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林業者の取り組み

《新米林業家、スマート林業を考える。》現場で新しい技術導入が難しいのはナゼ?

林業に転職して3年目の林業家が生き生きと綴る「新米目線」コラム! 第8弾は「スマート林業」について。盛んに話題になるものの、発信地から離れた現場ではさまざまな導入の壁が? 林業初心者の思う原因を語る。

実際、スマート林業って
どれくらい活用されている?

今回は「林業界のスマート化」について、林業初心者目線で書いていきます。先進技術の進歩が目覚ましい今の時代。林業界でも「スマート化」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」において、新しい技術や作業方法が続々登場しています。

では、フォレストジャーナルでも紹介されているような「新しい技術」は、実際の現場ではどの程度、採用されているのか? 正直に申し上げると、僕の周りでは見かけたことがなく、話題にあがることもありません。もちろん、僕の視点であり、僕が知らないだけで実は近くで活用されているのかもしれません。

僕の体験や身の周りの現状から感じるのは、「林業のスマート化」はまだまだ遠い道のりだと思わざるを得ないということ。なぜかというと、林業界全体が、ではありますが、僕の身近な環境でも「20代、30代の現場作業員が少ない」という事実があり、それが関係しているように思います。

 

スマート林業はまだ遠い?
推進の前に認識すべき問題

林業のスマート化、特にデジタル化において、「20代、30代の現場作業員が少ない」ことが課題になる点として意外と無視できないのが、「スマートフォンの所持率」だと思います。僕の周りには、スマートフォンを所持していない方や、持っていても使いこなせない方がいらっしゃいます。

そのこと自体が悪いというわけではありません。

現在の20代〜30代の若手はパソコンやスマホなど、幼い頃から生活の中でデジタルに触れていることが多く、スマート化でデジタル機器などを扱う場面があっても適応が早いと思います。僕自身も30代半ばで、ブログの執筆などでデジタルに慣れていると思います。

しかし、そもそもデジタル技術に慣れていない、または苦手である方が少なからずいます。その中でスマート化を進めるということを、事前に認識しておく必要があります。そして、そのような方は現場の最前線にいらっしゃるベテランの方々に多いということも。

このデジタル経験の差という点が「林業のスマート化」の課題なのではないか、と僕は感じています。




 

「新技術を導入しよう!」
でも……現場で話が進まないワケ

もちろん、現場にいる全員が最新の技術に詳しくなくてもいいのです。新しい技術に詳しい方がその分野の業務を引っぱっていけばいい。ですが、「年功序列」や「上司部下」の力が強く働く環境では、それが中々上手くいかないのが現実。

若手から「新しい技術を取り入れましょう!」と提案しても、会社やチームの組織内で力が強い方が「NO」と言えば、そこで話は止まってしまいます。「NO」と言わないまでも、「うーん、聞いたことないし、よくわからないから勝手にやったら?」というようなことは少なくないのです。

また、新しい技術や情報は、都会や最先端の場所から発信されて地方に届くまでに時差があると思います。冒頭でもお伝えした通り、「新しい技術」などの話が現場や事務所で話題にあがることがありません。まず社内で話題になるまでに時間がかかり、実際に現場レベルまで話が流れてくるのはさらにもっと先の話となります。

これだけたくさんの情報が溢れる現代でも、都会から地方への情報の伝達速度はそこまで速くはないのだ、と痛感させられます。そうなると、新しい技術へチャレンジすること自体のハードルも高くなります。

 

現場で新技術の導入が進まない
もう一つのワケとは

そして、実際の現場では「お試しができない」のも問題のひとつだと考えます。

新しい技術を試す場が無い、という意味ではありません。日々の仕事でいっぱいいっぱいで、新しいことに取り組む余裕が無い、ということです。林業界はどこも常に人手不足です。少ない人員でたくさんの現場をこなしている環境では、新しいことに取り組む余裕が無いと思うのです。

人材も資金も、「未完成のモノ」への投資ができないという環境が「スマート化」を遅らせている原因なのではないか? 林業初心者の僕が実際の現場で感じていることです。僕が運営側の人間なら、「すでにいろんなところで実験が進んでいて、一定の成果や効果の見込める技術であれば、取り入れたい」と考えてしまうでしょう。




 

それでもやっぱりスマート化を。
長い道のりを前に鍛えたい技術

では、「スマート化」や新しい技術への取り組みというのは現実的には難しいから諦めた方が良いのか? というと、諦めるなんてありえません。

新しい技術や情報はとても大切ですし、僕たちが日々向き合っている問題をスマートに解決できるのであれば、少しでも早く、多く取り入れていきたいと思います。新しい技術によって救われる命や自然があるなら、それを拒む必要がどこにあるのでしょうか。常に安全第一を意識するのであれば、自分の身を守れる最新の技術は絶対に手に入れたい。

そして、手に入れた情報は自分だけのモノにするのではなく、どんどん発信をして共有していきたいと思っています。そのために、鍛えておきたい技術があります。それは日々の現場作業に必要な技術以外にも、新しい技術などを敏感にキャッチできる情報収集力や、それを実行に移すための行動力や提案力など……。「スマート化された林業」を体験する機会がなかなかないので、そういった体験ができる場があればぜひ参加してみたいと思います。日々精進です。

それでは、本日もご安全に!!

 

PROFILE

新米林業家

とてお


とある地方の森林組合に務めていて、林業3年生になったばかりの『林業初心者』。
「新米林業家とておの林業ブログ」にて、林業初心者目線で『林業』についての情報発信をしています。

【新米林業家とておの林業ブログはこちら】
【Twitterはこちら】


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