ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【チェンソー防護ブーツ編】
2021/01/04
チェンソー防護パンツに足元はスパイク地下足袋、という人も少なくないだろう。しかし、足に丸太が落ちてきたり、石が斜面から転がってくるなど危険な経験はないだろうか。今回は各メーカーの代表的なチェンソー防護ブーツを試着して、動きやすさを中心に確かめてみた!
≫ 第1回「ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【防護パンツ編】」はコチラ!
≫ 第2回「ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【林業用ジャケット編】」はコチラ!
≫ 第3回「ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【ヘルメット編】」はコチラ!
紹介してくれたのは……
出来杉計画の梶谷哲也さん!
こんにちは、奈良県黒滝村森林組合の梶谷哲也です。今回はチェンソーブーツを比較していきましょう。
チェンソー防護パンツは履いていても、足元はスパイク地下足袋。そんな人も多いと思います。スパイク地下足袋、動きやすいですよね。チェンソーで足(地下足袋)を切りそうになった人は、それほど多くないかもしれません。
それでも足に丸太が落ちてきたり、石が斜面から転がってきて痛い思いをした経験はありませんか。そんな危険から、足元をしっかりと守ってくれるブーツについて、各メーカーの代表的なアイテムを試着して、主に動きやすさを中心に確かめてみました。
チェンソー防護ブーツは
動きにくい?
チェンソー防護ブーツがなかなか普及しないのは、林業現場の地形地質も大きく影響していると思います。斜面が急だったり、砂状だったり、崩れやすかったり。そうなると身軽に動けてスパイク付きでしっかりと踏ん張ることができるスパイク地下足袋が現場においてベターな選択となるのもうなづけます。
ただ一方で、チェンソーで玉切りをしていて、勢い余ってチェンソーで足を切ってしまう。玉切りした丸太が足に乗ってしまう。チェンソーを地面付近で水平に使っていて、キックバックを起こし足の内側を切ってしまう。そういった事故が実際に起きているわけです。
あ、そうそう。 普段地下足袋のみなさんも、雨天時や作業道の開設、フォワーダで搬出するときは(安全)長靴を履いていませんか?
もう一度自分の作業について見直して、何がベターなのか、より良い選択をして欲しいと思います。
コストパフォーマンスは?
価格と耐久性を確認
チェンソー防護ブーツ、高いですよね。甲ガード付きの安全地下足袋と比べても数倍します。普通のスパイク地下足袋と比べたら5倍以上高いのは当たり前(冷汗)。でも、地下足袋ってすぐに破けてきませんか? 冬、足が冷たいですよね? チェンソー防護ブーツは頑丈です。丈夫です。しっかり保温されます。
今は林業の安全資材についての助成金もありますので、そのあたりの情報を逃さないようにしたいですね。何より緑の雇用(FW)で道具を揃えるときに、購入しておけば何かと安心です。
チェンソー防護ブーツは
必ず試し履きを
チェンソー防護ブーツの履き始めは驚くほど重たかったり動きにくいと思います。少しでも自分に合った物を選べるように、いつも利用している林業資材店でぜひ試着するようにしてください。
馴染みのお店がない方はアウトドアブランド「モンベル」にもチェンソー防護ブーツがありますので、そこでぜひ試し履きをしてください。店頭にない場合は、店員さんと相談して取り寄せるなどしてでも試し履きすることをお勧めします。
チェーンソー防護ブーツ
8種類を試してみた!
1.ファナー/ツェルマット
評価
重さ(片足、実測値) | 1280g |
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動きやすさ(足首、ソール) | ・足を入れてすぐに気づく全体的な固さ。 ブーツに慣れている人でもかなり歩きにくいだろう ・ソールは固く手で曲げられない ・クセがすごい |
補強 | ・内土踏まずの部分が補強されている |
透湿防水 | あり |
2.ファナー/ダブルボア
価格:47,666円(税込)
ダイヤルアジャスターはかなり便利。ヒモが切れてしまいそうな予感はかなりするが、現場さえ選べばとても優秀な商品と言える。
評価
重さ(片足、実測値) | 1160g |
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動きやすさ(足首、ソール) | ・足首が固定される感じは少なく動かしやすい
・ソールは柔らかく手で曲げられる ・ゴツさはあるが、柔らかく履きやすい |
補強 | ・内土踏まずの部分が補強されている |
透湿防水 | なし |
3.オレゴン/フィヨルドランド
評価
重さ(片足、実測値) | 1040g |
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動きやすさ(足首、ソール) | ・見た目はチェンソー防護ブーツでありながら、足首の柔らかさやソールの柔らかさがあり、とても動きやすい。 |
補強 | ・内土踏まずの部分が補強されている |
透湿防水 | なし |
4.杣/プロテクトブーツ
価格:21,824円(税込)
見た目はまるで撥水ブーツのよう。防護のためかベロが分厚すぎてとにかく履きにくい。
評価
重さ(片足、実測値) | 1120g |
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動きやすさ(足首、ソール) | ・足首は柔らかく、ソールも手で曲げられるほど柔らかい。 |
補強 | ・爪先のゴムの補強がすごい |
透湿防水 | なし |
5.ハスクバーナ/テクニカル24
価格:31,601円(税込)
実際の数値以上に軽く感じるが、日本人の足型に合わないのか履き心地は良いとは言えない。
評価
重さ(片足、実測値) | 1220g |
---|---|
動きやすさ(足首、ソール) | ・足首は柔らかいが、インソールの土踏まずの成型が合わないように感じる
・ソールが固くてで曲げられない |
補強 | ・内土踏まずの部分が補強されている |
透湿防水 | あり |
6.ハスクバーナ/クラシック20
価格:19,571円(税込)
軽いブーツだが、足を通すと数値以上に動きにくさを感じる。
評価
重さ(片足、実測値) | 1080g |
---|---|
動きやすさ(足首、ソール) | ・足首が固い
・ソールも固く手で曲げられない |
補強 | ・特に補強されていないので、ガレ地や竹、笹地でのブーツの痛みが早いと思われる |
透湿防水 | なし |
7.シップ/スーパーフォレスト
価格:44,550円(税込)
軽いブーツだが、足を通すと数値以上に動きにくさを感じる。
評価
重さ(片足、実測値) | 1080g |
---|---|
動きやすさ(足首、ソール) | ソールはとても柔らかく、とにかく動きやすい |
補強 | ・補強らしい補強はない |
透湿防水 | なし |
8.モンベル/プロテクションロガーブーツ
価格:41,800円(税込)
タイプとしてはファナーのツェルマットと似た印象。違うのはより日本人の足型に合っているのと、土踏まずにスパイクがあることか。
評価
重さ(片足、実測値) | 1270g |
---|---|
動きやすさ(足首、ソール) | ・足首が固い
・ソールは固く手で曲げられない |
補強 | ・内土踏まずの部分が補強されている |
透湿防水 | あり |
※1 サイズについて
テスターは身長179cm、体重70kg。普段着用している運動靴やトレッキングシューズは28cm。スパイク地下足袋は27cmを履いていました。
今回は各メーカーに協力いただき、おおよその足型にあったものを用意していただきました。また、記事に出てくる数値について、重さは実測値となっておりメーカー公表値と若干異なる可能性があります。
※2 掲載情報について
情報は全て2020年3月のものです。価格が変動している場合や、商品が変わっている場合があります。
総評
甲ガード付きの安全地下足袋とチェンソー防護ブーツ。もちろんチェンソーの切削防止機能は、チェンソー防護ブーツの方が遥かに上です。ただ、山林作業にはスパイク地下足袋という習慣は根強いものがあります。軽く履きやすいブーツも出てきたとはいえ、動きやすさでは地下足袋にはまだまだ敵いません。
この記事を読んでいる皆さんはぜひ機会を見つけてチェンソー防護ブーツを手に取っていただきたいと思います。「これなら履いてみたい!」と思うのか、「まだまだ地下足袋の方が良い」と思うのか。まずは興味を持つところから始めてもらいたいと思います。
本記事のテスター、および取材協力
梶谷哲也
奈良県黒滝村森林組合で20年以上現場作業に従事している。現在は主に高所、樹上伐採を担当。15年以上、林業現場の情報を更新しているブログ「出来杉計画」も運営。
円陣株式会社
奈良県吉野地域にて「premium shop HUSQVARNA NARA」を運営。またネットショップ「ENGINE」も展開し、顧客は全国に広がる。