“ウッドデザイン賞2019”が決定! 中高層木造ハイブリット建築が最優秀賞に!
2020/01/16
林野庁は、今回5回目となる「ウッドデザイン賞2019」の全413点の応募作品から29点の優秀作品を発表した。最優秀賞(農林水産大臣賞)、優秀賞(林野庁長官賞)に輝いた作品を紹介しよう。
最優秀賞は中高層木造ハイブリット
建築を実現する技術の実証
日本初となる中高層木造ハイブリット建築を実現する技術の実証
今年度最優秀賞に輝いたのは三菱地所の「日本初となる中高層木造ハイブリット建築を実現する技術の実証」。竹中工務店、山佐木材株式会社、田島山業株式会社での4社共同事業だ。鉄筋架構を木材化した国内初の高層10階建ての集合住宅で、住まい手の安全性、利便性の技術検証を行う。木造建築物で注目したいのはそのコスト。工期が短縮されるためコストの圧縮も実現している。今まで耐火性の問題から4階建て以上の建築物は建てることを避けられてきた木造建築であるが、今後、木材建築物の高層化が実現し、安全性も鉄筋コンクリートと同様の実証結果が得られれば、木材を使った非住宅分野にも活用されることが期待される。
優秀賞は脱プラストローや
屋久島町庁舎など9点が選出
木製ストロー「AQULAS」写真:ウッドデザイン賞運営事務局PRESS RELEASEより引用
ライフデザイン部門受賞のなかでも、株式会社アキュラホーム(東京)が発表した国産間伐材を用いた木製ストロー「AQULAS」は特に注目したい。国際的な脱プラスチックの流れを受けて開発された製品で、安定的な供給とコスト面をクリアできれば一気に普及しそうなアイテムだ。
樹木の糸 写真:ウッドデザイン賞運営事務局PRESS RELEASEより引用
これまで廃棄物として扱われていた木材チップを微粒子化し、線維として紡ぐことでファブリック製品化する「樹木の糸」。廃材を極力使い切る観点と、脱プラスティック(石油製品)という視点で見る興味深い試み。木材チップを微粒子化して繊維にしてしまう発想は他にない視点だ。
スマート倉庫 写真:ウッドデザイン賞運営事務局PRESS RELEASEより引用
三井ホームコンポーネント株式会社が発表した「スマート倉庫」はこれまで鉄筋造りのイメージが強かった物流倉庫の木材化に取り組んでいる。鉄筋に比べ工期のコスト低減を図ることができ、物流倉庫=冷たいというイメージに一石を投じる点が評価された。
未来に贈る家
ハートフルデザイン部門では、主に子供に向けた木工建築が評価されている。「未来に贈る家(北海道)」は北海道産のトド松を活用したローテク構法を採用した木造住宅として受賞。ライフイベントに応じてフレキシブルな空間構成ができる家を北海道や静岡、東京などで展開している。
こどものけんちくがっこう
学校現場では体験できない建築について学ぶプログラムを展開した「こどものけんちくがっこう」は家づくりの川上から川下までを学ぶ本格的なプログラム。住み続けることと地域資源を活かしたまちづくりの提案、重要性を訴えることで受賞した。
ぷれぱらウッド
「ぷれぱらウッド」は、病院で子どもに検査の説明をする際に使う検査機器を木工玩具化した。温かみのある木材で作られたCTやMRIといった医療機器のミニチュアで、心理的な不安を払拭する事に一役買っている点が評価された。
屋久島杉を使った町庁舎
ソーシャルデザイン部門では屋久島の町庁舎が受賞。地元屋久杉の杉材ブランド化ヘ向けた取組と、利用する町民や職員も木質感を味わえる美しいデザインが高く評価された。
地域移住体験のための施設設計
海陽ハウスビレッジ(徳島)が受賞した「地域移住体験のための施設設計」は、ロケーションも含め地元材が使われ、地域の魅力を伝えるのに十分な役割が見込まれる点に高い評価がなされた。地域振興の新しいカタチと言える取組がとても素晴らしい。
国産杉材に低温乾燥による付加価値向上プロジェクト
「国産杉材に低温乾燥による付加価値向上プロジェクト」は、市町村を超えて森林組合、製材・木材メーカー、住宅メーカーが共同で補完したプロジェクト。川上から川下へ向けた個々の強みを生かした価値戦略、社会提案性が高い評価を得た。
木の活用は大企業から
NPOまで幅広く根付いてきた
最優秀賞、優秀賞の他に、ウッドデザイン賞(入選)として197点が選出されている。5年目を迎えたグッドデザイン賞だが、回を追うたびに参加企業や団体が増え、日本の木材利用の機運が徐々に高まってきていると感じられる。
ウッドデザイン賞2019審査委員長を務めた赤池学氏は、昨年よりも全体の作品のクオリティーが格段に向上して、建築分野だけでなくファブリックな分野(日用品や文具など)に木材が活用されていることに林業の形態変化を感じているとコメントしている。
今回の受賞作を見ると、国内林業業者に再び注目が集まっていることが伺える。林業自治体と中小事業者のジョイント、おしゃれでエコな木の使い方や売り方を含めた独自産業化が全国に根付いてきた。来年はどのような作品が受賞するのか今から楽しみだ。
DATA
Text:岩田武