【ボランタリークレジット入門】森林資源の可視化・生物多様性評価で挑む、梼原町と三好市の最新事例
2026/08/06
ボランタリークレジットをめぐる議論は、すでに理念や制度設計の段階を超え、各地で実証と事業化のフェーズに入っている。ここでは、高精度なMRVの実装を先行し、販売までローンチする東京都の取り組みと、自治体・大学・企業の連携によって地域実装を図る徳島県三好市の取り組みを見ていきたい。
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高精度MRVを
事業化へ接続する
東京都・檜原村での実証

東京都の実証は、森林由来のボランタリークレジット創出を手がけるアイフォレストが代表事業者となり、東京チェンソーズ、ヤマハ発動機、九州大学都市研究センターなどと連携して進められた。
対象は檜原村の私有林で、日本版ボランタリークレジット(JVC)の創出と販売を見据え、森林のCO₂吸収量をどこまで高精度かつ低コストで可視化できるかを検証。UAV LiDARと衛星データを組み合わせた新たなMRV手法により、衛星データのみの場合に比べて精度は約61%向上し、従来型手法に比べて30~60%のコスト削減も見込まれた。従来の算定では森林炭素隔離量が過小評価されていた可能性も示されており、「どう測るか」がクレジットの質と価格形成に直結することを示した。
日本版ボランタリークレジットの成立には、方法論をつくって認証水準まで持ち込む必要があり、その整備に約3年半を要したが、2026年日本の森林で初となる日本版ボランタリークレジット(JVC)のローンチへと進み、高精度MRVを実際の事業化につなぐ先行事例となった。また、クレジットを単なる環境価値の売買にとどめず、森林所有者、地域企業、自治体が連携し、森林体験や未利用材活用などの周辺事業へ広げていく構想も示され、地域経済を支える仕組みとしても注目される。
自然資本を
地域経営に組み込む
徳島県三好市の取り組み

徳島県三好市では、九州大学、ヤマハ発動機と包括連携協定「森を繋ぐ協定」を締結し、自然資本クレジットを活用した持続可能な地域づくりに着手した。市の総土地面積の約9割を森林が占める同市では、2ヶ所の未整備市有林を先行実施エリアとし、1ヶ所で生物多様性評価も含めたボランタリークレジットの創出、もう1ヶ所でスマート林業を通じたJ-クレジットの創出を目指している。
ヤマハ発動機は、高精度な森林情報の取得・解析技術を担い、CO₂吸収量の測定に必要な森林資源の測量データ取得や森林整備に協力。九州大学は、科学的根拠のあるCO₂吸収・固定量の算定方法に基づいて調査を行い、三好市が持つ自然資本の豊かさを経済的価値として測定・評価する役割を担う予定だ。
さらに3者は、正確で詳細な森林情報に基づく森林価値の向上、防災対策の支援、未整備森林の新たな活用策の模索でも連携するとしており、脱炭素と地域政策を一体で進める実証としても注目される。森林経営の健全化だけでなく、地域の活性化までを視野に入れ、森林を「守る対象」としてだけでなく、科学的に測り、地域の経済や防災、次世代教育へと接続する資源として捉え直している点にも、この取り組みの特徴がある。
FOREST JOURNAL vol.28(2026年夏号)より転載













