今後は”カーボンオフセット”の時代? 【木質チップ】にJ-クレジットで先行投資を!
2023/01/06
地場産の間伐材を活用する天瀬発電所(大分県日田市)を運営する日本フォレストは、燃料用のチップ製造を含めた全工程のカーボンオフセット化に挑戦している。狙いは次代を見越した新たな環境付加価値の創造だ。
1. 木質バイオマスチップで地産地消の天瀬発電所
● 環境付加価値づくりで燃料チップも差別化の時代へ
● 森山社長に理由を聞いてみた!
2. 山林事業で原木安定供給へ
3. ≫ 【注目】木質チップ工場で薪割りプロセッサーを活用! ≪
木質バイオマスチップを使用!
地産地消の天瀬発電所
九州三大美林のひとつ「日田スギ」の産地として知られる大分県日田市で平成25年、西日本初の再生可能エネルギー固定価格買取制度認定施設として、天瀬発電所は稼働を開始した。
天瀬発電所
隣接する工場で作った年間約7万tの木質バイオマスチップを燃やし、一般家庭約1万世帯分の約5000kWを送電する。
使用する木質チップの原料は、ほぼ全量が発電所の半径約50km圏内から集められたスギなどの間伐材。地域の山林資源の有効活用と水土保全、林業の雇用創出に貢献するとともに、市役所や小中学校、図書館など日田市内の60箇所以上に地産地消の電力を供給している。
隣接する木質チップ工場
環境付加価値づくりで燃料チップも差別化の時代へ!
そんな地域密着型の発電施設で令和3年に始まったのが、木質チップ製造から発電設備の稼働までの全工程に渡るカーボンオフセット化だ。
具体的にはチップ製造で使うグラップルや木材破砕機など重機向けの燃料使用量、発電設備や管理事務所で使われる電力使用量などを毎月もれなく記録。
国が定めるCO2排出係数に基づいて算出したCO2排出量に応じた環境価値証書「J-クレジット」を購入することで、チップ製造から発電までの全工程のカーボンオフセット化を実現させた。
企業や自治体などが行う省エネ設備導入や森林経営による温室効果ガスの排出削減・吸収の取り組みを数値化。国がクレジットとして認証する制度。
創出されたクレジットの売買を通して、温室効果ガス排出削減の推進を目指す。クレジットの購入企業は、温暖化対策推進や環境貢献企業としてのPRに加え、製品やサービスの付加価値向上が期待されている。
日本フォレストでは大分県の別の2工場と熊本工場でも木質チップを年間約7万t製造。福岡県の大型木質バイオマス発電所などに出荷している。それらを含めたグループ6社の全事業所で、J-クレジットによるカーボンオフセット化に取り組んでいるのが特徴だ。
敷地内の広大な土場に山積みされた丸太は、大型の破砕機で均一なサイズにチップ化され、発電用の燃料となる。構内で動く大型重機から発電設備の稼働まで、すべての工程がカーボンオフセット化されている。
森山社長に理由を聞いてみた!
木質バイオマス業界や林業界では、まだなじみが少ないJ-クレジット。その活用に踏み切った理由を森山社長はこう話す。
「木質チップの価値は形状や含水率、異物含有の有無で今は決まっています。でもこれからは製造過程でのCO2排出量ゼロがマストとして求められる時代が必ず来ると考えています。
カーボンオフセットで作られた木質チップの需要を見込んだ先行投資の意味合いもあるし、さらに環境貢献企業としてのPRなど、プライスレスな価値もあると考えています」。
重機や社有車の燃料に加え、発電設備や事務所での電力使用量などを月別に管理。CO2排出量の算定と報告などJ-クレジット導入に伴う事務的負担も少なくない。そして相対取引や入札によるJ-クレジットの購入費用が新たな経常的経費として加わる。
「利益度外視の事業ですので、会社の利益が圧縮されているのは事実ですが、誰かがやらないと変わらない!!」と森山社長。
カーボンオフセットで作られた同社の木質チップも他社製品も見かけは変わらない。「今後はどうやったらもっと分かりやすくアピールできるかを考えたい」と区別化と付加価値向上を課題に挙げる。
山林事業で
原木安定供給へ
九州有数の林業地として知られる日田地方でも林業従事者の高齢化や人材不足が問題となっている。
同社は皆伐後の再造林で課題となる長期に渡る保育作業や苗木の供給不足の解決に向け、令和2年から山林事業を開始。スギコンテナ苗の生産や、約200haの社有林の一部を活用したコウヨウザンやチャンチンモドキといった早生樹の試験植林を進めている。
天瀬発電所の敷地内では、発電に伴う温排水を活用する農業用ハウスを使った苗木生産も計画中だ。
「脱炭素に本気で取り組んでいます。そして地域の活性化と環境にしか興味はありません。一つの発電所を核として、そこから枝葉を伸ばしていくスタイルをこれからも続けていきたい」と森山社長。
カーボンオフセットの取り組みを通して、木質チップ生産と木質バイオマス発電、そして林業の未来形を追求する日本フォレストの取り組みに今後も注目したい。
木質チップ工場で
薪割りプロセッサーを活用!
薪割りプロセッサー KJ500
本社工場に今春導入されたKANEKO重機(群馬県)の「薪割りプロセッサー」。丸太を送るベルトコンベアと玉切り用チェーンソーを備え、薪の大量生産時の効率アップと作業者の負担軽減を実現させた。
環境システム事業部の室井部長は次のように話す。
「キャンプが好きな社員から、『広葉樹材は薪にしなければもったいない』との声が出ました。キャンプブームの中、新たな薪ビジネスも拡大していきたい」。
▼チェンソーでカット!
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▼大量の薪が完成!
価格/498万円(税込)
問い合わせ
[日本フォレストの取り組みについて]
日本フォレスト株式会社
TEL:0973-26-0750
[重機について]
KANEKO重機株式会社
TEL:0274-67-7832
日本全国対応!
製品デモも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください!
文:渕上健太
写真:渕上千央
Sponsored by KANEKO重機株式会社