持続的な森づくりを新規事業で実現 「SUSTAINABLE FOREST ACTION 2020」受賞チーム決定
2020/12/29
2020年11月1日、株式会社Speroが実施する「SUSTAINABLE FOREST ACTION 2020」のデモデイが開催された。参加全11チームがプレゼンテーションを行い、受賞2チームが決定した。
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「サバイバルゲーム」と
「施業マッチング」で
森づくりの課題を解決
「SUSTAINABLE FOREST ACTION 2020」は、持続的な造林・林業の実現に資する事業を創出するためのアクセラレータープログラムだ。参加したのは林業従事者16名と、異分野の事業開発経験者11名。
事務局が参加者の経歴やキャラクターを踏まえた上で11のチームを結成し、各チームにメンターをつけ、8月23日のキックオフから約2ヶ月間で、課題の再定義からアイデアの創出、事業化までを目指した。
11月1日には永田町会場とオンラインで成果発表の場となるデモデイを開催。勝ち抜き戦形式の予選ピッチを経て、上位5チームがさらに詳細な事業計画のプレゼンテーションを行った結果、「山林で行うサバイバルゲーム事業」「施業してほしい山林所有者と施業したい事業体をつなぐサービス」の2チームが優秀賞を受賞し、200万円の事業化資金を獲得した。
「山林で行うサバイバルゲーム事業」チームが提案したのは、伐採予定の私有林を山主から借り受け、サバイバルゲームのフィールドとして活用する事業。フィールド使用料の一部は山主だけでなく、造林サポート基金として市町村にも還元し、持続的な森づくりに寄与する狙いだ。
さらにサバイバルゲームツアーなどを開催することで、これまで山林に関心のなかった層の興味関心を醸成するとともに、町おこしにもつなげていきたいという。
優秀賞受賞チーム「山林で行うサバイバルゲーム事業」(左から、某林業会社 渡部 真之助氏、渋川広域森林組合 造林班班長 蛭間 祐介氏、本田技研工業株式会社 勝 泉貴氏、メンターの株式会社tsam 代表取締役 池森 裕毅氏)
「施業してほしい山林所有者と施業したい事業体をつなぐサービス」チームが提案するのは、山林所有者と林業事業体のマッチングサービス。山林所有者に利益を還元できる事業体を増やすために、事業者側の生産性向上などの支援にも取り組むという。
利益還元率の高い事業体が増加すれば、山林所有者は幅広い選択肢のなかから施業を依頼する事業体を選べるようになる。そうした好循環で林業界全体の質の向上と底上げを目指す事業だ。
優秀賞受賞チーム「施業してほしい山林所有者と施業したい事業体をつなぐサービス」(ソマノベース 代表 奥川 季花氏)
林業界には優れた人材が
まだまだ眠っている
事務局を務めた株式会社Speroの高橋代表は、上記の2チームが受賞に至った理由を「圧倒的な行動力と柔軟性」にあると評価する。
「2チームとも2ヶ月間と短い期間ながら、ユーザーへのヒアリングやアンケートを通じて課題を徹底的に洗い直し、それに基づいて事業案を柔軟に変化させていく点が印象的でした。事業案の完成度もさることながら、起業家に求められる行動力と柔軟性を示し、“この人たちなら必ず事業化を成し遂げてくれるはずだ”と信じさせてくれたことが、受賞へとつながったのだと感じています」
「山林で行うサバイバルゲーム事業」チームは「株式会社フォレストーリー」としてすでに株式会社化を達成。「施業してほしい山林所有者と施業したい事業体をつなぐサービス」も株式会社化を視野に入れながら、資金調達に取り組んでいる。また受賞チーム以外にも複数のチームが事業化を目指して取り組みを続けていくという。
「林業界にはこんなにも優秀な人材が眠っていたのかと手応えを感じた2ヶ月間でした。彼らはきっと林業という枠を超えてビジネスとして事業を成功させ、それによって改めて林業界を活性化してくれるはずです」と高橋代表は期待をにじませる。
株式会社Speroでは来年、「SUSTAINABLE FOREST ACTION 2021」の実施も計画しているという。フォレストジャーナルでも引き続き同社の取り組み、同プログラムから巣立っていった林業起業家たちの姿を追っていきたい。
DATA
SUSTAINABLE FOREST ACTION 2020
株式会社Spero
取材・文:松田敦