日本の悪路に強い! 今後の林業に欠かせないコンラート社タワーヤーダーが国内初上陸
2021/09/17
オーストリアを代表する林業機械メーカー・コンラート社が日本向けに開発した自走式クローラー式KMR4000U。国内第1号ユーザーの川井木材(本社:高知県本山町)を取材した。
自走式クローラー型タワーヤーダー「KMR4000U」。タワー地上高は約11m、荷揚げ能力最大4t。
新進気鋭の林業家が選ぶ
自走式タワーヤーダー
森林王国・高知県の北側に位置する嶺北地域は、県内でも有数の木材の名産地。その土地で1965年に創業したのが川井木材。
今は3代目にあたる川井博貴氏が20~60代の総勢14名の社員を率いる。父で2代目の川井喜久博氏の亡き後、2016年の30歳で代表取締役に就任、2018年より原木や丸太配送の運送部門を設け、林産と運送の2本柱で事業を展開している。日本ではまだ少数派ともいえる、市場を通さない「木材の直販」のみで取引を行うなど、新進気鋭の若き35歳の林業家だ。
高性能機械の導入も積極的で、今回紹介するコンラート社・自走式クローラー型タワーヤーダー「KMR4000U」は今年6月から導入。これが日本第1号機となるという。
「コンラート社のタワーヤーダーは2台目で、1台目は2012年に林野庁の補助事業で導入した牽引式のKMS12Uです。導入から7年以上たちますが、タワーヤーダーは今やなくてはならない仕事の相棒です」と川井社長が話す。
機械好きという川井博貴社長。大学卒業後、高知市内で会社勤めを経て、故郷にUターン
日本の悪路に強い自走式で
トラック運搬時も楽々!
新製品のタワーヤーダー「KMR4000U」(以下KMR4000U)は、傾斜地で悪路の多い日本の現場のニーズを反映し、コンラート社が8年がかりで開発。
その大きな特徴は、油圧式のクローラーを使用したパワフルな走行性。十分に整備された林道だけでなく、足場の悪い林業作業路にも威力を発揮する。
川井社長がその良さを実感したのは、現場への運搬・設置・撤収までのスムーズさ。
「以前の牽引式KMS12Uはトラックに載せる際、別の機械でひっぱりあげていたので、ひっぱる人と運ぶ人の2名の人員が必要で、これがけっこう危険で労力も必要な作業でした。新製品のKMR4000Uは積み下ろしがリモコンで操作でき、作業も1人で可能です」。
ほかにも、以前の牽引式KMS12Uに比べてコンパクトになったのも大きなメリット。
「タワーの収納時の全高が低くなり、全長も短くなったので、トラックでの運搬がスムーズで現場の設置も楽です。作業道の道幅も2.5~3mあれば十分だと思います」。
設置・集材・撤去がリモコン1台で操作が可能
タワーヤーダーの収納時は高さ2960㎜・長さ4980㎜・幅 2200mm。タワーの折り畳みもリモコンで操作できる
安全性の高い設計構造
細部にもこだわりが
もうひとつの特徴は、安全性の高い設計構造だ。
すべての作業索がタワーヤーダー内部に収納され、ワイヤーの破断などによる施業事故を未然に防止。また人と機械の接触を減らすため、設置から撤去までラジオコントロール(無線遠隔操作)で操作できる。
タワーヤーダーとセットで使用する木材運搬用のリフトライナー(LIFTLINER LL40-1)にも、安全なロック機構付きの脱線防止機能やケーブル破断センサーを搭載。
現場でタワーヤーダーを操作する林山部門の班長田上さんは、「リフトライナーで上げ荷と下げ荷の2つの作業に対応できるケーブルになったのがとても便利。以前よりもリモコンのボタンの凹凸がはっきりして、手袋をしていても押しやすいです」と話す。
川井社長もこう語る。「コンラート社はモデルチェンジが早く、以前のKMS12Uと比べると、色々な面が改良されています。社長さんとも何度かお会いしたことがありますが、ユーザーの声を取り入れ、お互いの知恵を出し合っていいものをつくるという考え方で信頼が持てます」
タワーの作業索がすべてタワーヤーダー内に収納され、人が直接触れられない構造になっている。
ワイヤーのドラムが内部に収納されていることが確認できる。
タワーヤーダーなら
設置は1日、撤去は半日で終了
タワーヤーダーの操作には入社30年近くのベテラン・田上さんと、下で木材をリフトライナーに取り付ける入社2年目の新人スタッフの2名体制で作業している。
「今も架線集材を行っていますが、架線集材では人員3名・設置1週間・撤去2日かかり、タワーヤーダーなら人員2名・設置1日・撤去は半日で終わります。設置・撤去に時間がかからないのでコンスタントに出荷でき、売上の安定につながります」と川井社長。
海外のメーカーということで気になるのがメンテナンス面だが、販売元のサナース(本社:神奈川県横浜市)は日本全国、各地で地元の整備業者と協力する体制を整えており、四国に関しては高知林業(本社:高知県高知市)が行っている。
「以前から懇意にしていた高知林業さんは、林業と兼業で機械修理を行ってきたので使い手の気持ちが分かり、高い技術力を持っています。四国のユーザーにはサポート面は万全といえます」。
ハーベスタもコンラート社製で統一したことで連動性が高まり、さらに効率がアップ。現在のハーベスタは3台目になる。
高性能林業機械の導入が
持続可能な林業につながる
タワーヤーダーの導入で気になるのがコスト面だ。
「大切なのはイニシャルコスト(初期費用)よりも費用対効果(コストパフォーマンス)。1000万の機械で1000万を稼ぐか、2000万の機械で3000万を稼ぐかということです。弊社にもタワーヤーダーの運用には3年近くかかり、機械の効率的な組み合わせや作業道の作り方などを試行錯誤しました。その結果、以前よりも木材の搬出量が増え、費用対効果が得られることを実証できました」。
川井さんが目指すのは、補助金に頼らない自立した林業。高性能林業機械の積極的導入で作業の効率化・労働の軽減を図り、山元や社員に利益を還元する、新しい施業システム構築に取り組んでいる。
そのひとつが「材木の直販」という新たなチャレンジで、見事に軌道に乗せた。今現在、従業員の離職率も低いこともこうした効果の現れである。
高性能林業機械は日本の林業の発展に、もはや欠かせない存在ということを実感させてくれる。
取引先の希望にあわせて現場で丸太をカットする。「ハーベスタで裁断後、サイズ別に分けて運搬します。手間がかかりますが、木材の直販には欠かせない作業です」
お問い合わせ
取材協力:有限会社川井木材
取材・文:後藤あや子
写真:川村公志
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