで諸岡さんに直談判して開発をお願いしたのが『MST55MH』でした」と工藤社長は振り返る。

現場からのピストン運搬が
1台で完結

「MST55MH」の最大の特徴が4トントラック用コンテナを積載できるフックローダを搭載している点だ。

これにより、チッパーに横づけした「MST55MH」のコンテナに直接チップを積み込み、トラックが入れる場所まで運搬。トラックにコンテナをつけ替えて、チップを集積ヤードに運搬し、その後大型トラックでバイオマス発電所まで運ぶ効率的な運搬が可能になった。

汎用性が高い10㎥仕様のコンテナを積載できるフックローダの搭載により、「MST55MH」をチッパーに横づけし、直接チップを積み込むことができる。
フックローダは欧州や国内で定評があるパルフィンガー社製「HT-07」を採用、最大積載量は5.5トン(荷台含む)。

チップが満載になったら、そのままトラックが待つ林道付近にコンテナを運搬。コンテナのみならず林業用荷台も搭載でき、林内から土場までの丸太運搬にも対応する。
積載したコンテナや荷台は機械式ロックで確実に固定され、悪路でも安定走行できる。

空荷になった「MST55MH」は、トラックが持ち帰った空きコンテナを載せてチッパーのある破砕現場に戻り、チップが満載になったら再びトラックにコンテナを引き渡す流れだ。

フックローダ搭載でコンテナや林業用荷台の積み下ろしが可能に。さらに、一般社団法人日本自動車車体工業会が定めた国内統一規格である「JABIA規格*」適合で、そのままトラック輸送が可能に。
林内から木質チップの運搬や林地残材などの効率的な運搬を実現させた。

久大林産は10月、皆伐と再造林を行う現場に「MST55MH」の国内初号機を導入。現場ではクヌギやヤマグワなどの雑木が全幹で大型チッパーに投入され、完成したチップが「MST55MH」のコンテナに次々と流し込まれていく光景が展開された。

*建設現場や林業現場などで使用されるフックローダ式の着脱コンテナ(アームロール式コンテナ) において、コンテナの寸法、フック位置、装着方法などを共通化・標準化することで、メーカーや車両・荷台の違いに関係なく、互換性を確保するために定められた規格。

「MST55MH」の導入で
“目指す施業の形”を実現へ

「MST55MH」のベースマシンは、諸岡が耐久性と安全性、操作性、そして環境性能にこだわって作り上げた。

営業統括部の播磨伸嘉さんは「自重のあるコンテナを載せているので、前後の重心バランスに特に注意しました。フックローダは欧州でも定評があるパルフィンガー社製で、リモコンで簡単、安全に操作でき、走行中の安定感も抜群足回りや車体強度も強化しました」と話す。

大分県は乾シイタケ生産量が全国1位だが、工藤社長は「高齢化で放置林化したホダ木用の山が増えています。そこを皆伐して全幹でチップにすれば、地拵えなしでスギ苗の植栽ができ、経済林への樹種転換をスムーズに行えます」と強調する。

フックローダつきフォワーダの導入でようやく目指す施業の形が実現しました」と話す工藤社長の横を「MST55MH」が力強いエンジン音を響かせながら走り抜けた。

CHECK!

初心者でも扱いやすいコントロールユニット

人間工学に基づいた操作性の良いリモコンジョイスティックとタッチ操作可能なモニターを搭載。コンテナの荷台着脱はリモコンで簡単に操作し、車両後部のリアカメラでコンテナ着脱時のフックとガイドローラーの状態を確認できる。

さらに、機械の状態や位置情報、稼働状況などを現場から離れた場所でも確認できる遠隔管理システムも備え、稼働効率向上やメンテナンス時期の確認などに役立つ。

DATA

MST55MH
最大積載量:5,500kg
走行速度:10.2/7.1km/h
車両全長:5,610㎜
車両全幅:2,485㎜

<用途に合わせて荷台を着脱!>
コンテナタイプ

林業用架台タイプ

撮影協力

久大林産株式会社(大分県九重町)
代表取締役

工藤洋一さん

素材生産から造林保育まで一貫して手掛ける地域林業の中核的事業体。年間素材生産量は約4万3000㎥。林地残材を活用する木質チップ生産の他、近年はスギ苗木の生産も手掛ける。放置林化したシイタケのホダ木山の皆伐再造林にも取り組んでいる。

問い合わせ

株式会社諸岡


文:渕上健太
写真:猪口ゆりえ 

FOREST JOURNAL vol.26(2025年冬号)より転載

Sponsored by 株式会社諸岡

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