【はじめてのGIS②】どんな人向け? 習得するための勉強法は?
2024/01/08
GIS=Geographic Information System。スマート林業を担うツールの一つだ。今や欠かせない存在となっているが、習得するのに向いているのはどんな人だろうか? 習得するにはどうやって勉強すればよいのか?
習得するにあたって
向いている人は?
では、GISはどういった人が習得すべき、もしくは向いている技術なのだろうか。挙げられる属性は『各事業体の若手従事者』と『課長などの管理職クラスの従事者』だ。
<各事業体の若手従事者>
現場の施業場所の方法や危険な要素はないかなど、上司に説明するための材料として使っていける。また今後のキャリアアップとして『森林施業プランナー』を目指す人は、ぜひ習得してほしい。
<課長など管理職クラスの従事者>
管轄する山林の将来像から経営を立てるのに役立つ。具体的には、切った後に植えるべき樹種の選定や収益の上がる作業方法、山主や監督官庁への説明資料としてGISが使える。『森林経営プランナー』を目指すクラスであれば、GISの技術は必須といえるだろう。
⇒今は学校のカリキュラムにGISが組み込まれているケースが多く、最近になってようやくGISを学んできた卒業生が現場で活躍するようになってきた。実践だけではなくキャリアアップに寄与する重要なスキルとして、今後はGISの習得は不可欠といえるだろう。
具体例がみたい
例:静岡県森林オープンデータ
国土地理院の地形図を背景に、CS立体図・小班データ・傾斜区分図を重ね合わせた
「今は昔に比べて、無料でQGISがインストールできたり林野庁や都道府県でオープンデータを公開していたりとGISに深く関われる環境が整ってきた。林業従事者にとって、これほどありがたいものはない」と和田氏は語る。
「基礎的なことが分かってきたし、ちょっとレベルアップしたいな」という方には、林野庁が提供しているQGISプラグイン森林ゾーニング支援ツール『もりぞん』を触ってみるのもおすすめ。
出典:ふじのくにオープンデータカタログ
どんなことに使える?
現場に入るための参考資料としての活用が可能だ。計画素案をつくり、現地踏査で整合を図り、計画の実行可否の判断ができる。また、この図により現地の様子を説明ができるため、どんな林業機械を導入すべきかなどの相談もスムーズに。「現場に行かずとも、現地の様子を把握でき、予測がたてられる」というTHEスマート林業ツールだ。
いざ! GISを習得
持っておくと心強い
いつでも振り返れる書籍で学ぶ!
右:オープンデータとQGISでゼロからはじめる地図づくり 著:青木和人
左:改訂版Ver.3.22対応 業務で使うQGISVer.3 完全使いこなしガイド 著:喜多耕一
書籍で学習するなら、青木和人氏著『オープンデータとQGISでゼロからはじめる地図づくり』がオススメ。林業問わず、QGIS全般の基礎が学べる。また応用編として、喜多耕一氏著『業務で使うQGISVer.3 完全使いこなしガイド』もオススメだ。こちらの本は3D解析の内容も盛り込まれており、まさに応用にはもってこいの1冊だ。
まずは青木氏の本で基礎を学び、その後に森林用GISの応用としてステップアップしてみてはいかがだろうか。
この2冊は各事業体に常備しておきたいところだ。
実際に見て、聞いて、動かして
対面で学びたい!
日々の業務の中で、はたしてGISの使い方にどこまで専念していけるだろうか。そんな声が聞こえてきそうだ。GISを学ぶための手段は対面・オンライン研修や書籍など多様にある。まずは身近にある森林大学校などに研修があるかどうか、各都道府県に問い合わせてみるのも一つの手。
●林業大学校などの教育機関や都道府県が主催する研修
一例として、兵庫県立森林大学校では定期的にQGIS研修を実施している。本年度は県内の林業従事者または森林所有者を対象に基礎研修と実務研修を行い、来期も実施予定だ。学べる項目としては、ソフトのインストールから印刷、ポリゴン等データ作成・活用、LiDARデータ活用と幅広く、開催ごとに異なるが初心者~使用者までに対応した充実の内容だ。
ソフトのダウンロードはここから!
QGISのダウンロード先はひとつのみ。北海道森林管理局十勝東部森林管理署により作成されたマニュアルは基礎〜応用と充実の内容。
ArcGIS Earthは無料の3D GISソフトウェア。マップの3D表示をはじめ、さまざまなデータの重ね合わせ、距離・面積の計測、見通し解析、標高断面図の作成もこれ一つでOK。現場でライトに使いたい人におすすめ。
教えてくれた人
朝日航洋株式会社
空間情報事業本部 自治体アセット事業部
自治体DX推進室
和田陽一さん
今回インタビューに応じてくれた和田氏が所属する朝日航洋株式会社では、森林資源解析やデータ作成業務の他、QGISを実際に操作して学べる『ハンズオン講座』の開催などデータを利活用する人の人材育成支援などを行なっている。『もりQ』は朝日航洋の森林分野におけるQGIS利活用のブランド名。
『ハンズオン講座』
この講座では、実際にQGISの操作が学べる。導入方法から基礎的な知識を学べる『初心者コース』や『中級者コース』では、解析や地図作りなど実践的に学べる。
『QGISワークショップ』
ソフトウェアの操作を学ぶだけではなく、グループワーク形式でデータの可視化、課題の発見・共有、解決策の提案などの課題解決のプロセスを体験できる。
取材・文/出合 美羽
FOREST JOURNAL vol.18(2023年冬号)より転載