森林×サバゲー! フォレストーリーが立ち上げた新しいビジネスに迫る
2021/05/24
「山林で行うサバイバルゲーム事業」というこれまでにないアイデアで森林の活性化に挑むのが株式会社フォレストーリーだ。同社を立ち上げた渡部真之助さん、蛭間祐介さん、勝泉貴さんにお話を伺った。
林業×サバゲーで
日本の森を活性化したい
同社の立ち上げのきっかけとなったのは2020年に開催された林業に特化したアクセラレータープログラム「SUSTAINABLE FOREST ACTION 2020(以下、SFA)」だ。3人がチームを組んだのは「本当にたまたま。事務局のおかげですね」と笑って話す代表の渡部さん。
意外にも「サバゲー」というアイデアは3人のなかから生まれたものではないという。
「Webでのアンケート調査を通じて、森林でどんなアクティビティーをしたいか探ったところ、最も多かったのがサバゲーという答えだったんです」。
そこからメンターの支援も受けながら、連日のZoom会議で3人は短時間でアイデアをブラッシュアップ。サバゲーの参加費の一部を森林保全に活用することを前提とした「山林で行うサバイバルゲーム事業」として、11月のデモデイで見事に優勝を果たした。
2021年2月には、第一回のサバイバルゲームを開催。舞台となったのは北関東でも屈指の平野林である栃木県壬生町の原野林だ。
県内外からサバゲー好きの参加者が集った。
「スピーディに開催できたのは、森林を管理していた嘉陽が丘里山の会や、壬生町役場のみなさんの協力のおかげ」と勝さん。
壬生町の「寿司割烹かさま」が手がける地元食材を使った特製弁当。
同社はサバゲーを実施するだけではなく、山林の管理コンサルタントも併せて請け負う。
「倒木の危険性の高い樹木から処理しつつ、そこで出た枝条などはサバゲーの遮蔽物としても活用しました」と蛭間さん。
使用するBB弾はもちろん生分解性。電動ガンでは樹木が傷つかないことも実証済み。
そして迎えた開催当日。栃木県内外から約30人の参加者が集まり、日暮れまでサバゲーを楽しんだ。参加者からは「シンプルなフィールドならではの魅力」「遊ぶだけでなく森林保全にも貢献できること」などを評価する声が挙がっていた。
同社の目標は「日本全国で同様のサバイバルゲームを展開すること」。フォレストーリーの3人が紡いでいく森林活性化のストーリーから、今後も目が離せない。
フォレストーリーのヒストリー
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- ●2020年8月
SFA 2020キックオフ
- ●2020年8月
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- ●2020年11月
壬生町での交渉をスタート
- ●2020年11月
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- ●2020年11月
SFA 2020デモデイ優勝
- ●2020年11月
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- ●2021年2月
第一回原野林サバゲー開催
- ●2021年2月
SFA 2020デモデイで優勝した際の様子。一番右は、メンターの株式会社tsam代表取締役 池森裕毅氏。
フォレストーリーの
イベントを成功させるためのヒント
個性の異なる3人のチーム力
木材加工から素材生産までの幅広い経験を持つ代表の渡部さん。一般企業に務め、ビジネスマンとしての調整能力に長けた勝さん、森林組合の作業員として林業の豊富な経験を持つ蛭間さん。それぞれの個性を生かすことで、フォレストーリーというチームが生まれた。
「ビジネス」であること強く意識
自らの興味関心ではなく、アンケート調査によって導き出された「サバゲー」というアイデア。ビジネスとして事業を成功させるには、森林活性化への情熱だけでなく、市場調査に基づく合理的な判断が欠かせない
キーパーソンを巻き込んで地域と連携
3人が壬生町にはじめて訪れたのは2020年の11月。そこから短期間で地域との合意を形成できたのは、「キーパーソンに対して、積極的に自分たちのアイデアを提案していく」巻き込み力があったからだ。
サバゲーというビジネスアイデアで、森の新たな活用法を共創した!
DATA
株式会社フォレストーリー
栃木県宇都宮市中央3-1-4 栃木県産業会館3階宇都宮ベンチャーズ内
写真:都築大輔
文:福地敦
FOREST JOURNAL vol.7(2021年春号)より転載