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リアルな体験ができる林業機械シミュレータを開発! 仮想空間に広がる林業の未来

林業就業支援に向けてこれまでにない林業機械シミュレータの製作が進んでいる。リアルな空間内で作業工程が理解でき、しかもエンターテインメント性も抜群。林業の未来を変えるかもしれないマシンを紹介する。

<目次>
1.仮想空間内に再現された『VIRTUAL SHIZUOKA』
2.写真で見るゲームの流れ

 

仮想空間内に再現された
『VIRTUAL SHIZUOKA』

これまでにない林業機械シミュレータが完成する。静岡県と朝日航洋、そしてバンダイナムコアミューズメントは、3次元点群データを活用したハーベスタシミュレータのプロトタイプを制作中だ。

2019年頃から静岡県は県内全域をスキャンし、3次元点群データによって仮想空間内に『VIRTUAL SHIZUOKA』を構築。森林リモートセンシングや森林情報化に強い朝日航洋からは静岡県内の森林地域における3次元点群データの提供を受けていた。

『VIRTUAL SHIZUOKA』データのさらなる活用・展開を静岡県が模索している時、朝日航洋から興味深い情報を得る。バンダイナムコアミューズメントのアーケードゲームと「ハーベスタシミュレータと操作が似ている」というものだ。

「林業就業支援に役立つ」として静岡県デジタル戦略局はアーケードゲームと『VIRTUAL SHIZUOKA』のコラボレーションを朝日航洋から持ちかけられ、2022年6月にはバンダイナムコアミューズメントとの接点も生まれた。そして2023年4月に実施された静岡県と朝日航洋、そしてバンダイナムコアミューズメントによる3者協議から約1年の月日をかけて「アミューズメント機による3次元点群データを用いた林業機械シミュレータ」を予算化し、体験ゲームを開発(事業所管部門は林業振興課)。2025年3月にはプロトタイプによる体験会実施に漕ぎつけた。

ゲームの主な流れは、
①ハーベスタでヒノキの立木の近くまで移動
②木を掴んで伐倒
③枝を落として玉切り

の3工程。

林業を魅力ある職業として選んでもらうため、作業工程が容易に理解できるよう配慮しつつ、エンターテインメント性も重視した仕上がりになっている。シミュレータとしての機能と体験ゲームも見事に両立。3画面の視界と装飾された筐体による空間性とレバーなどの操作特性がロボットを操縦しているような感覚を演出する。

そして『VIRTUAL SHIZUOKA』の持つ県内全域の3Dデータがリアリティーを倍増させる。

今回のシミュレータでは富士山の麓にある富士宮市のヒノキ林の地形を採用している。こうしたシミュレータでよく見られる平面的なフィールド設定ではなく、起伏のある環境で体験できる。

「開発中のシミュレータは感覚的にハーベスタによる伐採の仕方を理解できるため、林業のことを知らない方に対して興味をもってもらうきっかけとなってもらえれば。来年度以降も林業就業相談会での活用などに取り組んでいきたい」と林業振興課は手応えを語る。

また、静岡理工科大学グループが体験会の実施に協力し、シミュレータ内の音声を静岡放送のアナウンサーが担っているのは、地方創生という観点からも興味深いと言える。

今後は、プロトタイプのゲーム性を高めつつ、開発を進めてよりリアル、そして林業のカッコ良さを実感できるシミュレータを目指していく。

 

写真で見るゲームの流れ

①木に接近

②木の根本にハーベスタを近づける

③気を切って倒す

④枝を落として玉切り

 

問い合わせ

静岡県経済産業部 森林・林業局 林業振興課
TEL:054-221-3618

朝日航洋株式会社
TEL:049-244-7766


文:井上直孝
写真提供:朝日航洋

FOREST JOURNAL vol.23(2025年春号)より転載

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