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千早赤阪村における“里山アンサンブル”。金剛山域の里山資源と河内林業の未来を探る

大阪府唯一の村で、指定過疎地である「千早赤阪村」。大和葛木山から金剛山域の河内林業の付加価値の発見に向け、森林関係者が同地に訪れた。里山資源をアートの視点で森林資源の可能性を考える、小見山將昭氏の連載コラム。

森林へのゲート里山

里山から野辺へ、そして奥山から岳(山頂)に至ると、大気の循環からの水の路が人の営みへつづく姿が見えて来る。特に日本庭園はMicro Cosmo(小宇宙)で、自然の美と『水』の流れが凝縮されている。

古来日本では水のポイントに神が祀られて来た。『恵みは山からやって来る』人々はそうイメージし、山の神に感謝し里宮から霊峰を仰ぎ、山頂には奥宮が祀られて来た。里山は森林・山岳へのゲートであり、山の恵みの資源倉庫として周辺の人々と都市部に潤いを与えて来た。

千早赤阪村の棚田。千早赤阪村は大阪府唯一の村で、府内最高地点「金剛山」と金剛生駒紀泉国定公園を有する。人口4,838m人(現在)。南北朝時代の武将「楠木正成」の出身地。棚田などの景勝地が見られ自然が豊か。村の木:クスノキ、村の花:ヤマユリ

今回は大阪府唯一の村で指定過疎地の千早赤阪村での取り組みを調査する目的で、古民家を利活用した里山研修センター『結の里』(千早赤阪村中津原)を基地とし、関東・関西から約20名の森林関係者が訪問した。

『結の里』は、森に囲まれ、棚田や畑で作物が実り、清流が流れた里山そのもの。


幼稚園児が親御さんと、小学生がクラスで里山の自然と産物を体験出来、大阪の都市部から棚田農業を体験に訪れる若い女性も多い。ここを切り盛りするのは谷純子さん。谷さんの手厚いおもてなしを皆で満喫した。

今回は多様な方々が千早赤阪村に集結した。林業関係者をはじめ、木糸・服飾デザイナー、学識関係者、家具制作、楽器制作、ミュージシャン、森林DXクリエイター、スマートヴィレッジプランナー等、真に森林里山資源の多様性と可能性の合わせ鏡のようで、縄文から続く日本の在り方を再発見する結果になった。
調査結果として、千早赤阪村の森林との関わりについて、そして大和葛木山から金剛山域の河内林業を取り巻く未来図を、千早赤阪村長 南本斎氏、2019-2021年の林野庁長官 本郷浩二氏、京都大学農学部名誉教授 高部圭司氏、道田林業 道田憲逸氏など関係者のインタビューとして収録したので、こちらをぜひご覧いただきたい。

また、今回の旅のなかで、千早赤阪オリジナルソング『どんぐりんぐ』の制作も行った。

撮影時の衣装は千早赤阪産の木材から作られた『和紙の布』をメインに、前回訪問した新潟県山熊田の『しな布』とコラヴォし、服飾デザイナー田中秀一氏がJOMONをテーマに制作した。


モデル:奥野真木保 衣装制作:田中秀一、和紙の布:阿部正登、しな布:大滝ジュンコ

「どんぐりんぐ」の楽曲のもととなったのは、千早赤阪村で生まれ育った奥野真木保さんが発した里山ファンタジーだ。彼女は京都大学大学院で里山資源活用の研究を行なっていて、随分と村の様子を伺っていた。以下に、奥野さんによる寄稿文をお届けしよう。

千早赤阪の里山の姿

「実家の蔵の床をタケノコが突き破り、屋根裏にはムササビが居候している。これが私の千早赤阪村での日常です。
私の里山への関心のキッカケは中学時代で、家の周りで増殖する竹が竹ハンドルに利用される展示を見てからです。そこで1年間好きなテーマで調査学習をする授業で「竹」をテーマにして里山資源に興味が湧きました。

大学でも里山保全と自然資源利用への関心は私の軸となり、学部では京都市鞍馬にて住民が山椒を利用する文化について研究を行いました。住民の方にインタビューを行い、自生する山椒を利用し、あえて管理しすぎない「半栽培」の関係であることが分かりました(研究/奥野・深町, 2023)。
また研究以外でも様々な地域にフィールドワークに行くことで、日本各地で自然資源を利用する文化があること、高齢化・シカ獣害など共通点のある課題に直面していることなどを実感しました」。

千早赤阪村の魅力

「千早赤阪村を見回すと、棚田百選の一つの下赤阪の棚田や、ギフチョウ(アゲハチョウ科/準絶滅危惧種)の生息地である金剛山を仰ぎ見、ムササビが夜空を滑空する森を抱く伝統林業地として、次の世代に残したい風景がまだ地元にもたくさんあると気付かされました。
他地域から訪村された方々は『素敵な地!』『千早の良さが溢れている!』と言ってくださり、当たり前と思っていた自然と人の営みがつながり、そのバランスの維持に価値があると実感できました。

今回制作していただき、私も携わった千早赤阪里山ソング『どんぐりんぐ』にも人が生きものや森とつながって暮らすことのワクワク感が詰まっていると思います」。

里山関係人口と農林業

「里山の良さを認識できても、たくさんの課題が目の前にあるのが現状です。友人たちは『山と森しかない』と大半が村を離れ、村は人口減少と高齢化が進んでいます。その結果、山や竹林は放置されて暗くなり、棚田も休耕田が目立ってしまっています。何をすればよいのか?私には何ができるのか?
私は関係人口を増やすことが重要だと思っています。村民でなくても、月に1回・年に1回来る人・近くの大学のボランティア……様々な関わり方の可能性があります。
                   
大阪市内(難波)からは電車で30分と車で20分。中心部から近いのに自然豊かだからこそ、関係人口になりうる人も多いと考えます。
棚田の休耕田を協働管理する年間イベントなど、関係人口となりうる人のニーズと村の課題の双方をくみ取った活動がもっと活発になれば、里山を未来につないでいくことができると信じています」。

里山を未来へつなぐ

「私は大学院生として、研究の中で地域に根付く自然を活かした文化を記録し、分析し、未来を作る知識・知恵を多くの人に残していくことを目指しています。今この瞬間も自然を活かした文化が消えかけている状況だからこそ、今行う価値があると考えています。また将来は、里山と人々をつなぐ架け橋のような人になりたいです。森を守り活かす人々と都会に住む人々。

今の時代を生きる私たちと将来世代。里山の魅力を多くの人々に伝え、地域に伝わる文化を大切にして里山の課題に取り組むことで、それらの人々をつなげられると思います。『森しかない』のではなく『森も山もある』と意識を転換させられるような社会づくりに貢献したいです」。

DATA

千早赤阪村YouTube
インタビュー 里山の未来を語る
千早赤阪ソング『どんぐりんぐ』

PROFILE

創造再生研究所/所長
クリエイティブ・ディレクター

小見山將昭


祖父が木挽職人。両親の勤務先JA敷地で育つ。音楽マネージメント&プロデューサー。上場企業コンサルや地域再生コンテンツプラン等。


参考:奥野真木保, 深町加津枝. 京都市鞍馬における住民のサンショウの採集利用と継続要因. ランドスケープ研究86-5, p.617-622. 2023.
文:小見山將昭 寄稿:奥野真木保/京都大学大学院

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