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安全性・効率が上がる 林業専用フォワーダ、登場!

国内の林業現場で稼働しているフォワーダといえば、土木用の車両をベースに改造を施した機械を指すものが多い。今回、北海道の林業事業体に導入された一機は改造版ではなく、真の林業用運搬車両、フォワーダだった。

安全と効率
カスタマイズ性がもたらすもの

グラップルに乗りながら遠隔操作でフォワーダを走らせている様子。将来、フォワーダ先頭にモニターをつけることも検討中。

「北海道にある林業事業体の多くがフォワーダに求めることは3つ。足回りが長持ちすること、走行スピードが早いこと、そしてオーバーヒートしないこと」。

こう話すのは、王子フォレストリーの蜜石数彦さん。北海道全域に拠点をもつ王子フォレストリーは、製紙やティッシュのネピアなどで知られる王子グループの林業会社だ。総勢97名で95台にも上る林業機械を駆使し、道内の森林で素材生産、造林、チップ生産などを行う。2023 年秋に導入したばかりというプリノート製フォワーダ『PパンサーANTHER-T 8 F』を眺めながら、導入の背景を話してくれた。

王子フォレストリーの拠点である北海道は国内で最も森林が多い。広大な土地には針葉樹林が広がり、無論、林業も盛んである。その地形や気候による課題も多く、そのひとつが「雪」だ。ただでさえ作業道は、雨などの影響を受けやすく、そこに雪が積もれば、傾斜がつくほどに不安定さが増す。加えて、昨今の集材距離の長距離化が運搬効率の壁となっている。

「圧雪車を作っている会社のフォワーダなら、傾斜地も難なく走り、しっかり距離もこなせるだろう」。こう蜜石さんが信頼を寄せるフォワーダを作るのは、カナダのプリノート社。雪上車などを開発・製造する特殊車両メーカーで、北海道では留寿都などのスキー場で同社の圧雪車がすでに活躍しており、雪の中の不整地でしっかりと地を掴み走る実績は証明済みだ。

操作はレバーではなく操作性抜群のステアリングハンドル型。フォワーダ運動中も振動がなく快適と絶賛。

メンテナンス費は、機械を扱うのならば必ずついて回るもの。積み重なる修繕費は、どの林業事業体でも小さくない負担であろう。その点、あらゆる特殊車両を手がけるプリノート社製であれば、まず足回りが長持ちし、メンテナンス費削減が期待できるだろうと考えたそうだ。

さらに、林業機械は最初から完成している製品ではなく、完成途上品ともいえる。多様な地形や制約のある現場に合わせてよりフィットするよう機械をカスタマイズできることが求められる。王子フォレストリーでは、ラジエーターのカバーを取り付けるなどのカスタマイズを施している。なんせこういった産業機械系重機はラジエーターの温度が上がりやすい。そこに昨今の温暖化の影響か、北海道の夏も本州に迫るほどの暑さが加わり、内外からの熱によりいっそうオーバーヒートしやすい環境になっている。

PANTHER-T8 Fのラジエーター周りの構造は至ってシンプルで、掃除しやすく、また取り付けた逆ファンにより温度上昇を抑え、埃や落ち葉を排出しやすくしている。「作業中に重機がオーバーヒートしてしまい、やむを得ず作業を中断してしまうなんてたまらない」と話す蜜石さんは、カスタマイズ性があることがあらゆる面で良さを発揮することを熱弁してくれた。

 

リモコンによる遠隔操作で安全を確保
効率も高める

遠隔操作用のリモコン

また、現場の作業シーンを思い浮かべてほしい。どのくらい丸太を積み土場に運んでいくかの効率を考え、それをオペレーター1人で実行する。その際、グラップルとフォワーダ、もしくはフォワーダ内でも運転席とキャビンの乗り換えを都度行えば時間のロスになる。また、乗り換えは転倒事故に繋がることも。ステップに足をかける際、雪などでスリップしてしまうのだ。リモコンによる遠隔操作ならば乗り換え時の事故を防ぐことができ、グラップルに乗ったまま丸太を積み込み、フォワーダを走らせることができる。

(左から)王子フォレストリーオペレーターの椎名さん、現場主任の柳さんと、プリノート窓口の櫻井さんと本社エンジニアのエリックさん。両者で現場での運転中の様子を見ながら、今後の改良点のヒアリングを行っていた。

効率も大事だが、何よりも安全性は欠かせないと力強く話す蜜石さんは、いかに過酷な現場に合うような状態にしていくかはずっと課題と話す。完成形を持たない林業機械には、現場に合わせてアップデートできる「カスタマイズフレンドリー」がマッチする。PANTHER-T8Fは間違いなくその1つである。

 

問い合わせ

プリノート株式会社
TEL:03-4560‐1013
MAIL:Prinoth.Japan@prinoth.com


撮影・取材協力:王子フォレストリー株式会社
写真:松尾夏樹 取材・文:薗部暁子

FOREST JOURNAL vol.19(2024年春号)より転載

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