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搬出機械は、ただ大量に運べたらOKなのか。面積や目的に合った搬出を実現するには?

目的や用途、山の状況に合わせて、林業機械を選択できているだろうか? 林業も多様な時代、機械にも多様なものを導入するべきと話す、森林ジャーナリストの田中淳夫による、連載コラム「希望の林業」。

 

目的・用途に合わせて
多様な搬出手段を

林業で木材を搬出する専門の林業機械と言えば、フォワーダなどを思い浮かべるだろう。あるいは架線を張るタワーヤーダなどもある。それらは、大量に早く運べることを競いがちだ。

しかし、そうした機械が有効に使われるのは、大規模な林業現場である。機械が高額のうえ、使用するには作業道の有無など制約もある。燃料費やメンテナンスなどコストも高くつく。そもそも大量に運び出すだけの木材があることが前提だ。

考えてみれば、日本の山主の9割は所有面積10ha以下である。この面積で大型重機を導入するのは難しい。

また山主の林業に対する考え方も山の地質や地形などの条件も違っている。複数の山主の山を集約化することも考えられるが、林齢の違う小面積の林区がモザイク状になっている地域も多くて、単純に面積を大きくしたら同じ施業ができるというわけでもない。

量を出せない現場では、使う機械も考え直さないといけない。



最近話題になったのは、低速トルクが強く作業道など悪路走行に長けた4駆トラックが製造中止になったことだ。燃費や排気ガス性能なども絡んでいるのだが、これは小規模な林業を行う山主にとって死活問題となった。

林業現場までトラックを入れて直接原木を積み込めば、作業道からそのまま公道を走って目的地に運べたのだが、それが不可能になってしまうからだ。フォワーダなどを使って山から搬出し、土場でトラックに積み替える方式に替えると、コストと手間が膨らんでしまい、材積の少ない現場には向かなくなる。

この件は、奈良の林業家などが粘り強くメーカーへ働きかけ、日野自動車が改めて新型の林業用トラックを開発するまでになった。トラックならば、木材搬出専用ではないから、さまざまな運送に使える点もプラスである。



より小ロットの木材を出すケースもある。たとえば、工務店などと組んで、建築に必要な長さや形状が合致した原木を数本だけ選んで伐り出す林業家がいる。木工用の短材を出したい人もいる。また雑木林から、薪やシイタケ原木にするための広葉樹を運び出す方法に悩んでいる人もいるだろう。

そんな用途に使える小型運搬機を開発したのは、岩手県の小友木材店だ。耕運機より小さくカートのようだが、足元はクローラー仕様で、動力は充電式電池だ。荷台に丸太の片方の木口を乗せて、馬搬のように地面を引きずりながら運ぶのである。4mのスギ材1本を引っ張れる力があるそうだ。

これらは一例だが、目的や木の使い道によって木材の搬出もさまざまだ。当然ながらコストや手間、使用頻度なども考えないといけない。林業は多様だ。機材も画一的でなく多様なものを取り入れていくべきだろう。

 

PROFILE

田中淳夫

静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。

著書

『虚構の森』


2021年11月30日発行/新泉社

気候変動、生物多様性など、地球的な環境問題が語られる昨今、森林はそれらの大きなキーワードになっている。だが、森林の役割は異論だらけで、果たして何が正解なのか、よくわからない。本書は、そうした思い込みに対して、もう一度一つ一つ検証を試みた。そして林業の役割にもの申す。植林や間伐がCO2の吸収を増やすのか、森があると洪水や山崩れを防げるのか。不都合な真実と真の環境問題の解決を考える。


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