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林業者の取り組み

雇用形態ちゃんと管理できている? 林業事業体で未来の人財は育っているのか

林業事業体は林業の未来を育てているか。「労働力か組織の未来か」どちらが大切なのか。意図的に目指すべき改革をアドバイスする、経営支援のプロ・楢崎達也の連載コラム「次世代林業Lab」。

人財として扱うためには
「月給制」が理想

いきなり極論かもしれませんが、従業員を単なる労働力ではなく人財として扱うためには、「月給制」が理想だと思っています。就職する(≒社会人になる)ということは、月給制で給与をもらうというイメージです。

楢崎が初めて正社員として就職したのは29歳の時(笑)。

コンビニ、バーガーチェーン、牛丼チェーン、屋根職人、大手引越し業社等でアルバイトとして、携帯電話の電池の工場では派遣社員として働きました(その後、流行った「派遣切り」で急に解雇された!)。

そのあと、アルバイトをさせてもらったとある会社で契約社員を経て、正社員となりました。(月給制になった時は「これで結婚できる」と嬉しかった)。

7月に某林業関連教育機関の講師から質問がありました。

「学校で一生懸命学んできた卒業生が日給制で雇用されると自分の人生の展望を考えにくくなるので、月給制の林業事業体に就職させてあげたい。卒業生を単なる労働力として扱わず、将来ある人財として扱ってくれる会社はないでしょうか?」というもの。

その連絡を受けて、この講師と林業教育関連を統括しているA県とB県の県庁職員(課長クラス)を結んで意見交換を行いました。



単なる労働力?
雇用形態を見直す必要性

「日給制」とは働いた時間の分だけ払うという仕組みです。

そういう雇用形態では、「体を動かして木を切ってなんぼ」という考え方になりがちです。そのため、「日給制」で雇用されている社員は、組織にとって直接的な生産につながらない会議などには基本参加できない状態で運用されていますよね。

例えば、社内の重要会議(生産性、労働安全)、社内・社外研修など。さらに、会議や打ち合わせが時間外に行われるような場合(このケースが多い)だと、「日給制」の職員は給料がもらえないので、当然、参加しませんね。

そのような雇用環境で、組織の成長を考えることができる人材が育つのでしょうか?

確かに、林業業界は労働力不足です。労働力を確保することは急務です。しかし、果たして、林業業界の将来に必要なのは「単なる労働力」なのでしょうか。

経営者側からすれば、働いた時間だけで給料を払うことができる時給・日給制は、非常に単純で管理・運用しやすく、お得だと思います。

一方、仕事ぶりを評価して払わなければならない月給制は、その運用に高度な経営知識が求められます(ちょいムズ)。しかし、経営がわかる職員が減っている今こそ、単なる労働力ではなく人財を育成することに力を入れるべき時だと思います。

一般企業の多くは、正社員を月給制で雇用します。それには理由があります。林業業界に来てくれる人材は決して多いとは言えません。そういった人材を単なる労働力として扱わず、「大事な人財」として扱うようになれば、魅力的な職業になり、人はもっと来るし定着するようになると思っています。

給与形態ごとの人材管理の方法


※日給制、出来高制の場合でも、給与制度を工夫すれば人材育成の品質を高めることは可能。
(FOREST MEDIA WORKS研修資料から抜粋)

 


PROFILE

FOREST MEDIA WORKS Inc.
CEO

楢崎達也


次世代森林産業展2022プロデューサー

カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。

現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。


FOREST JOURNAL vol.17(2023年秋号)より転載

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