トラックキャブの助手席からクレーン操作で効率化! 木材物流会社の革新的な労働環境
2020/04/02
スウェーデン生まれの運搬機械メーカー・HIABが開発した『HiVision』は、カメラベースの3Dビジョン技術を駆使した林業用クレーンの新たな操作ツールだ。この最新機器を導入した岩手県の古里木材物流の創業者・畠山氏に、その効果と狙いについて話を聞いた。
HIAB製品の故障の少なさが
運送計画の着実な実行に繋がる
1本何百kgという原木をトラックに積み込む作業には、常に危険が伴う。その積み込み作業をトラックのキャビンから出ることなくできるのが、スウェーデン生まれのHIAB(ヒアブ)による『HiVision』。
日本では、HIABブランドを傘下に持つカーゴテックの現地法人であるカーゴテック・ジャパンが販売を手掛けている。その『HiVision』をすでに2台導入しているのが、岩手県の古里木材物流だ。代表の畠山さんは、父・弟と林業に携わった後、新たな挑戦を志して2011年に起業した。
「20年以上、林業を続けましたが、せっかく伐った木がスムーズに出荷されないという現実から、どうしても逃れられませんでした。そこで原木の運搬、つまり物流に特化した事業を始めたいと思ったんです。伐った木をいち早く工場に出荷するというニーズが林業の現場にあると確信していたのです」。
最初は2台の中古トラックを購入し、そこにHIABのクレーンを取り付けた。
「HIAB製品の故障の少なさを、当時から信頼しています。壊れないということは、運送計画の着実な実行に繋がります。『車両や機材が壊れたから運べなくなりました』では、お客様からの信頼は得られません。HIAB製品は、私の経験上、丁寧に使えば不意の故障は皆無。これが事業を軌道に乗せるのに役立ってくれました」。
そして2018年、畠山さんは新たな挑戦を始めた。それが『HiVision』の導入である。
「当社は岩手県に本社があり、東北で事業を行っています。東北の冬の現場は本当に寒い! マイナス15℃なんて日も通常です。東北では凍結したトップシートへの昇降の際、足を滑らせ落下し大ケガをしたり亡くなった方もいます。こんな過酷な環境で働いてくれる従業員の負担を少しでも軽くしたかった。
『HiVision』なら運転者が助手席に移動して、キャビンから原木の積み込み作業ができる。『コレだ!』と直感的に導入を決めてしまいました(笑)。実際に操作性も良く、従来のトップシート作業と同じ要領で作業できるので、社員からは好評です」。
トラックのキャビンで操作が可能。
革新的な労働環境が
人材確保にも貢献
目的は労働環境の改善だったが、『HiVision』の導入は意外なところにも効果を発揮していた。社員のモチベーションアップだ。
「世界的に見ても最先端の機械を操作できる、という誇りを社員が感じてくれているようです。社員の働く環境改善、効率化につながるものは積極的に取り入れるようにしており、不意に社員が辞めてしまう、ということが皆無なんですよ。
当社では『HiVision』を『Scania』のトラックに搭載しているのですが、求人を出すと『あの会社の求人か!』という感じで、直ぐに応募が来ます。人材確保にも役立っているのです」。
古里木材物流では『HiVision』を導入。作業環境の改善のほか、作業効率化や人材確保にも役立っている。
実際に使用している社員は、どのように感じているのだろうか?
「もちろん大満足していますが、困ったことに社員間で『HiVision』の取り合いが起きています(笑)。『HiVision』は四季を問わず半袖Tシャツで作業できますからね。冬の寒さや夏の暑さだけでなく、作業中は虫に刺されたり、スズメ蜂に襲われたり、熊や猪に出くわすことだってあるわけですが、そうした苦痛から解放されるのです。
また、作業着に着替えてヘルメットを被る、という必要もなくなりますから、時短にもなります。社員からは『トータル的に疲れが少ない』という声も届いています」。
しかしである。多くのメリットがあると言っても、『HiVision』は高価だ。費用対効果を考えて、納得できるものなのだろうか?
「当社が目指したのは、労働環境を大切にするという目的を達すること。その後のことは経営努力で解決できると考えました。それは実際に上手くいっています。最初にお伝えしましたが、HIAB製品は、とにかく壊れにくい。そして多くの仕事を効率的にこなすことができる。当社のような経営が可能なのは、HIAB製品のお陰だと言えるかも知れませんね」。
そして同社が近年、新たに立ちあげたのが伐倒部門だ。タワーヤーダーを導入し、伐倒から運搬、植林まで手掛けていく予定だという。これは未来への投資だ。
「『HiVision』を導入して分かったのは、若い世代も林業に興味がないわけではない、ということ。高性能な機材を扱えて、危険でなければ、林業にも若い人は入ってきます。そんな林業を志す人たちが食べていけるよう、次世代、もっと言えば、孫の代まで持続可能な林業を確立したいと願っています」。
地域の林業の課題解決に向け、同社ではクローラー型の自走式チッパーも導入し、木質バイオマスの利活用も開始した。
DATA
カメラベースの3Dビジョン技術を駆使した、林業用クレーンの新たな操作ツール。クレーン脇に取り付けられたカメラによる3次元映像をVRゴーグルで見ながら、連動するクレーンをトラックキャビンの助手席から操作する。
PROFILE
株式会社古里木材物流
代表取締役 畠山 正さん
地域の林業における物流の課題を解決すべく、2011年に起業。トラックが常に荷物を運びながら移動するよう、「片道だけ運ばない」という効率的なスタイルで事業を展開し、業績を伸ばしている。
お問い合わせ
神奈川県横浜市港北区2-13-13TPR新横浜ビル7F
Photo:谷口智彦
Text:Reijiro Kawashima
FOREST JOURNAL vol.3(2020年春号)より転載
Sponsored by カーゴテック・ジャパン株式会社