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絶妙なアシスト! ベテラン林業従事者の離脱を防ぐ“着るロボット”とは

林業従事者は減少の一途を辿っており、それを補うものとして高性能林業機械が注目されている。しかし、オペレーターには緻密な技量が要求される等の欠点がある。そこで機械で代用するのではなく、高齢者のベテランが離脱するのを防ぐことに焦点を当て、開発されているロボットを紹介する。(後編)

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着るロボットで
急坂もスイスイ

林業現場は、乗用タイプの林業機械が増えて山に登るのが楽になったと言われるが、実は道路から細い山道を登ってたどり着く現場は今でも少なくない。また植林や下刈りの作業でも、人が足で急斜面を登り下りしないといけない。高齢になると、それがきつくて山に通いづらくなる。それを背と腰、太腿に装着して、山を楽に登れるようにする機械、いわば“着るロボット”の導入で解決しようという試みだった。

2018年11月には、奈良県の吉野林業の中心地・川上村の山林で実験が行われた。ATOUNが開発している『HIMICO』を装着して山を登る試みだ。

結果として、急坂でも足がスイスイ上がり山登りの疲れが少ないことが確認された。一方で現場作業員ではなく、体力に自信のない人が山に入る必要に迫られるケースにも使いたいという提案を受けたという。確かに所有山林の境界線の確認などで山主が登ったり、視察者が現地を訪ねてくるようなケースもある。その際にも役に立ちそうだ。さらにハイキングなど観光用にも使えるだろう。
 

人の動きをアシスト

私も体験させてもらった。バックを肩から背負う要領で足にセットする。なれると20秒で装着できるそうだ。重さは3.5キログラムしかない。その姿で階段を登ろうと足をあげようとすると、太腿を引っ張り上げてくれる感覚。なるほど楽だ。機械が身体を動かすのではなく、人の動きを絶妙にアシストしてくれる。その点は、電動アシスト自転車と同じ感覚だろう。

一方、人体への装着ではなく外骨格形状のロボット・パワードスーツの開発も行っている。こちらは乗用タイプで、アシストではなく機械が自力で歩行や荷物運搬を行うタイプだ。近未来を舞台にした映画「エイリアン2」や「アバター」に登場した、人が操縦するロボットを思い浮かべればイメージが湧くだろうか。

すでにプロトタイプは幾種類か完成しており、その一つコードネームNIOの場合、可搬重量は両腕で100キログラムあり歩行もできる。建設現場や災害現場で活躍することを想定しているが、林業現場でも丸太を担いで移動できそうだ。もっとも、こちらの実用化にはまだ時間がかかるだろう。

これまで人手不足や省力化の対策と言えば、大型で高性能な機械を導入するか外国人労働者の受け入れが考えられてきた。だが、それでは解決しない問題も多い。さまざまな仕事の隙間に埋もれている小さな重労働を緩和できる機械化も必要なのだ。パワードウエアは、そんな人に寄り添うロボットになるかもしれない。

 

PROFILE

森林ジャーナリスト

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。

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