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これからの森林GISのあり方とは? 進化する技術の現状をレポート

技術革新が進むGIS(地理情報システム)による森林調査・解析技術。利用者のニーズに合わせた調査・解析技術の使い分けや行政機関での利用促進などが森林GISフォーラムで議論された。“森林GIS”の今とは?

現在、GIS第五世代真っ只中。
環境林管理のDX化を進めねば

森林GISフォーラムの30周年記念大会が静岡市で開かれ、専門家による基調講演やパネル討論などが行われた。基調講演に登壇したのは京都先端科学大学の田中和博教授、岐阜大学の粟屋善雄教授、名古屋大学の山本一清教授の3氏。

田中氏はGISの民間利用が始まった1966年以降、森林管理でGISは必須技術になったと振り返り、調査対象を「点・線・面」の三要素で示すベクターデータの利用を経て大容量のクラウドデータの活用に至った現在を「第五世代に入った」と紹介した。

環境林の管理においてDX化を始めてみる

2019年度の森林経営管理制度導入で環境林(非経済林)などは市町村が管理することになったことを「森林GISの今後の方向性を見通す上で重要なこと」と指摘。

その理由として「(費用や手間が掛かる)現地調査をしなくても航空機LiDAR計測でほぼ毎木の母集団データが得られる。(森林調査に費用を掛けにくい)環境林の管理においてDX化をまず始めてはどうか」と提案した。

京都府福知山市での取り組みを紹介し、「航空機解析で毎木の位置や樹高、樹種データを入手し、相対間距の分類をして要間伐林分を図示している。材積や伐採、搬出可能量の推定ができている」と航空機LiDAR計測によるGISデータ活用が森林管理の効率化につながっているとした。
 

林業に見合う精度とは。
データ精度への理解が重要

粟屋氏は航空機LiDAR計測による解析について「利用者は単木の推定値が正しいことを期待している」と述べた。その上で現状では森林資源データ解析・管理の標準仕様書に基づく解析について、単木の材積推定の精度や誤差が利用者に伝わりにくいと指摘。

「どの程度の誤差であれば使ってもらえるか、また(森林資源量推定には)どんなパラメーターが必要かを利用者に聞くべき」と述べ、標準仕様書の一部改訂を求めた。山本氏は機動力に優れたUAVレーザ計測なども含めて、リモートセンシング技術で得られた各種データは「あくまでも(計測時の)瞬時値であることを分かった上で使うことが必要」とユーザー側の理解を求めた。

今後の方向性として粟屋氏は、航空機レーザ/UAV(無人航空機)レーザ/地上レーザの精度と限界を明らかにして用途を開拓する必要があると提言。衛星搭載センサーの高精度化が進む、とさらなる技術革新を見据えた上で「林業の収益に見合う技術を磨かなくてはいけない。リモートセンシング技術は利用者に信頼してもらうことが一番大切になる」と強調した。

航空機LiDAR計測のメリット・課題は?

山本氏は、航空機LiDAR計測のメリットとして「単木を物理的に計測値として測れる」点を挙げた。一方で「直径を直接測れない」「下層木を調べにくい」「計測・解析コストの低減が求められる」といった課題を提示。計測・解析した情報の鮮度を維持するための定期計測や再計測をどのように進めていくかも今後の課題になるとした。

川上から川下まで見通せる人材育成

今後の森林GIS利用のあり方について山本氏は、環境やエネルギーなど木材生産以外の多様な森林の役割が求められる中で「森林情報を在庫化することが必要」と指摘。「(さまざまな森林情報に対する)需要に対応するため、川上から川下までトータルで見られる人材育成に取り組んでいる」と森林GISの担い手づくりの重要性を挙げた。
 



 

行政・市町村・林業現場それぞれ
現場に応じた最適技術を

さまざまな期待を集めつつ課題も抱える森林GIS、
実務で生かすためには、どうすべきか―――。

基調講演した3氏に加え、林野庁計画課の室木直樹氏、静岡県森林・林業局の小池源良局長の2氏が加わったパネルディスカッションでは、行政機関や事業体といったユーザーごとに必要とされる情報が異なる現状を踏まえ、それぞれの実務に則した計測・解析手法を選ぶ重要性が指摘された。

室木氏:
航空機LiDAR計測について「まだ10年程度の歴史なので(解析結果の)標準化はこれから。ようやくデータの精度にみんなの意識が向くようになった。(測定を担う)会社や時期によってデータが異なる場合があるとの声が自治体から寄せられている」と報告。その上で「すべて航空レーザ測定では解決しない。UAVや地上レーダー型の計測機器なども含めたリテラシーを高めて現場で使っていくことが大切」と提言した。

田中氏:
行政と森林組合(林業事業体)が期待するGISは違う。行政レベル、市町村レベルと(林業)現場が求める情報を区別して考える必要がある」と指摘。森林経営管理制度で市町村による管理の対象になった環境林(非経済林)については「そこまで(調査に)費用を掛けられない。経済的に採算が合わないところは航空機LiDAR計測だけでも、かなりいろいろ(解析)できる」と述べ、予算や実務内容に応じた計測・解析手法を選ぶべきとした。

航空機LiDAR計測では直接は測れない胸高直径については調査・解析しなくても森林の管理や施業に必要な情報を得られるケースもあるとして「行政として、施業者として、住民として把握する情報を見据えて上手にデータのオープン化や標準化に取り組めば良いと思う」と提言した。
 

情報のアップデートはいかに
行政施策への活用も課題

自治体や行政機関などでのGISデータの継続利用に向けた課題も議論された。

山本氏:
「レーザで見えたものは精度は高いが一時点(のデータ)なので、10年後や20年後(の姿)は予測をかませないとわからない。ただ全国では(計測を行う)業者も時期も材積推定の手法も違う。情報のアップデートをどうするかも考えなくてはいけない」とあらためて指摘した。

田中氏:
「技術革新のスピードが速い中で、森林資源データ解析・管理の標準仕様書も第一世代、改良した第二世代、第三世代というような整理が必要ではないか」と提案。

小池氏:
自治体や事業体による森林GISデータの有効活用に向け、各種計測・解析手法の特性やデータ精度に対する理解が重要になるとして「インベントリー(広域的な資源量調査)と収穫調査を分けて考える必要がある。(情報の)使い道に応じたデータ精度のベースを決めていくと、限られた予算の中で効率的にデータが出てくる」と話した。

室木氏:
国としての取り組みについて、現状では従来の森林簿をベースとする森林管理計画の立案が中心になっていると説明。GISデータを活用する政策立案が遅れているとした上で「林野庁としても地理空間情報を生かして政策をつくる必要がある。GISをしっかりと使う姿勢を強めたい」と強調した。

パネル討論のコーディネーターを務めた森林GISフォーラムの米康充会長は「ユーザーや研究者の意見を集めて(標準仕様書の改定を)進めたい」と述べた。
 



 

森林情報取得のための
最新機器やツール

より正確に森林情報を得て、より効率的に活用するためのソフトウェアやツールを紹介。

Forest Road Designer/住友林業

航空レーザ計測による精密な地形データなどを活用。低コストで崩れにくい森林内での路網線形案を個人の経験に頼らず効率的に設計するソフトウェア
>>詳しくはこちらへ

ArcGIS/ESRIジャパン

地理情報を収集、管理、解析、共有するGIS活用のためのプラットフォームとなるソフトウェア。多様な地理情報の共有で業務効率化や意思決定を支援
>>詳しくはこちらへ

 

Smart SOKURYO® POLE/パスコ

高性能の2周波マルチGNSSレシーバを搭載。リアルタイムで座標を計測し、境界杭特定や座標較差の確認などを省力・効率化する現地調査ツール
>>詳しくはこちらへ

AW3D/リモート・センシング技術センター

高精細な衛星画像を活用した全地球対応の3D地図。森林管理やインフラ整備、防災分野などでの利用を低コストかつタイムリーに実現
>>詳しくはこちらへ

蒼天/竹谷商事

防塵・防水機能を持つ国産の小型ドローン。制御、ボディ、通信、カメラ、プロペラ、セキュリティまで日本国内の社会インフラの進化をコンセプトに開発
>>詳しくはこちらへ

 

DATA

森林GISフォーラム


取材・文/渕上健太
 


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