《自転車や人工衛星も!?》未利用材や国産広葉樹が大活躍!”これからの木材利用”最前線
2023/02/20
曲がり材などの未利用材や国産広葉樹は、製材しにくいためチップや木質バイオマス燃料へ活用されている。しかし使い道はそれだけじゃない! 新しいマテリアルとして生まれ変わり活躍していることをご存じだろうか?
未利用材を活用した
デザイン性の高いオフィステーブル
森林整備で発生した曲がり材や枝条などの製材できない木材は、コストや運搬面から森林に放置され、自然災害などの原因になっている。
こうした未利用材を天板に活用したテーブルが2022年11月にオカムラの「SPRINT(スプリント)」から発売された。低質材や根元部、曲がり材、枝や葉など、今まで家具に使われていない部分も積極的に取り入れているのが特徴だ。
未利用材を有効活用した輸送用パレットで知られる「エースジャパン株式会社」と協業し、国内の未利用材のほか、ダムにたまった流木なども資源として回収。本来なら廃棄されてしまうこれらが、チップ→乾燥→攪拌→成型の工程を経て、テーブルの天板として生まれ変わる。
未利用材(葉、枝など)から作った天板。縁材をつけず、チップの質感を活かしている。
チップの質感を活かしたデザインはオフィス空間にほんのりと木の温かみを演出。今後は学校用にも展開していく予定だ。
未利用材天板を使用した学習用デスクのイメージ。
DATA
●商品名:クリエイティブファニチュア『SPRINT(スプリント)』テーブル(未利用材天板)
●価格:64,200円~(本体価格・税抜)
●サイズ:700W× 450D× 720H(mm)
●天板カラー:2色(ホワイト・ブラック)
問/株式会社オカムラ
2023年 地球の木材 宇宙の旅
世界初の木造人工衛星が宇宙へ!
京都大学と住友林業の共同研究『宇宙木材プロジェクト』が進める世界初の木造人工衛星が2023年度についに打ち上げられる。
作成中の木造人工衛星。LignoSat(リグノサット)は、Ligno(木)と 人工衛星(Satellite)から命名。
木造人工衛星「LignoSat(リグノサット)」は、1辺10cm程度の立方体の形をした小型の衛星で、外側は木材と太陽電池で覆われる。木材は電磁波・地磁気を通すため、アンテナや姿勢制御装置を衛星内部に設置でき、衛星構造を簡素化できる可能性がある。
衛星の素材はアルミニウムが主流だが、役目を終えて大気圏に突入すると酸化アルミニウムの粒子が発生し、これが地球の気候などに影響を与えるという。一方、木造人工衛星は運用終了後に完全に燃え尽きるので、燃焼時に大気環境等の汚染源となりうる微小物質が発生せず、より環境に優しい人工衛星の開発につながる。
材料費も安く、加工もしやすいこともメリットだ。
宇宙空間にさらされる木材試験体。
プロジェクトでは、2024年3月まで宇宙環境下での木材物性評価や樹木育成研究を行う。地球だけでなく宇宙にも木材利用が広がる時代がいよいよ始まる!
地球を周回する木造人工衛星のイメージ。
北海道産タモ材の木製自転車が
「ウッドデザイン賞2022」受賞!
昭和40年創業のカネモク工業は、商品陳列用の店舗什器をはじめ、ホテルから店舗、住宅までの特注家具や建具などの製造を手掛ける。
木で暮らしと社会を豊かにするモノ・コトを表彰し、国内外に発信するための顕彰制度「ウッドデザイン賞」。2022年の応募総数は330点。188点がウッドデザイン賞を受賞し、その中から28点の上位賞が選ばれた。
編集部が注目したのが、優秀賞(林野庁長官賞)のハートフルデザイン部門で選ばれたカネモク工業株式会社の『木製自転車スポーツタイプTR-S型 E-Thruタイプ』。
自転車のフレームに広葉樹王国・北海道産のタモ材を使用し、家具職人達が木目方向などを見極め、木の特製を活かして1台ずつ組み上げている。木製フレームはJISの試験基準をクリアしており、耐久性にも優れる。
近年の林業界では、製紙チップやバイオマス燃料に需要が多い国産広葉樹を木材として活用する動きがある。職人の技を活かした工芸品ともいえる世界で1つの木製自転車は、その可能性を広げてくれる。