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印刷工場できくらげ栽培! 環境制御システムの導入で、新規参入を支援する生産システムに迫る

毎日新聞グループに属する印刷工場が、きくらげ生産に本格的に乗り出す。畑違いの新規参入を全面的にバックアップするのは、農林業用環境制御システムの開発・製造を行うオムニア・コンチェルトだ。

<目次>
1.社員の発案で事業化 きくらげ生産への挑戦
2.環境制御システムの導入で栽培にかかる作業を最小限に

 

社員の発案で事業化
きくらげ生産への挑戦

埼玉県川口市の工場の一室で、林産物生産への新規参入が始まろうとしている。その工場とは、1日35万部もの印刷実績を誇る毎日新聞首都圏センターの印刷所。三大紙の一角を占める毎日新聞の印刷を主に担う大手印刷会社である。

同社川口工場の建屋内に今年2月、きくらげの生産設備が立ち上がった。代表取締役社長の渡邊雅春さんが教えてくれた。

きくらげは日本各地に自生しているが、販売されているのは栽培もの。そのほとんどが中国から輸入された乾燥きくらげだ。安心・安全な国産の生きくらげは供給量が少なく、希少価値が高い。

「弊社では事業提案・改善等の社内公募を行っているのですが、そこで社員が提案してくれたのがきくらげ生産でした。工場内には印刷するための版を作成する製版室という特別な部屋があるのですが、その最奥の一角がデッドスペースになっていました。そこをきくらげ栽培工場として有効利用しよう、という提案でした。将来性を考慮して、採用しました」。

提案者であり新規事業の責任者を務める、同社川口工場印刷副部長の多久幸男さんは、簡易的なパイプハウスでの試験栽培を経て、栽培工場の立ち上げを計画していた。より少ない投資で、効率的かつ持続的に利益を生み出す施設を立ち上げたい。そのタイミングで多久さんが出会ったのが、オムニア・コンチェルト(以下、オムコン)のシステムだった。

「同社の協力を仰ぎ、栽培室の建設から導入設備の決定、栽培ノウハウのレクチャーまで、継続的に支援してもらっています。栽培室は7.4m×11mで面積は80㎡。可動式の6段両面ラックを7列、左右両端は6段片面ラックを設置しました。可動式ラックの採用で面積効率を極限まで高めていて、最大5600株を栽培可能です。最低でも年2回、最大で年4回の収穫を見込んでいます」。

川口工場のきくらげ栽培室では、設置したセンサーで温度・湿度・CO₂濃度を計測しており、それらパラメータが最適な条件に保たれている。これにより高品質なきくらげを、高効率かつ低ランニングコストで、周年栽培できる

「栽培データや環境データ、機器の稼働状況は、スマートフォンやPCなどから閲覧できるようになっています。実際の栽培室を模した3Dイラストで、視覚的に把握もしやすいです」。

川口工場でのきくらげ生産は、他と比較して圧倒的に有利な条件を備えている。それは、温湿度管理の必要性が圧倒的に低いため、電気代等のランニングコストが低い、という点だ。多久さんの説明にも力が入る。

印刷工場の建屋内は、四季を問わず美しく印刷するため、温度は約22〜25度、湿度は45〜55%に保たれています。これがきくらげ栽培に適した温湿度に近いため、機器の稼働を抑えることができランニングコストが低くなる。端的に言って、利益を出しやすいのです」。

奥に見えるのが製版室。印刷品質を保つため、湿度と温度が一定になるよう調整されている。それがきくらげ栽培に適した環境と近いのだという。

オムコンの環境制御技術と栽培環境の見える化(遠隔監視制御)技術による効率化は、工数の劇的な低減も実現するようだ。

多久さんによると、このきくらげ栽培のために新たに人材を雇用する予定はなく、これまで印刷所で働いてきた既存の社員で対応できる見込みであるという。

渡邊社長は最後に「オムコンからは、使い終わった菌床の有効活用や、栽培室内のCO₂濃度が高い時に抽出したCO₂を利用した別の作物栽培など、専門家の視点から、新たな提案もいただいています」と、オムコンへの信頼を語った。

毎日新聞首都圏センターの前向きな取り組み姿勢と、オムコンの技術と経験がコラボレーションして実現したきくらげ生産参入。その未来は明るい。

 

環境制御システムの導入で
栽培にかかる作業を最小限に

きくらげ周年栽培システム
生育に適した環境を自動で保つ

栽培室内にはセンサーが設置されており(写真右上)、その数値に応じて、温度はヒートポンプ等により25~28度に、湿度はタンクとポンプを使用せず給水配管を直接つなぎ個別の電磁弁で散水と加湿を管理(写真右下)。CO₂濃度は真空ポンプと大型換気扇で保たれている。光は、オムコンが開発設計したLEDにより最適な光合成光量子束密度と波長に制御される。


環境監視制御システム「Sfumato(スフマート)」
ハウス内の環境を3Dで見える化

環境監視制御システムSfumato(スフマート)とは、同社の環境統合制御システムと連携して、パソコンやタブレット等の端末でハウスの制御機器を遠隔監視・制御できるシステムのこと。ハウスの状態を数値としてだけでなく(写真右下)、3Dを駆使した画面(写真右上)で直感的に理解できるから、とにかくわかりやすい。

 

PROFILE

 

左から、株式会社オムニア・コンチェルト 代表取締役 藤原慶太さん、株式会社毎日新聞首都圏センター 代表取締役社長 渡邊雅春さん、株式会社毎日新聞首都圏センター 川口工場 印刷副部長 多久幸男さん

 

問い合わせ

株式会社オムニア・コンチェルト
TEL:080-2356-3600


文:川島礼二郎
写真:都築大輔

FOREST JOURNAL vol.23(2025年春号)より転載

Sponsored by 株式会社オムニア・コンチェルト

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