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林業で危ないのは伐採だけじゃない!? 森林に潜む危険から身を守ろう!

常に危険が伴う林業作業。いつ、どんな場所で危険が待ち受けているのか、実際に林業経験がある筆者が自分の体験を交えながら紹介していく。森林に隠れる危険を学び、対策を知ろう!

<目次>
1. 【林道】意外と滑る、山に必ず落ちてるものとは?
2. 【枯れ木】いつ倒れるかわからない!?
3. 【蜂】意外なところに潜んでいる!
4. 【鉈(なた)】便利だが凶器となる!?
5. まずは安全の確保!

 

林業の死亡事故
最も危険なのは伐木作業

林業の作業で最も危険な作業はなんだろう。

どの作業も常に危険と隣り合わせだが、その中でも死亡事故の割合が多いのは、伐木造材作業である。令和3年度において、伐木造材作業によって起きた死亡事故は林業作業で起きた死亡事故全体の約65%を占める。

しかし、伐木造材作業以外に危険がないかといえば、決してそんなことはない。今回は、ひとつ間違うと大事故に繋がる危険要素を紹介しながら、その対策をお伝えしたい。
 

意外と滑る
山に必ず落ちてるものとは?

山での仕事に欠かせない林道。そこに潜む危険を詳しく見ていこう。

林道の危険要素である「落ち葉」。林道には、アスファルトやコンクリートで整備されているものもある。その路面で気を付けたいのが「落ち葉」だ。水を含んだ落ち葉は、スリップの原因となってしまう。

林道は木に囲まれているため、落ち葉が堆積しやすい。その上を走行すると、タイヤのグリップ力が著しく低下する。

日本気象協会北海道支社の持田浩氏によると、ほとんどの植物の葉には水を弾くワックスの成分が含まれているとのこと。油分があるため、より滑りやすいのだ。

広葉のシーズンなどでは、一般道でも落ち葉が原因の事故が多発している。林道の走行時でも十分考えられるので注意が必要だ。


落ち葉のある林道を安全に走行するために、落ち葉に対しての一番の対策は走行スピードを抑えること。もしスリップしても、容易に車をコントロールし直せるだろう。

もうひとつの対策としては、落ち葉を避けて走行すること。見通しが利いていれば、この方法もおすすめ。ただし、カーブなどでは対向車の問題もあるため、やはりスピードを出し過ぎないで走行するのが、有効な対策だ。
 

いつ倒れるかわからない!?
枯れ木に潜む危険

次の危険な要素は「枯れ木」だ。

皆さんは枯れ木が自然と倒れてくることをどのくらい想定しているだろう?枯れ木の危険性を改めて確認してみよう。

近年ではマツ枯れやナラ枯れといった、樹木を枯らす事象が発生して久しい。10年も昔に枯れたマツやナラは当たり前のように林地内に存在している。

最終的に立ったまま枯れた木は、どこかのタイミングで倒れてくる。倒れるのが今でない保証はどこにもないのが現実だ。

2023年の4月に発生した、キャンプ場での倒木事故は記憶に新しいところ。枯れ木と強風がセットになると余計に危険度が増すため、より注意が必要だ。


枯れ木への対策として、まずは周囲の確認が大切だ。次に、周辺に枯れ木がそばにあるならば、樹木の状態がどうなっているかを見極めたい。しっかりと芯が残っていて、簡単には倒れなそうなのか。それとも手で押すだけでぐらつくのか。

枯れ木の近くで何の作業を実施するにせよ、簡単に揺れるようであれば、先に伐採するのが望ましい。伐倒時は、枯れ枝が落ちてこないかも同時に考えて処理したい。
 

意外なところに!
蜂に気をつけて作業をしよう

次に蜂の危険について考えよう。造林作業中以外にも蜂に襲われる可能性はある。

どんな場合が考えられるか、2つの意外な場所を紹介していこう。

■ 駐車スペースの危険性

ひとつ目の意外な場所は、車の駐車スペースだ

森林では、駐車スペースを自分たちで作る場合が多い。周囲を綺麗にするため刈払いを行うのだが、造林作業と違い現場に入る前なので、油断して蜂対策を怠りやすい。そこで蜂にやられてしまうのだ。

軽作業時の対策は、油断して作業に取り掛からないことだ。防蜂アイテムを装備したり、蜂スプレーを携帯したりするなどが対応として考えられる。軽作業とはいえ、各々対策を講じながら警戒しつつ作業を進めてもらいたいと思う。

■ 樹上に巣を組む

ふたつ目の場所は、伐採木の樹上が考えられる。

危ないのは伐採後で、枝払いをする、ワイヤーを引っ掛けるなど、巣があったところに近づくとやられてしまう。伐採は蜂に対しても気が抜けない作業だ。

対策は、伐倒後に周囲の確認を行うこと。基本に忠実な行動にくわえて、蜂の確認作業を足せると防ぎやすくなるだろう。

もし重機が届く範囲であれば、伐採木を事前に揺らしてもらうのも非常に有効だ。枯れた枝や、巣が落ちることも考えられる。安全に伐採できる対策となるだろう。

鉈(なた)は
便利だが凶器となる!?

山では当たり前の様に使われている鉈だが、刃物である以上、凶器となる場合がある。ここで筆者が体験した事故を2つ紹介したい。

■ 鉈のすっぽ抜け事故事例

ひとつ目は、鉈で仲間の足を切ってしまった事故だ。

ある雨の日、隊列を組んで現場から帰る途中の出来事だった。先頭を行く人は鉈を使いながら道を切り開いていた。振りかぶった際、鉈が手から滑って飛んでいき、後方にいる人の足を切ってしまったのだ。幸い大事には至らなかった。しかし、顔や大きな血管を傷つけてしまっていたらと考えると、非常に運のよかった事例である。

この事例から学ぶのは、雨の日の鉈の扱いは特に危険だということだ。雨で滑りやすくなると、当然手から離れる可能性が高まる。しっかりと握りしめ、周囲の安全を確保しながらの作業が求められる。

また、グリップ力を高めるために、柄の部分に工夫を凝らすのも良い対策だ。テニスのグリップテープと呼ばれる市販のカバーなどを巻き、柄を滑りにくくする手が考えられる。単価も抑えられているので、費用対効果は抜群である。

■ 自らの指を切ってしまった事故事例

ふたつ目の事例は、柴を掴んでいた自らの左手を、枝もろとも切ってしまったもの。なかなか切れない柴に夢中になってしまい、手元をよく見ず鉈を振り下ろしてしまったのだ。こちらも幸いなことに、通院する程度の怪我で済んだ事例である。切断していたかもしれない可能性を考えると、やはり運が良かったと考えられる案件だ。

この事例から学ぶのは、よく切れる刃を使うということ。切れない刃ほど危ないものはない。なぜなら切れない分、人は余計な力を込めてしまうからだ。切れる鉈を持っている人は、いかにも簡単に柴を切ってしまう。そうすると手元は定まりやすく、事故も起こしにくい。

今一度、自分が使う鉈の刃の状態を確認してもらいたいと思う。

まずは安全の確保
そこから森林へと出かけよう!


様々な危険とその対策を紹介してきた。

山は魅力的だが、同時に多くの危険が潜んでいる。

安全対策は面倒な場合も多い。しかし、やり始めて継続できれば習慣となる。安全のためと思って、習慣となるまで続けてほしいと思う。対策をしっかり講じて、さぁ今日も山へ行こう!


文/きょうわか

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