森林調査の省力化だけじゃない! スマート林業拡大のカギ、「リモートセンシング」の重要性とは?
2025/03/11

AI技術の進化により、森林資源や境界の「見える化」を実現するリモートセンシングが注目されている。ICT林業による効率化と省力化で、人材不足問題の解決も期待できる。最新技術と導入の課題を詳しく解説。
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林業のスマート化により、
将来の人材確保を後方支援
北米などで先行していた森林リモートセンシングは、AI技術の発達を受けて樹種判別も可能になるなど計測内容、精度ともに年々向上。国内でも大きな広がりを見せている。森林調査の省力化に加え、専用ソフトを使った計測データの解析によって森林資源や林地境界を3D表示などで「見える化」できるため、提案型集約化施業でも欠かせない存在だ。
今回の森林計測特集の第四回目にてお話いただいた、レーザー搭載ドローンの導入などICT林業を進める、山梨県の林業会社天女山の小宮山社長はこう話す。
「作業着手前に施業エリアの材積把握が重要ですが、従来の経験と勘に頼る推計手法では技術継承が難しい問題がありました。ICT林業によって山の在庫把握が容易になり、丸太の販売先となる川下側との交渉も有利になります。結果として森林調査の省力化にもつながっています」(小宮社長)。
近年は、空中写真や衛星写真を点群化やオルソ化し、皆伐や植林、下刈りといった施業の完了検査に活用する取り組みも行われており、自治体、事業体双方の業務省力化が期待されている。企業のCSR活動で注目を集めるJ-クレジットなどの新たな森林価値創出にも、リモートセンシング技術を活用する継続モニタリングで得られる森林資源量データは不可欠だ。
一方、リモートセンシング技術の活用には、計測ツールや解析ソフトの導入などで新たな投資が必要になる。各種補助金を活用しても、林業事業体には少なくない負担になりそうだ。
小宮山社長は「リモートセンシング技術による路網情報や地形情報、立木情報の把握は、林業機械の自動運転化や遠隔化操作にもつながります。ただICT林業の推進には大きな投資が必要となるのも事実。まずはゴールを設定してから取り組むべきで、地域で活用できない技術を入れる必要はないと思います」と指摘する。
さらに、本特集の1回目で航空レーザ測量システム(ALMAPS)を取り上げた朝日航洋の和田さんはこう話す。
「ドローンやQGISといったICTツールに憧れ、かっこいいと感じながら使いこなす若手林業者も少なくない」(朝日航洋の和田さん)。
リモートセンシング技術をはじめとするスマート林業が新たな人材確保につながる可能性も期待される中、今後の技術動向に引き続き注目したい。
文:渕上健太
FOREST JOURNAL vol.22(2024年冬号)より転載