「1本まるごと販売」東京チェンソーズ、未利用のヒノキ葉提供でアロマオイル完成へ
2021/05/12
山の木を余すところなく利用することで「木」そのものの価値向上を目指す東京チェンソーズ。近年取り組んできた「一本まるごと販売」に加え、他業種に未利用素材を提供しリリースとなる「エッセンシャルオイル」について紹介する。
根っこから葉っぱまで
「1本まるごと」を入手し易く
東京・檜原村の林業会社、東京チェンソーズがこの数年注力しているのは「1本まるごと販売」だ。今まで流通していなかった木の根っこから枝、葉先に至るまで、木のあらゆる部分を、まるごと使ってもらおうというものだ。
これまでの木材販売では、木1本のうち全体の50%にあたる「建築材料等として利用できる真っ直ぐで節の少ない幹部分」のみが収穫され、原木市場に並んでいた。原木市場から製材所へ渡った丸太は、製材工程において歩留まり50%が活用される。山林で切られた時点での「木」のうち、実際には全体の25%しか流通していないということになる。
逆に言えば、一般的な建材以外の部位については、仮に望んだとしてもほとんど流通が無く入手し難いものであった。「1本まるごと販売」が始まったことで、自然素材を暮らしに取り入れたい都市部住民にも手が出るようになったと言えるだろう。実際にこれらは家具やおもちゃ、什器として、更には商業施設の装飾・ディスプレイとして利用されている。
「一本丸ごとカタログ」を見ると、スギ・ヒノキ・サワラについて、1本丸ごと15のパーツに分解し、希望の部位を購入できるとのこと。細かく解体された木のイラストは、さながら魚の一匹買いを思わせる。身もあらも楽しめ、味付け、調理も思うままの「1本まるごと販売」。一つとして同じモノのない「木」を利用するための様々な“レシピ”の登場が、今後期待されるところだ。
山に残留していたヒノキの葉が
エッセンシャルオイルの原料に
そんな東京チェンソーズが、檜原村にある社有林にて活用されずにいたヒノキの葉を、アロマの専門ブランド、アットアロマ株式会社へ提供し完成したのが、3月26日に発売になったエッセンシャルオイル「檜原村ヒノキ」だ。
世界 3,000 ヶ所以上のホテルやショップなどで、天然アロマの機能を生かした空間デザインを提供し、アロマ製品の開発も行う香り専門ブランド、アットアロマ。同社のユニークな取り組みとして、2020年に開始した移動式蒸留ラボ「mobile aroma lab(モバイルアロマラボ)」が挙げられる。トラックにオイルの蒸留機を載せ、日本全国の原材料の植物の産地まで赴き、その場で精油の蒸留ができる、移動式蒸留ラボとなっている。
この原材料として、東京チェンソーズはヒノキの枝葉を提供。原料となるヒノキの枝葉は、蒸留前にすべて手作業で刈り取る。時間と手間のかかる作業だ。1回1時間ほどの蒸留で約50kgの枝葉を利用することで抽出できる精油は、わずか100~200ml。3日間で約2リットルが抽出できる。オイルは野性味のあるヒノキの香りがするという。
共通項は「見える化」
品質を徹底し、付加価値を高める
「顔の見える林業がしたい」というコンセプトを掲げ続け、伐り出した木を自分たちの手で加工し町に届ける、ということにこだわる東京チェンソーズ。そして原料製造、流通に至るまで品質とトレーサビリティを高め「見える化」を徹底するアットアロマ。
この「エッセンシャルオイル」商品化は、事業に対する志しやコンセプトにおいて想いを共有できる各事業者が、それぞれの専門性を生かした座組みを実現したプロジェクトとなっていると言えそうだ。
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文:かのうよしこ