「切れ味」を手軽に復活! 全国対応の「ソーチェーン目立てサービス」が始動
2024/05/31
林業従事者の必須スキルであるソーチェーンの目立て。今は難なくできるベテランでも、駆け出しの数年間はチェーンを無駄に交換してしまったり、目立てにも必ず悩みがあったはずだ。そんな中、手軽に切れ味を蘇らせてくれる目立てサービスが始まった。
きっかけは「モヤモヤ感」
「目立て専門」というユニークなサービスを始動させたのは、世界的なソーチェーンメーカーでの勤務経験がある野宮さん。メーカー勤務時代はチェーンを始めとした製品の魅力と正しい情報の普及に尽力し、現在はメーカーの垣根を超えた「ソーチェーンのスペシャリスト」だ。
そんな野宮さんが今春立ち上げたのが全国のチェンソーユーザーから目立てを受け付けるサービス。その名も「ソーチェーンサービスジャパン」(SSJ)だ。
きっかけはメーカー勤務時代、全国の販売店を訪問する中で感じた「モヤモヤ感」だったという。
「土木や造園関係の方などがソーチェーンを10本単位で買っていく光景を目にしていました。きちんと研げないので使い捨て感覚であったり、まだ使えるのに捨ててしまったりと無駄にしているのです。林業の方は基本的にご自身で研がれていますが、それでも自身の目立てに疑心暗鬼になっている人も少なくありません。
一方、人手不足や採算が合わないなどの理由で、全てのチェンソー販売店で目立てのサービスをしているわけではありませんし、むしろ頭数は減ってきているのが現状です。
研いで使って初めて分かるチェーンの違いや変化の楽しさを知ってもらいたい……。そしてより多くの人たちの役に立ちたい!それが目立てサービスをはじめたきっかけでした」。
オンラインで申し込み
1週間で返送!
目立ての申し込みはSSJのサイト上にある申し込みフォームやLINEなどから、年中無休で受け付けている。朝が早く、作業後も翌日の準備に時間が追われがちな現場担当には、発送方法の柔軟性もあって助かるサービスだ。基本料金はピッチやゲージを問わず、【切断長が6~42インチ(15cm~106cm)】の場合、1本一律1,000円(税別)だ。切断長が、42インチ以上の場合は本数での見積もりとなる。また竹切(フルカッター)、根切(超硬、カーバイド)、ハーベスターの場合、一律1,500円である。
さらに、目立て料金とは別に、SSJ事務所(千葉県)との往復送料や振込手数料が掛かるため、スマートレターやレターパックなどを利用して本数をまとめて申し込むのがお得になる。
SSJはソーチェーンが送られてくると、まずはユーザーの安全を第一に考え、継続使用できる状態かを目視検品、その後チェーンを洗浄、熱対策工程を経て最新の機械を使って研ぎ上げる。研いでもチェーンが破断する可能性が高いと判断した場合は、たとえユーザーの強い希望でも目立てを行わない。目立ては必要であればデプスも共に調整して切れ味を蘇らせる。基本的に1週間以内に返送するという。
「ソーチェーンごとの微妙な設計の違いによる、目立て最中の目視や触感、一時的な使用中の感触に惑わされることなく、最新の機械によるSSJ独自の一定の角度と数値、左右で極力同じになるように目立てを行います」と野宮さん。
野宮さん曰く、ソーチェーンの全体の形状や加工は、カタログ上や実物の目視では大差ないように見えるが、実際はメーカーごとに特色があるとのこと
コマ数が多いハーベスタ用はもちろん、石や針金、釘に当たってしまったチェーンでも「そのチェーン全体の寿命があれば目立てをします」という頼もしい存在だ。
刃の状態や研ぎ方のクセなど、目立てを通して見えてくる「スペシャリスト」ならではのフィードバックも、作業後の返送完了連絡のメールに含まれる。
カッターの寿命と目立て(30-60-0, .025)、切り屑のサンプル画像
「切れる研ぎ方」を
身に付ける一歩へ
SSJは目立てを始めとするソーチェーンに関する知識と技術向上に向け、オンラインや出張講座も受け付けている。理由について野宮さんは「『ソーチェーンの目立ては奥が深い』とよく言われますが、そうではなく、実際はソーチェーンについて知らされていないことが多いだけなのです。それを多くの人に知ってもらいたい」と話す。
「自分で研ぐ。上手くいかない。サービスに出して切れる刃を作る。また手研ぎを試す。気付くことがある。このように自分の目立てと、機械による一定の角度、数値、左右の仕上がりを比較することで分かることもあります。SSJのサービス利用から『卒業』もOKですし、むしろ1人でも多くの人に『手研ぎの自在な目立て』を目指してもらいたいと考えています。1人で悩むよりは『チェーンに詳しい親戚のおじさん』感覚で、SNSのDMでも気軽に尋ねて欲しいです。」
野宮さんはこうも警鐘する。
「SSJ自身、機械で目立てを行いますが、世の中に完璧な機械はありません。手研ぎと一緒で、機械でもうまく研げるかどうかは技量に大きく左右されます。このため、『機械目立て』を行っていても使いこなせていないケースも少なくありません。SSJは機械の強みを最大限に引き出し、時間や地域に縛られずに手軽に利用できる目立てサービスを展開していきます」。
SSJが使用しているMARKUSSON製の最新オートグラインダー
チェンソーを販売する専門店からの外注相談や、災害現場でチェンソーを扱う各地の災害関連機関などからの依頼も大歓迎という。「ゆくゆくは目立て治具の1つのように、『目立て』の方法の1つとして認識される、そんな受け皿を目指したいですし、仲間内や講習会の場で紹介して頂ける立場になりたい」と野宮さん。
ソーチェーンに関する専門知識をSNSなどで余すところなく公開し、業界全体での目立てスキル向上を後押しするSSJ。林業界の縁の下の力持ち的な存在と言えそうだ。
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取材・文/渕上健太