SAKUWOOD認証国産木材を世界に通用する楽器に! 木材のトレーサビリティが拓く林業界の未来
2021/11/09
近年、国産材の活用が進められている。世界初のトレーサビリティシステムの開発をきっかけに発足した「SAKUWOOD認証協議会」が、世界に通用する高級木材楽器をつくりあげた。注目のプロジェクトをリポート!
メイン画像:「アカギウクレレ」
SAKUWOOD認証協議会とは?
2011年、「SAKUWOOD認証協議会」は創造再生研究所の小見山將昭氏によって発足された民間の木材認証機関。
森林生態系と国産木材利用促進の文化を検証し、実践、次世代に引き継ぐ、新しい製品を研究開発していくこと目的に設立された協議会である。木材のトレーサビリティ認証も行っており、「伐採期」「乾燥方法」「気取り」「造材」などが証明書として発行される。
天竜杉エレキ
「Moon Revolution」
●製造職人:MATSUIギター工房/松井 正博氏
●機種名:Sakuwood MR(Moon Revolution)シリーズ
天竜水窪杉でボディ・ネック・ヘッド・ピックガード(ラミネート加工)を作り、ボディセンター材は北海道の栓(ハリギリ)を配した高級ギター。アンプに通さなくても深い木鳴りがし、世界の名器にはない新しいサウンドを創った。天竜ヒノキの機種も誕生。
ジャンベ
●製造職人:KIMURANOKI /木村 優氏
小笠原アカギの大木の丸太を現地職人により彫り出しで作られた。皮は動物由来だが島のヤギは規制があり使用できないので輸入された。低音域はアタックが強い鳴りで、中高音域が硬質ながら暖かい深みがある逸品。現在、赤間慎氏(ドラマー、パーカショニスト)がステージ・レコーディングでモニター使用している。
アカギギター
「バレリーナ」
●製造職人:青木ギター工房/青木 保之氏
●機種名:Sakuwood Ballerina
2017年母島産アカギの赤身で表板と裏板、2017年父島産アカギの白身で側板・ネック・ヘッドが製造された。木材の割れやねじれと戦う事2年余に及び、完成まで試行錯誤を繰り返した。しかしこの経験が伐採・造材・乾燥・木取りのマネージメント構築に役立つ。クラシックギタータイプだが、一音一音がクリアでアカギ独特の中高音域のアタックが強く深みのある音が奏でられる。
アカギウクレレ
●2018年初号機の制作:FINEWOOD
●2020年~制作:ブルーストリングス/竹下 泰弘氏
●機種名:Bluestrings SAKUWOOD Special
初号器はボディのみアカギで制作されアカギ特有の高音質がきらびやかな逸品が出来る。その後竹下氏の手により全部位アカギの高級ウクレレ完成に行き着き、森に響く水滴音のような音色はいつまでも弾いていたくなる名器である。
紹介してくれた人
一般社団法人創造再生研究所
SAKUWOOD認証協議会(自然乾燥、トレーサビリティ木材民間認証)
SAKUWOODブランド 代表
小見山將昭氏
山野楽器やヤマハを経て、音楽プロデューサーとして活動してきた経験から、楽器に使用されている木材に着目。
アカギのリコーダーが
間もなく完成!
ZEN-ON楽器事業部長
大沼宏之氏
ZEN-ON楽器事業部/仕入・生産管理部係長
河村秀教氏
現在ZEN-ONでは、アカギを用いたリコーダー製作を進めている。
「リコーダーで用いる木材は、黒檀や白檀など東南アジア産の堅い銘木が多く、木材の供給と品質の安定は事業継続には欠かせません。しかし、輸入木材商社を通しての調達には、出自が疑わしいものもあります。2016年のワシントン条約によって、楽器業界は代替材への切り替え検討などで混乱を極めましたが、結果的に『真贋の疑いのない木材で製造された楽器が最終顧客(演奏者)の手に渡る』という本来あるべき姿を創造しました。
今回のSAKUWOODのプロジェクトは、地球の生態系保全はもちろん、木材産業、楽器産業、楽器を演奏する人々の音楽文化をも含む文明社会に寄与するものと確信しています」
文:小見山將昭
FOREST JOURNAL vol.9(2021年秋号)より転載