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エコ・地域づくり

会場は林業の現場、ドレスコードは長靴。石川・白山麓の2日間だけのレストラン

去る10月1日・2日、白山麓の深い森にオープンした「QINO Restaurant (キノレストラン ) 」。「アート×地域食材と間伐材」のフルコースをあじわう、新しいアプローチの地域共創プロジェクトだ。

杉林や林道がオープンエアの
レストランに変わる

フード・アーティストして国内外で活躍する諏訪綾子氏が、造林家をはじめ、ハザイナーや蒸留技師、調香師、ガラス作家、そして霊峰白山から流れる手取川の流域で、旅館や料亭で活動する7人のシェフ・女将たちとコラボし、2日間限定で開いた「QINO Restaurant(キノ レストラン)」
※ハザイナー:端材を家具やカトラリー、日用雑貨やアウトドアガジェットにアップサイクルする木工デザイナーのこと。

会場となったのは、白山麓の森。林道に直接、テーブルとイスが置かれ、美しく手入れされた杉林が一望できる。BGMは、ドクッ、ドクッと山水が湧く地鳴りの音と、ザワザワと木の葉をゆらす風の音だ。

ハザイナーがこの日のために手掛けたイスや食器は、間伐材や端材で作ったもの。7品のフルコースには、白山の森と清らかな水が育んだクロモジやヒノキの蒸留水、ジビエ、川魚、山菜、日本海の幸などが登場。これらの品々を諏訪綾子氏による自然の躍動を感じる演出で提供。白山に降り積もる雪が土や森、川と田を潤し、海や雲へと姿を変える水の循環が表現される。アートというマジックで、白山麓の森と水の豊かさを印象強く、臨場感たっぷりにあじわうことができた。


▲諏訪綾子さんは石川県能登生まれ。特定のコンセプトを食で表現する活動「フードクリエイション」を主宰。山梨県の森林にアトリエを構え、アーティストとして国内外の美術館などで展覧会・パフォーマンス・ダイニングエクスペリエンスを発表している。

 

▲間伐材の丸太を大胆にカットしたテーブルウェアに、樹木の保水力を口内であじわう料理を盛り付けた。

 

▲檜の間伐材と端材で作ったマスに、森ならではの食材を使って北陸の郷土料理を再構築した「森の笹寿司」。

 


▲日本海のふぐに地元の珍味ふぐの子(ふぐの卵巣のぬか漬け)をのせて、山水をかけていただく。森がうみだす豊かな海の恵みをあじわう料理。

 

東京と白山麓の人々が連携する
「木を使い、山を育てる」試み

「QINO Restaurant」を主宰したのは、企業広告やブランディング、CM制作などを手がけるfabriq(東京都渋谷区)代表の高平晴誉氏。仕事でたまたま訪れた白山麓のアロマ蒸留所「EarthRing」の蒸留技師・大本健太郎氏との出会いを機に、2019年より造林業を営む白峰産業をはじめとする白山市の有志らと地元の木を活用して森林を保全する地域共創の支援事業プロジェクト「QINO(キノ)」をスタート

2021年には、間伐したスギの木とともに捨てられることが多い、日本固有の香木クロモジの蒸留水を使った“木を飲むソーダ”こと「QINO SODA」を開発・販売。ほかにも木育授業「QINO school」を小学校で実施している。今回の「QINO Restaurant」は、構想3年という満を持しての開催となった。レストランの営業はこの10月1・2日で幕を閉じたが、今後もスタイルを変えて続けていくという。


▲「QINO(キノ)」を立ち上げたfabriq代表の高平晴誉さん。

 


▲「EarthRing」の大本健太郎さん(左)。みずから蒸留したクロモジやヒノキの蒸留水が料理に使われた。

 

QINO SODA


爽やかな香りが広がるQINO SODA。地元の杉林に自生するクロモジのアロマ製油をつくる際、副産物としてとれる、使い道のなかった蒸留水を活用。商品の利益の一部を今後のプロジェクトや山林保全に還元している。
 

木材の流通だけでない
川上と川下のつながり

「QINO Restaurant」では、創設からのプロジェクトメンバーである地元の造林家やハザイナー、蒸留技師の人たちが自らサービスを担当した。

「この間伐材の杉のプレートはきちんと削って手入れすれば、10年は持ちます」と教えてくれたのは、イスやテーブルウエアを手掛けたハザイナーの福江翔太氏。ジビエのピンチョスを載せた大皿は軽く、焼杉に加工して水にも強い。間伐材を実際に見て、触って、捨てるにはもったいないものだということが体感できる。

会場となった林道の整備のほか、スギやヒノキ、クロモジなどの間伐材の提供、歩道づくりなどを担当したのは白山市で昭和40年創業の造林会社「白峰産業」。同社の取締役専務の尾田(びた)弘好氏は「高平さんの熱意にひかれてこのプロジェクトに参加しています。レストランで料理を楽しみながら日本の森の現状を自分の目で見て知ってもらえるいい機会だと思いました」と話す。

木を使い、山を育てる白山麓のプロジェクトが川上の小さな一滴となり、川下のまちまで届き、いずれは全国に広まるモデルケースになっていくことに期待したい。


▲端材をデザインする木工職人=ハザイナーの福江翔太さんは、白山市の製材所で家具職人を経て独立。どの器も間伐材への愛情が伝わる。

 


▲杉の間伐材のプレート。熊、鹿、猪のピンチョスはクロモジの枝を使って。森のいきものたちがめぐり巡る土をあじわう料理。

 


▲コースを締めくくる最後のデザートは、この日のために間伐してつくった光が差し込むとっておきの森に移動。山水が雲になり虹になり、めぐり巡るテイストのデザートをあじわうための空間。

 


▲白峰産業の取締役専務の尾田弘好さんと、いちばんの若手社員の村井日向さんもサービス担当。

 


▲「QINO Restaurant」のスタッフのみなさん

 

 

 

問い合わせ先

QINO PR事務局(合同会社quod)
MAIL: pr@cfquod.jp(@を半角に変換して宛先に入れてください)


取材・文:後藤あや子

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