【低コスト再造林試験】全森連&農林中金の実証実験とは!? 狙いや手応えを聞いてみた
2022/08/19
伐採・搬出と植栽を一体的に行い、下刈り削減などで造林コストの半減や伐期短縮を目指す「低コスト再造林プロジェクト」。5ヶ年計画による実証試験の折り返し点を迎えた同プロジェクトの最新動向に迫る。【前編】
林産班が植栽!
造林班の負担軽減にも貢献
低コスト再造林プロジェクトは全国森林組合連合会と農林中央金庫によって2020年に始められた実証試験。専門家チームの指導・助言を受けつつ、長野県の根羽村森林組合、広島県の三次地方森林組合、宮崎県の都城森林組合の協力のもと、全国3ヶ所の試験地で進められている。
低コスト再造林プロジェクトとは?
持続可能な林業経営の確立を目標に、そのファーストステップとして早生樹種「コウヨウザン」のコンテナ大苗を活用した主伐・再造林の一体作業に取り組むプロジェクト。本プロジェクトは、令和2年度よりスタート、モデル施業地は以下の3ヶ所。
全国3か所:
●長野県〔根羽村森林組合〕
●広島県〔三次地方森林組合〕
●宮崎県〔都城森林組合〕
大きく下記の2点について試験的に施業を行い、新たな販路の開拓も視野に入れつつ、生物多様性や水土保全機能にも配慮した循環型の森林・林業経営のひとつの施業体制を目指すもの。
●コンテナ大苗の利用による伐採と造林の一体作業によるコストの低減
●早生樹の活用や低密度植栽による伐期の短縮(従来の50年から30年に短縮)
一般的な再造林から「低コスト再造林プロジェクト」にした場合の効果
物林株式会社新事業推進部長 大貫肇氏
森林総合研究所林木育種センター 元育種部長近藤禎二氏
国土防災技術株式会社取締役事業本部長 田中賢治氏
有限会社愛美林代表取締役 仲尾浩氏
試験地の面積はそれぞれ1.0〜1.5haで、いずれも主伐適期のスギやヒノキが植えられていた林分。3ヶ所とも伐採や集材、搬出作業と並行しながら林産班が植え付けをしたのが特徴だ。
プロジェクトの進捗管理を担う全森連の淡田和宏組織部長は狙いをこう話す。
「この方法だと重機による集材や搬出の際に、植栽する場所になるべく枝条などの林地残材を残さないようにする意識が働く。重機で枝条などをある程度整理していくことで、地拵えをしなくても植栽できる流れが作られます。実際に3ヶ所のモデル施業地では地拵えをしていません。
また伐採直後は下草や低層木が少ないため、地拵えや下刈りをしなくても植栽しやすい環境を生かせます」。
労務管理上の利点も挙げる。「林産班が植栽をすることで、人員が不足しがちな造林班の負担軽減にもつながります。3ヶ所の試験地では各組合の林産班が専用のドリルやスコップを使って苗木を植えましたが、すぐに作業に慣れ、コンテナ苗のため活着も良好でした」と手応えを語る。
教えてくれた人
全国森林組合連合会 組織部長
淡田和宏さん
取材・文:渕上健太