注目キーワード

政策・マーケット

林野庁東北森林管理局、国有林でのクマ被害対策パッケージを公表

林野庁東北森林管理局は、管内で深刻化するクマによる人身被害を防ぐため、新たな「クマ被害対策パッケージ」を取りまとめた。民家や公道に隣接する国有林における環境整備や、自治体と連携した捕獲体制の効率化などを軸に据え、地域社会の安全確保と林業従事者の安心な作業環境の構築を目指す具体的な取り組みが本格化する。

<目次>
1.深刻な人身被害の現状と 対策パッケージ策定の背景
2.人の生活圏とのすみ分けを図る 緩衝林帯の優先整備
3.自治体連携の強化と 捕獲に向けた手続きの簡素化
4.野生鳥獣の生息環境を整える 多様な森林づくりの推進
5.ITや他鳥獣対策の知見を活かした 先進的なフィールド提供
6.正確な情報発信の徹底と 入林者の安全確保の強化

 

深刻な人身被害の現状と
対策パッケージ策定の背景

東北地方においてクマによる人身被害が相次いでいることを受け、東北森林管理局は被害の未然防止に向けた総合的な取り組みを打ち出した。同局が管轄する青森、岩手、宮城、秋田、山形の5県における昨年度の人身被害件数は、全国の約6割を占めるという極めて深刻な状況にある。こうした危機的な状況や政府が策定した方針を踏まえ、市町村からの要望や地域との密接な連携を基本とした新たな対策に乗り出す。今回のパッケージは、林業を展開する事業者や地域住民の安全を最優先に確保するための具体的な道筋を示している。
 

人の生活圏とのすみ分けを図る
緩衝林帯の優先整備


クマ被害対策パッケージ(出典 東北森林管理局)

対策の大きな柱の一つが、クマと人間の生活圏を明確に区切るための「緩衝林帯」の整備である。造林地のうち特に民家や幹線道路、公道などに接している場所を対象として、優先的に下刈りや使わない樹木の除伐などを実施していく。これにより、林内の見通しを明るく改善し、クマが身を隠しにくい環境を作り出す。具体的な先遣事例として、今年の6月から8月にかけて、観光地としても知られる秋田県仙北市角館町の武家屋敷に近接する国有林での実施がすでに決定しており、今後の先進的なモデルケースとして注目される。
 

自治体連携の強化と
捕獲に向けた手続きの簡素化


クマ被害対策パッケージ(出典 東北森林管理局)

地域社会と足並みをそろえた実効性のある捕獲体制を築くため、国有林のフィールド提供と手続きの簡素化を同時に進める。市町村からの要請に基づき、森林管理署と協定を締結することなどで、国有林の敷地を箱わなや電気柵の設置場所として提供していく。さらに、これまでは国有林内に箱わなを設置する際に必要だった事前申請を不要とするなど、書類手続きの大幅な簡素化を検討している。これにより、クマが出没した際の自治体による初動対応や捕獲作業がこれまで以上に迅速化されることが期待されている。
 

野生鳥獣の生息環境を整える
多様な森林づくりの推進


クマ被害対策パッケージ(出典 東北森林管理局)

今回のパッケージには、目先の捕獲や環境整備にとどまらず、中長期的な視点からクマの生息環境を管理する取り組みも盛り込まれた。クマなどの野生鳥獣が本来のすみかである山奥にとどまれるよう、針葉樹と広葉樹が混ざり合う針広混交林や広葉樹林への誘導を進め、多様な森林づくりを展開する。また、近年にわたり各地の森林に大きな打撃を与えているナラ枯れ被害の拡大防止に向けた防除などの対策も徹底する。クマの貴重な冬眠前の食料となるどんぐりなどの堅果類を確保し、自然の供給力を維持することで、食料を求めて人里へ下りてくるリスクを低減させる。
 

ITや他鳥獣対策の知見を活かした
先進的なフィールド提供


クマ被害対策パッケージ(出典 東北森林管理局)

今回のパッケージでは、他害獣の対策で培った既存の技術や知見を柔軟に応用する方針も示されている。具体的には、ニホンジカの対策において成果を上げている「残渣処理設備」の知見を活用し、市町村の要請に応じて国有林のフィールドを提供する取り組みを進める。捕獲個体の適正な処理体制を整えることで、二次的な被害の発生や衛生上の課題を解決する仕組みを整えていく。林業事業者や関連団体にとっても、こうしたインフラが国有林内で柔軟に活用できるようになることは、地域一体となった防除体制を後押しする要素となる。
 

正確な情報発信の徹底と
入林者の安全確保の強化


クマ被害対策パッケージ(出典 東北森林管理局)

現場での物理的な対策と並行して、事前の危険回避を目的とした情報発信と安全指導の強化にも力を入れる。ブナをはじめとする堅果類の開花状況や結実状況を継続的に調査し、その豊凶調査の結果を広く公表するとともに市町村へ提供する。これにより、その年のクマの出没傾向を予測し、自治体や事業者が事前の防備体制を整えるための判断材料とする。さらに、住民の生活圏に近い国有林の巡視を強化し、目撃情報を検知した場合は速やかに市町村へ共有する。あわせて、林業の請負事業者に対する安全指導や、ホームページを通じた啓発チラシの配布により、現場の労働環境における事故防止を徹底していく。
 

DATA

東北森林管理局におけるクマ被害対策パッケージ(概要)
東北森林管理局 クマ対策の徹底を!


取材・文:フォレストジャーナル編集部

林業機械&ソリューションLIST

アクセスランキング

  1. 【インカム編】林業ライターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー
  2. 【2025年版 チェンソー7選】メーカーに聞く「林業向け」機種、最適な1台は?
  3. 子どものひと言から始まった変革。家族との時間がもたらす心身のヘルスケア
  4. 林業に役立つ人気アイテムを抽選でプレゼント! 応募受付は2026/8/30まで!
  5. 就寝時は仰向けがいい? 入浴時のお湯の温度は? 疲れを溜めないメンテナンス術
  6. 日報で把握した生産性実績は何と比較するのか? 林業現場で成果につながる評価の考え方
  7. ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【ヘルメット編】
  8. 従業員の睡眠を可視化? 科学的な労務管理で実現する林業の健康経営
  9. フリーマガジン「フォレストジャーナル」最新夏号 6/10発行!
  10. プロ向け刈払機用ナイロンコード『テラマックス』がオレゴンから発売

フリーマガジン

「FOREST JOURNAL」

vol.28|¥0
2026/6/10発行

お詫びと訂正

» Special thanks! 支援者さま一覧はこちら