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使い捨ての割り箸が森林を再生!? 洗えるプラ箸よりSDGsに貢献する理由とは?

環境問題への関心が高まり、プラスチックの削減が進んでいる。一方で、使い捨ての割り箸はもったいないとして、プラスチックの箸に置き換わっている。この矛盾について、森林ジャーナリストの田中淳夫氏が語る連載コラム「希望の林業」。

プラ箸よりも森づくりに貢献する
SDGsな木製割り箸の復権を

地球環境問題への感心が強まっている。そこでよく取り上げられるのがプラスチックの削減だ。

プラスチックと総称されるさまざまな合成樹脂は、主に石油から作られるが、それらは廃棄されて自然界に出ても分解されない。細かく砕けたマイクロプラスチックは、土や水に滞留し、それを鳥獣や魚が食べて回り回って人間の体内まで蓄積される有様だ。焼却しても、二酸化炭素を排出するから気候変動を引き起こす元になると指摘されている。

そこで世界的に進められたのがレジ袋やストローの削減だ。こうした活動は国連が定めたSDGs(持続的な開発目標)の一環でもある。

果たしてストローごときの削減で地球環境を守れるのかという疑問は置いておいて、ならばもっと身近なプラスチック製品にも目を向けてほしい。それは箸だ。

今や飲食店で供される箸の多くがプラスチックの箸になってしまった。業務用のプラ箸は1年程度で交換され廃棄される。このプラ箸の削減をなぜ唱えないのか。

プラ箸が増えたのは、割り箸追放運動のためだ。しかし割り箸が使い捨てだから“もったいない”と言われて、代わりに使用するのがプラ箸というのは、馬鹿げた話である。木製ならば、自然界に置いたら腐って土にもどるし、燃やしても再生可能な木材なのだからカーボンニュートラルなのだ

また材料は、製材した際に出る端材や間伐材のほか、建材にはならない木材である。それを“もったいない”から割り箸にして利益を生む商品に仕立てたのだ。森林破壊どころか、森づくりに貢献している。現在の割り箸の多くは中国産というのは残念だが、材料はシラカバやポプラ、竹などで、いずれも建材には向かず使い道が限られている。ちなみに国産の割り箸はスギやヒノキ、トドマツを原料として主に高級箸が作られている。

我が家では、いつも国産スギの割り箸を使っている。なぜなら抜群に使いやすいからだ。塗り箸だとすべる食材でも簡単につかめて、適度な弾力や木肌の触り心地もよい。それに自宅だと一度で捨てずに洗えば1週間ぐらいは使える。そして林業に貢献している気持ちになれる。

割り箸は、かつて林業の中で重要な位置を占めていた。端材や間伐材が売れるだけでなく、高付加価値商品だからだ。たとえば1立米のスギ材は、製材品なら6万円程度だが、割り箸にすれば20~30万円ぐらいになる。非常に利益率の高い商品なのだ

林業現場では、大径木の丸太を自慢したくなるが、本当は太い木も細い木も、すべてを無駄なく使い切ることに林業の神髄がある。それが1本の木全体の付加価値を上げ、山元への還元を増やすからだ。割り箸だけではない。小箱や皿、スプーンやフォークなど身近な木工品は、使用する人が木材への親しみを醸成する力にもなるだろう。

今ならそこにSDGsに合致するとか、衛生的だからコロナ禍にも寄与すると訴えてもいい。国産割り箸を復権させることが林業再生の一歩にならないだろうか。

 

PROFILE

森林ジャーナリスト

田中淳夫

静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。
森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。

著書

『獣害列島』


860円/2020年10月10日発売/イースト新書刊

獣害は、今や農業被害だけではない。シカやカモシカ、ウサギなどの野生動物は、再造林した苗を食い尽くし、またクマとシカは収穫間近の木々の樹皮を剥いで価値を下落させるなど林業に甚大な被害を出しているのだ。そして森林生態系を破壊し、山村から人を追い出し、都会にまで押し寄せるようになった。なぜ、これほど野生動物が増えたのか、日本の自然はどう変わったのか、この緊急事態に何ができるのか。現場からの声とともに届ける。




FOREST JOURNAL vol.9(2021年秋号)より転載

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