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剣道場には専用の床を! 無垢フローリング専門店が開発

日本で人気の高いスポーツ・剣道。しかし、ウレタン塗装で仕上げた体育館の床は滑りが悪く、ケガをする危険性もあるという。そこで、剣道に相応しい「本物の床」を目標に、現代と古くからある技術を組み合わせ、踏み心地の良い床が完成した。赤堀楠雄連載コラム「令和の林業最前線」。

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体育館の床は剣道には向かない

本物の床で剣道をしよう――。そう呼びかけているのは、東京・新木場で無垢フローリング専門店「木魂(こだま)」を運営する株式会社五感の前田英樹社長だ。国産のスギ材を利用した剣道場専用の床材を独自に開発。「剣道場床建築工房」との看板を掲げて材工込みでの販売を行っている。
 
国内の有段者数が180万人を超え(日本剣道連盟調べ)、老若男女を問わずに愛好者が多い剣道だが、競技施設は必ずしも充実しているわけではなく、剣道には向かない床で稽古や試合が行われていることが多いという。
 
「ウレタン塗装で仕上げた体育館の床は滑りが悪く、足の裏を火傷したりアキレス腱を切ったりとケガの恐れが高まります。剣道はすり足が基本ですから、体育館の床は向きません」。
 
自身も剣道の有段者(四段)である前田社長はそう説明する。
 

上小節以上の優良材を使用

前田社長が調べたところ、古くからある剣道場ではスギやヒノキ、マツといった針葉樹材にカンナがけしただけの板が床に使われていたことがわかった。実際に稽古をしてみると、足がとても楽で踏み心地も良い。自社の製品も、その感触を再現することが基本的な商品コンセプトとなっている。
 
材料のスギ材は80年生以上の原木から製材した幅150mm、厚さ30mmの板材。材面は上小節以上とし、赤身が70%以上を占めることも基準とした。含水率は18%以下。表面は無塗装で、カンナがけと同等の仕上がりとなる超仕上げを施している。
 
下地は独自開発したゴムクッションを基礎コンクリートに置き、その上にヒノキ90mm角の大引を載せた仕様。大引にスギ板を専用ビスで打ち付け、ビスの頭を床材と同じスギ製の込み栓で塞いで仕上げる。板材の端が薄くなる実加工は施さず、体重の10倍もの衝撃が加わることもあるという打突時の踏み込みにも耐えられるようにした。
 


前田英樹社長。自身も剣道の有段者として、剣道にはどんな床が向くかについて強いこだわりがある。

 


新木場のショールームで体験可能

「材料のスギ材は、品質に信頼を置ける製材工場で製造してもらったものを仕入れています。上小節以上の役物を有効利用すれば林業にも貢献できます。剣道場の床づくりを通じて、国産材の良さをアピールしていきたい」と前田社長は語る。
 
コスト的には、一般的な体育館の床よりも安価に提供できるとのこと。今年7月には、自社が入るビル内に国産材無垢フローリングのショールームをオープン。その床を剣道場専用の床板で仕上げ、感触を体験してもらえるようにした。
 
前田社長によると、古い剣道場では踏み込んだ時の音がよく響くように、床下に甕が並べられていたこともあったという。その伝統に倣って開発した床板は、各地の道場で採用例を増やし、「足に負担がかからない」「響きが良い」等々とユーザーから好評を得ているとか。
 
「こんな感じです」と堂々たる体躯の前田社長が自社のショールームで踏み込みを実演してみせると、「ドンッ」と重量感のある音が響き渡った。
 
自分が通う教室や道場にも――と思う方は足を運んで体感してみてはいかがだろうか。


今年7月にオープンしたショールームの床に剣道場専用の 床板を施工。実際に感触を体験してもらえるようにした。 壁には国産材無垢フローリングをパネルにして展示している。

 

PROFILE

林業ライター

赤堀楠雄


1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。

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