《高視認性安全服》って知ってる? 林業界注目の“Hi-Vis(ハイビズ)”の選び方!
2023/03/27
「Hi-Vis」とは、自然界にほぼ存在しないとされる蛍光色や反射材などを使用し、目立つことを目的としたワークウエア。戦隊ヒーローを思わせるド派手なカラーで人々の安全を守るアイテムが、注目を浴びている。
国内林業への本格導入は5年前。
ハイビズウエア選びのコツとは?
高視認性安全服、ハイビズとは、道路工事などの現場ではおなじみの蛍光色素材と反射材を組み合わせたワークウエアのこと。日中は蛍光色によって、夕暮れから夜間には反射材によって車両の運転者などが作業者の存在を早期に視認することが可能になる。
「もともとヨーロッパが発祥で、日本では2015年に路上作業者の安全服として規定され、まず高速道路管理に導入されました。高速で走行する自動車と生身の人間が近接する危険な作業環境の中で、ハイビズの着用が作業者の安全性を高めます」と話すのは、10年前からいち早く国内林業の現場にハイビズの必要性を唱えてきた東京大学大学院・特任研究員の松村哲也さんだ。
「林業の現場も、走行速度は遅いですが大型重機と生身の作業者が近接する危険な環境です。そして足場の悪い山中で樹木という重量物と強力な刃物を扱う仕事であり、他産業より死傷事故が多い状態が続いています。私は目立つ色で機械と作業者互いの存在認識を容易にする、すなわち色彩によって林業の安全性を高める研究に取り組んでいます」。
道路や鉄道工事などの土建業と同様の積極的な安全対策が理想といえるが、現状の林業の収益から考えると安全面に関する投資が消極的になりがちだ。こうした状況の中で、導入時のコストが安く、なおかつ効果が期待できるのがハイビズの存在だ。
松村さんが研究を始めた10年前は、林業の作業服の定番カラーは、汚れが目立たない黒・紺や茶・小豆色だった。
「当初はハイビズの派手な色や形状に、恥ずかしくてコンビニに寄れないとの声もありましたが、次第にカラフルなヨーロッパ製防護服の普及が進み、さらに着用義務化と林業学校などでの導入が裾野を広げ、戦隊ヒーローのような姿への抵抗感が劇的に減りました。むしろ、かっこいいと言われる時代に変わってきました」。
ハイビズの一番のメリットは、瞬間的に人の存在が認識できること。「最近では1チーム1、2人といった少人数での作業が増えています。事故が発生した場合、大人数チーム制の頃よりも救難者発見に時間がかかる懸念があります。そこで森の中でも一目瞭然のハイビズ着用で迅速なレスキューが可能になります」。
ハイビズには、国際規格に準じたプロ用のものから子供用まで多様な製品があり、価格もデザインも豊富に出回っている。
「規格への適合だけでなく、作業場でいかに目立つかを考えてウェアを選んで欲しいですね。なるべく現場の環境に存在しない、もしくは多い色の反対色を選ぶのがポイント。比較的どんな環境でも対応できる3色以上のものや無彩色との併用もおすすめです」。
ハイビズはこんな服!
フォレストライトジャケット/ファナージャパン
伸縮性のある反射ストライプで視認性も抜群!
ダブルAIRワーキングジャケット/SIP Protection®(田島山業)
高視認性カラーと高機能素材使用であらゆる状況に対応!
FS-1110 ブレイブレイン/船橋
レインウエアで初のJSAA高視認安全服認定!
Hi-Visの安全規格って?
視認性安全服に関する国際規格「EN ISO20471(旧 EN471)」「EN 17353(旧 EN1150)」は、危険回避の先進国ヨーロッパで定められた工業規格で、2015年には日本でもEN ISO20471を基にJIS規格化された「JIS T8127」や「JSAA2001」が制定されている。
働く環境の危険度に応じて、低度、中度、高度の1~3のリスクレベルが定められている。リスクが高い業務を想定したクラス3は、蛍光素材・反射材の使用面積が最も大きい。
PROFILE
東京大学大学院
農学生命科学研究科 特任研究員
松村哲也さん
信州大学農学部森林学科卒業後、同大学大学院などで高性能林業機械の効果的運用法を研究。10年前から林業における高視認性の研究に携わるほか、機械メーカーなどの企業との研究開発事案に従事。非常勤講師を務める長野県林業大学校ではチェーンソー技術の指導とJLC競技への参加支援を行う。
取材・文:後藤あや子
FOREST JOURNAL vol.15(2023年春号)より転載